ポルシェ・パナメーラ4 Eハイブリッド プラチナエディション(4WD/8AT)
持続可能型モンスター 2022.06.22 試乗記 いまやポルシェファミリーの重要なメンバーとなっている高性能サルーン「パナメーラ」。世代交代と大幅改良を経た最新型の到達点とは? 電動モデル「パナメーラ4 Eハイブリッド」の特別仕様車に試乗して確かめた。エコカーらしからぬスペック
ポルシェ・パナメーラ4 Eハイブリッドは、パナメーラPHEV(プラグインハイブリッド車)3兄弟の末っ子である。と書いてみたら、♪どうせあんたは三男坊、東京さ行くのはいいけれど~、という三橋美智也の歌のフレーズが浮かび、さらにザ・ドリフターズの「あ、行かないで」と繰り返すコントを思い出して、ぷぷっ、あれはおもしろかったなぁ。
という話はさておき、パナメーラPHEVには「スポーツツーリズモ」というシューティングブレーク版もあり、それも入れると全部で5兄弟になる。そうすると、それなら「カイエン」のPHEVもあるではないか。と話を広げていくことになり、かなりややこしい。
そこで、ここでは3兄弟ということで了解をいただき、つまるところ、ポルシェPHEVのベースであるパナメーラ4 Eハイブリッドの最新型を試乗したので、この個体について語ることによって、ポルシェPHEV全体の魅力についてもチョコっと言及してみたい。と、そう思う。
3兄弟全体を概観すると、長兄の「パナメーラ ターボS Eハイブリッド」はシステム最高出力700PSを誇るスーパーモンスターで、次兄の「パナメーラ4S Eハイブリッド」は同560PSのモンスター、三男坊のパナメーラ4 Eハイブリッドだって、同460PSもある。試乗車のタイヤも前275/35、 後ろ315/30の、ともにZR21というスーパーカーサイズで、これが標準なのだ。間違いなく怪物的高性能セダンである。
ちなみにターボSのエンジンは4リッターV8ツインターボで、単体の最高出力は571PS。4Sと4は共通の2.9リッターV6ターボで、チューンの違いによって前者は440PS、後者は330PSを発生する。
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EV走行距離は50~60km
しかして、ポルシェPHEVの根幹は、8段PDKデュアルクラッチトランスミッションに組み込まれた最高出力136PS、400N・mもの最大トルクを生み出す強力な電気モーターと、リアに搭載するリチウムイオンバッテリー、およびその制御システムにある。3兄弟は2020年8月に次男の、次いで同年10月に長男と三男のマイナーチェンジ版の発表が同時になされている。現行パナメーラのPHEVが登場したのは2018年だから、ポルシェのスケジュールどおり、4年目のフェイスリフトを受けて、モデルライフの後半に突入していることになる。
このとき、長男と次男はシステム出力がそれぞれ増えている。どうせあんたは三男坊はそのままだったけれど、それでも兄たち同様、PHEVシステムのバッテリーの容量は14.1kWhから17.9kWhに増やされ、制御システムの改良が加えられて、最高速度が280km/hへと2km/h上がり、0-100km/h加速のタイムも4.6秒からコンマ2秒速くなっている。同時に3兄弟のEV走行の可能な距離も延びている。この分野では三男がWLTPモードで最大56kmと一番長い。長男は同50km、次男は同54kmだから、大した違いではないにしても、PHEVの魅力を語るうえで重要なポイントだろう。
前置きが長くなった。ここからはパナメーラ4 Eハイブリッド、三男坊の印象について語りたい。
筆者はwebCG編集部の入っているビルの地下駐車場でパナメーラ4 Eハイブリッド、ここでは短く“パナちゃん”のテスト車に乗り込み、まずはPHEVの電池のエネルギー残量を確認した。およそ95%、EV走行な距離は61kmであることをデジタルメーターは示していた。WLTPモードよりも長い距離なのは、もちろんWLTPモードがすべてではないからで、走り方によって異なるからだ。
自宅で充電したくなる
走行モードにはノーマル、ハイブリッド、スポーツ、スポーツプラスとあり、スポーツと名のつくモードを選ぶとエンジンが常に作動する。まずはハイブリッドモードを選択する。そうすれば走行しながらの充電が可能だと思ったからだ。
ハイブリッドモードには、ハイブリッドオート、Eホールド、Eチャージの3つのモードがその奥にあることを、この時点で筆者はわかっていなかった。オートはナビゲーションシステムと現在の速度から得た情報を考慮に入れて、最も効率的な走行を予測する。Eホールドは電力をあとで使えるように維持し、Eチャージは走行しながら充電する。
いろいろ複雑だけれど、ともかくハイブリッドオートモードでもって、スタートする。電力はほぼ満充電ということもあって、エンジンは始動せず、モーターのみで走り始める。電気モーターの最大トルクは400N・mもあり、車検証上で車重2310kgの巨体がエレガントに地上へと至るスロープを駆け上がる。さながらクジラのごとく、重々しくも、ふわり、軽々と前に進む。電気モーター特有のフィーリングは、ピュアEVの「タイカン」を思わせる。
ハイブリッドモードだと首都高速に上がっても、ほとんどEV走行を続ける。もっと充電してくれるのかと思いきや、東京はるか郊外の筆者の自宅に到着したとき、デジタルメーターはEV走行可能な距離が28km、電力の残量は50%を切っていることを伝える。筆者の自宅は都心からおよそ30km離れているから、ほぼEV走行してきたことになる。
ポルシェPHEV用のコンセントが筆者の自宅、もしくはその近辺にあれば、充電して明日に備えることができる。ところが、あいにくそのような施設はない。なのでパナちゃんはいたずらに駐車場で眠るほかない。また、賢明なる読者諸兄はお気づきのように、ハイブリッドモードをスクリーンで選んだあと、その奥にあるEホールド、もしくはEチャージのどちらかのモードを選択していれば、電池の電力はもっと残っていたはずである。
峠道でもイキイキ
翌朝、箱根に向けて走りだす。電力は50%程度でも、V6ツインターボは目覚めようとしない。100km/h走行でさえ、エンジンは始動せず、始動したとしても瞬時にしてEV走行に切り替わる。メーターをしばしば確認していると、スタートから54分、朝から走った距離48.6km、残りの電力10%以下、EV走行可能な距離は「---km」となっている。燃費はリッターあたり23.6kmという良好な値で、これが今回の瞬間燃費のベストだった。
ああ。筆者の自宅に充電装置がありしかば、これをもっと続けることができたはずだ。電気ですかー。電気があれば、なんでもできる……と、つぶやかずにはいられない。
そして、電気がなければ、エンジンの出番である。2.9リッターV6ツインターボは最高出力330PS/5400-6400rpmと最大トルク450N・m/1800-5000rpmを発生し、ポルシェの名にふさわしい動力性能を披露する。
電気があれば、システム最高出力は462PS、同最大トルクは700N・mにも達する。箱根に至ってハイブリッドモードで物足りなければ、スポーツ、さらにスポーツプラスモードに切り替えればよい。エンジンが常に作動し、レスポンスが向上、スポーツエキゾーストシステムがオンになって室内に快音がとどろく。勇ましい排気音をバックミュージックに、パナちゃんは箱根の山道をオン・ザ・レール感覚で駆け抜ける。重たい電池をリアに搭載するため、車検証で見る前後重量配分は48:52とリア寄りになっている。4輪駆動の安定性もあり、低重心でもあるだろう。試乗車にはオプションのリアアクスルステアリングも装着されている。
筆者の頭の中では、♪どうせあんたは三男坊、という三橋美智也の歌がリフレインしている。もちろん、「あ、行かないで」と繰り返すザ・ドリフターズのコントも。ぷぷっ。
基本的に同じシステムを搭載する「カイエンEハイブリッド クーペ」に、筆者は昨年試乗している。このときは富士の裾野周辺が主な舞台で、2.9リッターV6ツインターボと電気モーターの見事な合体ぶりと、SUVなのにスイスイ曲がることに驚嘆した。
そのパナメーラ版であるところのパナちゃんでは、今回、東京都心から郊外にある筆者の自宅までと、自宅から箱根、箱根から東京まで、およそ280kmドライブしたことで、ポルシェの提案するPHEVの意味が実感としてわかった、ような気がする。PHEVも含めたハイブリッドはもしかして、内燃機関車からEVへと至る過渡期の産物ではなくて、ひとつのジャンルとしてもうちょっと長く生き残る可能性もある。と筆者は思った。だって、エンジンとモーターで走行しながら自家発電し、使ってはつくりながら、その両方のフィーリングが楽しめるのだから。
(文=今尾直樹/写真=花村英典/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
ポルシェ・パナメーラ4 Eハイブリッド プラチナエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5049×1937×1423mm
ホイールベース:2950mm
車重:2210kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:330PS(243kW)/5400-6400rpm
エンジン最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)/1800-5000rpm
モーター最高出力:136PS(100kW)/2800rpm
モーター最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/100-2300rpm
システム最高出力:462PS(340kW)/5000-6250rpm
システム最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1000-4300rpm
タイヤ:(前)275/35ZR21 105Y/(後)315/30ZR21 105Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:2.2-2.1リッター/100km(約45.6-47.6km/リッター、欧州複合モード)
価格:1739万円/テスト車=2039万5000円
オプション装備:インテリア有償仕上げ<レザーインテリアブラック スムーズレザー>(59万3000円)/リアアクスルステアリング(29万7000円)/マッサージ機能+シートベンチレーション<フロント>(35万1000円)/4+1シート(13万9000円)/エクステリアミラー<塗装済み>(7万5000円)/ドアハンドルインレイ<ペイント仕上げ>(2万円)/アルカンターラ ルーフライニング(31万5000円)/4ゾーン クライメートコントロール(17万5000円)/スモーカーパッケージ(1万5000円)/ナイトアシスト(42万6000円)/ヘッドアップディスプレイ(24万4000円)/アンビエントライト<リアコンパートメント ライティングパッケージ含む>(12万9000円)/断熱遮音プライバシーガラス(22万6000円)
※価格以外の数値は欧州仕様車のもの
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:4231km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:339.4km
使用燃料:35.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.7km/リッター(満タン法)/10.2km/リッター(車載燃費計計測値)
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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