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【スペック】全長×全幅×全高=4970×1930×1420mm/ホイールベース=2920mm/車重=1840kg/駆動方式=4WD/4.8リッターV8DOHC32バルブ(400ps/6500rpm、51.0kgm/3500-5000rpm)/価格=1435.0万円(テスト車=1851.0万円)

ポルシェ・パナメーラ4S(4WD/7AT)【試乗記】

こんなセダンはほかにない 2009.12.10 試乗記 下野 康史 ポルシェ・パナメーラ4S(4WD/7AT)
……1851.0万円


この秋、ついに登場したポルシェの5ドア4シーターセダン「パナメーラ」に下野康史が試乗。全長約5mのビッグポルシェは、想像をいい意味で裏切るモデルだった。
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「カイエン」に続けるか

「セダンもポルシェでなきゃ」という人のための新型ポルシェが「パナメーラ」である。「SUVもポルシェでなきゃ」という人のためのクルマが、2002年登場の「カイエン」で、これは(少なくともリーマン・ショックの前まで)アメリカで大成功を収めた。先進国ほど道路事情がよくない新興経済国でもよく売れている。とくにロシアでは、ポルシェといえばカイエンを指すほどの高い人気を誇る。道が悪かったり、凍ってたりしたら、そりゃどう考えたって「911」よりカイエンである。
永遠にスポーツカーメーカーであってほしい、なんていう願望はポルシェ・フリークのセンチメンタリズムに過ぎないのだ。果たしてパナメーラは、カイエンに次ぐヒット作になれるだろうか。

昔、パンナム(パン・アメリカン航空)というアメリカのエアラインがあったが、パナメーラも車名からしてアメリカンな大型5ドアセダンである。5mをわずかにきる全長は、「メルセデス・ベンツSクラス」や「BMW7シリーズ」より短いが、1930mmの全幅はそれらをしのぐ。
このクラスにはないハッチバックというユニークなボディ形式で、屋根が後ろまで延びているため、サイズ以上にながーいクルマに感じられる。今回走ったのは高速道路とワインディングロードが主だったが、“押し出し”とは引き換えに、狭い市街路ではいささか持て余しそうな体躯である。


ポルシェ・パナメーラ4S(4WD/7AT)【試乗記】の画像 拡大
パナメーラターボには標準、S/4Sにはオプション設定されるアダプティブスポーツシートは、クッションが硬めで、座面やバックレスト左右のサイド部などが深い、サポート性に優れたスポーティなデザイン。前後位置、高さはもちろん、座面の角度/長さなど18wayの電動調節機能を備える。シートヒーターも標準装備。
パナメーラターボには標準、S/4Sにはオプション設定されるアダプティブスポーツシートは、クッションが硬めで、座面やバックレスト左右のサイド部などが深い、サポート性に優れたスポーティなデザイン。前後位置、高さはもちろん、座面の角度/長さなど18wayの電動調節機能を備える。シートヒーターも標準装備。 拡大
【テスト車のオプション内容】
PCCB=141万8000円/PDCC=76万7000円/赤外線反射&遮音ガラス=21万7000円/スポーツクロノパッケージ=19万4000円/スポーツエグゾーストシステム=46万円/20インチ“RSスパイダーデザイン”ホイール&タイヤ=50万5000円/カラークレスト=ホイールセンターキャップ=3万円/アダプティブスポーツシート49万3000円/ブラッシュアルミニウム・ドアエントリーガード=7万6000円
【テスト車のオプション内容】
PCCB=141万8000円/PDCC=76万7000円/赤外線反射&遮音ガラス=21万7000円/スポーツクロノパッケージ=19万4000円/スポーツエグゾーストシステム=46万円/20インチ“RSスパイダーデザイン”ホイール&タイヤ=50万5000円/カラークレスト=ホイールセンターキャップ=3万円/アダプティブスポーツシート49万3000円/ブラッシュアルミニウム・ドアエントリーガード=7万6000円 拡大
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うれしい誤算

試乗車は中間グレードの「4S」。自然吸気の4.8リッターV8に4WDの駆動系を組み合わせる。
ドアの構成部材にマグネシウムやアルミを使用するなど、軽量設計にも努力が払われているとはいえ、車重は1940kgに達する。ドライバーが乗れば2トン超の、全長5m近いビッグな5ドアハッチやいかに、と興味津々で走り出せば、第一印象はうれしい誤算だった。これはまごうかたなき“ポルシェ ”である。それも911に近いポルシェだ。
パワーユニットやサスペンションの近似性はカイエンだから、てっきり「車高短カイエン」的な重厚長大サルーンを想像していたら、いい意味で裏切られた。

ポルシェ・スポーツカーのテイストを感じさせるのは、まずフットワークだ。これほどの巨体なのに、加減速時の姿勢変化や旋回中のロールがほとんどない。電子制御エアサスペンションは、一瞬たりともフワリとした挙動を許さず、いつも路面に吸いつくようなスタビリティを与えてくれる。
コーナリングもコンパクトで、長いホイールベースをそれほど感じさせない。エンジン、変速機、サスペンションを“最強”にするスポーツプラス・モードを選択してワインディングロードを走れば、手応えはスポーツカーである。

総額416万円のオプションを満載した試乗車は、50万円以上する20インチホイールセットを履いていたが、乗り心地もワルくない。硬いのはたしかだが、品質感の高い硬さだ。リアシートは膝まわりも頭上空間もたっぷりしているから、お抱え運転手付きのリムジンとして使うのも無理ではない。


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ゆったりと座ることができる独立型のリアシートは、6対4の分割可倒式。シートヒーターも備わる。
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ポルシェ・スポーツカーの血

カイエン用の90度V8に手を加えた4.8リッターエンジンは400ps。パナメーラはこれに7段PDKを組み合わせる。その新型オートMTは、デュアルクラッチ式ならではの素早い変速をみせる一方、シフトマナーは「911」や「ボクスター」のPDKよりさらに洗練され、よくできたトルコン式ATと区別がつかない。
ポルシェだから、速いのは言わずもがなで、メーカー発表のパナメーラ4Sの0-100km/h加速タイムは5.0秒。911には負けるが、「ケイマンS」とほぼ互角である。

直噴V8はカイエンより静かだ。本気で黒塗りの公用車ユースも考えたのだろうか。とはいえ、エンジンの“存在感”は強い。滑らかさと静粛性を極めて、エンジンを消し去ったようなエンジンでは全然ない。とくにアイドリング時に後席まで届く、圧力感とでもいうべきエンジンのプレゼンスは、やっぱりポルシェ・スポーツカーの血だ。
そのため、停車直後、オートスタート/ストップ機構が作動してアイドリングが止まると、「死んだのか!」と思う。それはまあいいにしても、このアイドリングストップ機構、欠点は再始動がワンテンポ遅いことだ。ポルシェ党なら、アルマジロのようなスイッチパネルにあるキャンセルボタンを押したくなるだろう。

しかし、気になる点といったら、それくらいだった。パナメーラは、まったく新しい立ち位置のクルマである。こんな大型セダンはほかにない。ガチンコライバルを「マセラティ・クアトロポルテ」とする見方もあるが、パナメーラはよりスポーツカー的である。というか、ヘンな言い方だが、クアトロポルテよりずっと“ポルシェ”である。

どんなカタチだろうが、どんなサイズだろうが、あるいはエンジンをどこに置こうが、水平対向だろうがV8だろうが、ポルシェがつくると、こんなにポルシェになる。ポルシェの血の濃さをあらためて感じさせるクルマである。

(文=下野康史/写真=荒川正幸)


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アルマジロのようなスイッチパネル。
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通常時は432リッターの積載容量を確保するパナメーラの荷室。分割可倒式リアシートを前に倒すことで、1250リッターまで拡大する。
通常時は432リッターの積載容量を確保するパナメーラの荷室。分割可倒式リアシートを前に倒すことで、1250リッターまで拡大する。 拡大
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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