第92回:新型「ゴルフ」、そのクオリティはなぜ実現できるのか?
2009.05.01 エディターから一言第92回:新型「ゴルフ」、そのクオリティはなぜ実現できるのか?
フォルクスワーゲンの新型「ゴルフ」発表のため来日した、フォルクスワーゲンAG ハラルド・ルダネック氏に、「webCG クルマ生活Q&A」でおなじみの松本英雄が聞いた。
クオリティのコントロールとコストダウン
環境に配慮しながらも、そのクオリティを維持し、さらに静粛性、安全性の面でも進化をとげた6代目「ゴルフ」。ルダネック氏は、新型ゴルフについて、DSGの進化や、大衆車とはいえ、いかにクオリティの向上に力を入れているかということについて語った。
良質な素材を使っての複雑な造形や質感の高さは、新型「ゴルフ」では一層際立っている。
そこで私は「高価な材料を使っているのに、なぜリーズナブルなプライスで提供できるのか?」と聞いてみた。自動車メーカーで製造にたずさわる人なら、これほどのクオリティでなぜ採算が取れるのかと不思議に思うはずだ。
答えのひとつは、国からの援助があるというものであった。ドイツでは、政府がリサイクルに対しての助成金を出す支援策があるのだ。
ここはぜひ日本政府も考えて頂きたい。かつて日本も官民一体となって自動車産業を高めた。それは役人にも自動車のオーソリティーがいたからである。
ルダネック氏は、本当のエコマテリアルとは、良質な素材を使い元の素材へリサイクルできる、循環するマテリアルだと言う。
新型ゴルフは、素材のおよそ40%がリサイクル素材で、その約80%以上がメタルシートを使用しているため、金属のリサイクルがしやすいのだという。
国が援助して良質なモノを作り、材料を無駄なく同じ素材へとリサイクルできるのだ。だからこそフォルクスワーゲンはハイクオリティを維持しつつ競争力のあるプライスで提供できるのである。
マネのできない剛性感
さきごろ、箱根で開かれた試乗会で改めてクオリティの高さを思い知らされた。ここまでくると大衆車のクオリティではない。しかし価格は、シングルチャージャーの「TSIコンフォートライン」が275万円、ツインチャージャーの「TSIハイライン」が312万円という手の届くプライスである。
良質な素材だからできる丸みを持たせながら生まれるシャープなボディパネルと、隠れた部分までキレイに見せるレーザー溶接は、次のステージにきている。着座したときに手に触れるステアリングホイールとダッシュパネル、センタ−コンソールにはマットな質感をあたえるなど、ディテールに厳しい日本人の心を揺さぶる要素が一層盛り込まれている。
もちろん自慢のトランスミッション“DSG”もエンジンとのマッチングをさらに綿密にしてスムーズだ。車体の剛性感は申し分ない。国産車には真似のできない剛性感は健在だ。
まだ初期のロットだけに、サスペンションのセッティングは荒削りではあるが、日に日に進化して、唸るような乗り味になってくるだろう。それに見合った細かな調整がこれからの課題ではないだろうか。ルダネック氏が言ったように更なるクオリティの向上を期待したい。
(文=松本英雄)

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。
-
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末 2025.11.26 「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。
-
第854回:ハーレーダビッドソンでライディングを学べ! 「スキルライダートレーニング」体験記 2025.11.21 アメリカの名門バイクメーカー、ハーレーダビッドソンが、日本でライディングレッスンを開講! その体験取材を通し、ハーレーに特化したプログラムと少人数による講習のありがたみを実感した。これでアナタも、アメリカンクルーザーを自由自在に操れる!?
-
第853回:ホンダが、スズキが、中・印メーカーが覇を競う! 世界最大のバイクの祭典「EICMA 2025」見聞録 2025.11.18 世界最大級の規模を誇る、モーターサイクルと関連商品の展示会「EICMA(エイクマ/ミラノモーターサイクルショー)」。会場の話題をさらった日本メーカーのバイクとは? 伸長を続ける中国/インド勢の勢いとは? ライターの河野正士がリポートする。
-
第852回:『風雲! たけし城』みたいなクロカン競技 「ディフェンダートロフィー」の日本予選をリポート 2025.11.18 「ディフェンダー」の名を冠したアドベンチャーコンペティション「ディフェンダートロフィー」の日本予選が開催された。オフロードを走るだけでなく、ドライバー自身の精神力と体力も問われる競技内容になっているのが特徴だ。世界大会への切符を手にしたのは誰だ?
-
第851回:「シティ ターボII」の現代版!? ホンダの「スーパーONE」(プロトタイプ)を試す 2025.11.6 ホンダが内外のジャーナリスト向けに技術ワークショップを開催。ジャパンモビリティショー2025で披露したばかりの「スーパーONE」(プロトタイプ)に加えて、次世代の「シビック」等に使う車台のテスト車両をドライブできた。その模様をリポートする。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。
