第104回:【Movie】イタリア版オート3輪の運転教えます!
2009.08.15 マッキナ あらモーダ!第104回:【Movie】イタリア版オート3輪の運転教えます!
筋金入りのアペ男
イタリア製オート3輪「ピアッジョ・アペ」については、本欄でときおり記してきた。道が狭い中世都市において抜群の小回り性能を発揮する排気量49.8ccの「アペ50」は、イタリアの法規上原付扱いである。
そのため、バイクの駐輪場に停めてもOK。駐車場バトルの激しいイタリアでは、最高のセールスポイントだ。さらに税金・保険の額も原付に準ずるというおまけ付きである。
今回紹介するのは、シエナで40年食料品店を営むアルマンド・ロレンツェッティさん(67歳)の「アペ」である。
「最初のアペは、ほんとに『ベスパ』に荷台をくっつけたもんだったよ」と証言する彼は、下積み時代を含めると50年間アペに乗っている。
人生で10台のアペを乗り継いだ筋金入りのアペ男・アルマンドさんに、その操作方法を伝授してもらったのが今回の動画である。
現在のアペはアルマンドさんが5年前に手に入れたものだ。その名を「アペ50ヨーロッパ」という。「ロータスじゃあるまいし、何がヨーロッパだヨ?」「アメリカン仕様があったら、出してみろ」と突っ込みを入れたくなる。
本当の理由をいうと、新車当時に欧州排出ガス基準「ユーロ2」に適合させるべくキャタライザーを装備したのが「売り」だったからである。
世界一幸せなクルマ
アペはその遅さから渋滞を誘発し、身の程知らずのドライバーが頑張りすぎて転倒などのアクシデントを起こすことも事実である。しかし、イタリアの旧市街という限られたエリアにおいては、他のどんな乗り物よりも便利でコストパフォーマンスに優れているのである。
今日もアルマンドさんは、もはや買い物に出られないお年寄りのもとに食料を届けるため、アペで走り回る。
イタリアには、アルマンドさんのようなアペ・ユーザーが星の数ほどいる。多くの人が、とっかえひっかえ半世紀も乗り続けてくれるクルマというのは、世界に自動車多しといえど珍しい存在である。同時に、毎日自分をフルに使ってくれるユーザーと一緒に暮らしている、何とも幸せなクルマではないか!
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
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【Movie】アペの運転(その1)準備編
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【Movie】アペの運転(その3)ドライブ編

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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