メルセデス・ベンツE300(FR/7AT)【試乗記】
Eクラスの完成形!? 2009.09.04 試乗記 メルセデス・ベンツE300(FR/7AT)……762.5万円
新型Eクラスのベーシックグレード「E300」が、ようやく日本上陸。右ハンドル仕様とともに遅れてやってきた、メルセデスの売れ筋モデルをテストした。
なかなかお値打ち
生産プログラムの関係から上陸が遅れていた「右ハンドルの新型Eクラス」が、ようやく日本にやってきた。改めて確認しておくと、現時点で日本導入が発表されている新しいEクラスセダンのラインナップは、3リッターのV6ユニットを搭載するE300、3.5リッターの同じくV6ユニットを搭載するE350、そして5.5リッターのV8ユニットを搭載するE550と、基本はこの3エンジン構成。このうち、E350とE550には左ハンドルモデルも設定されていて、これまで日本でチェックが可能なのはこの両仕様のみだった。
今回テスト走行を行ったのは、それらに加えて“ようやく登場”の右ハンドル仕様車で、国際試乗会の場にも用意されなかった前出3リッターエンジン搭載のE300。さらに詳しく紹介すれば、そんなE300には“素”の仕様とE350/E550同様の「アバンギャルド」とがあって、今回の取材車は“素”の仕様のほう。両仕様はエクステリアではそのシューズ、インテリアではシート地やトリムレベルから区別が付く。16インチを履いていれば前者だしファブリックシートであれば前者。ただし、こちらでもレザーシートを有償でチョイスする事は可能だし、トリムにはウォールナットが用いられているのでアバンギャルドとの仕様差が格別大きいわけではない。
加えて、実はこのモデル固有のファブリックシートの、ちょっと張りが強めの着座感が、往年の「W124型」の念入りに作り込まれたシートを彷彿とさせ、好印象。個人的にはむしろ「こちらのファブリック仕様を全Eクラスで選べれば良いのに」と思ったほど。そんな内容でのアバンギャルド比マイナス50万円という価格設定は、だからなかなかのお値打ちものだ。
いくつかの気になるところ
左足の置き場付近がわずかにタイトではあるものの、それを除けばドライビングポジションはパーフェクトに決まる。運転視界の広さと前輪切れ角の大きさが相まって、日常シーンで実際のサイズ以上に扱いやすいのは新型Eクラスの……というよりも、「FRレイアウトを採るメルセデス」に共通の美点。
ただし、ドアミラーの像に重なるダッシュボード左右端の空調ルーバーの映り込みが時に目障りだし、ルームミラーへの見上げ角が大きめというのは、これまで乗った新型Eクラスで感じた事柄と同様の小さな難点。前者はルーバー全面をメタリック調仕上げとしたのがひとつの要因だし、後者はウインドシールド中央上部にドライビングアシスト用のカメラ等がレイアウトされ、その分ルームミラーが顔面に接近したことが悪さをしているのだ。
E350/E550同様に、静粛性は基本的に優れるE300だが、エンジン回転数が1600-2000rpm付近でエアコン用コンプレッサーが意外に耳障りな“うなり音”を上げるのは、これまで乗ったモデルでは記憶になかったポイント。実はこれは、別に試乗したE300でも確認している。E350/E550ではコンプレッサーそのものが別モノなのか、あるいは右ハンドル仕様ではその取り付けかたが異なるといった事情でもあるのだろうか。
適度に鈍がアドバンテージ
最高出力で40ps強、最大トルクで5.1kgmという差が、E350との間に「それなり」の力強さの違いをもたらしている事は確かなE300の走り。それでも、その動きは「必要にして十二分」と思える身軽さだ。ただしこのモデルの場合、個人的にはATモードは常時「S」のポジションで用いたいと感じた。日常シーンの緩加速時には2速発進を選択する「C」のポジションでは、正直なところ時に物足りなさを覚える場合があったからだ。アクセルの踏み込みに対するキックダウンへの“ハードルの高さ”も同様で、E350なら「C」、E300なら「S」というのが個人的な好みになる。
フットワークは、まず常に濃厚な接地感が惚れ惚れとするレベル。それに加えて、それなりにハイトの高い16インチシューズがもたらす「路面凹凸に対する“適度に鈍”な当たり感」が、17インチを履くE350や18インチを履くE550に対する快適性面でのアドバンテージにもなっている印象だ。
一方で不満が残ったのは、そうした基本的に素晴らしい乗り味が、大きな段差や凹凸に遭遇してサスペンションへの入力が急激に高まったとき、想像以上の落差をもって「ボコン」と大きなショックを伝えてくること。こうした症状さえクリアされれば、E300のフットワークに対する評価にはほとんど満点を与えたい。
いずれにしても、遅れてやって来たE300は、実は最も完成形に近い新型Eクラスなのかもしれない。
(文=河村康彦/写真=郡大二郎)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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