第861回:冬道性能やいかに ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」を北の大地で試す
2026.02.18 エディターから一言 拡大 |
2025年9月に日本ミシュランタイヤが発表した最新のオールシーズンタイヤ「ミシュラン・クロスクライメート3」と「ミシュラン・クロスクライメート3スポーツ」の冬道性能を確かめるために、ウインターシーズン真っただ中の北海道に飛んだ。ドライやウエット路面に続き、冬道での印象を報告する。
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「雪も走れる夏タイヤ」が進化
「冬でも使うことが認められたサマータイヤ」という慎重な言い回しとともに、2015年にまずはヨーロッパ市場でローンチされたのがミシュラン初のオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」である。
日本では2018年に一部の販売店を通じての試験的な販売の後、2019年にようやく全国で本格販売がスタート。その後、2021年には新開発のコンパウンドやトレッドパターン、ブロックの倒れ込みを抑制する新技術などを採用することで諸性能の向上を図った「クロスクライメート2」へと進化した。今回紹介するのは2025年に再度モデルチェンジされ、さらなる進化をうたう「クロスクライメート3」である。
最新シリーズの特徴は、従来設定されていた商品名の最後に「SUV」が付与されるSUV向けモデルが姿を消し、一方で「オールシーズンタイヤでありながらスポーツタイヤに匹敵する高速安定性とハンドリング性能を備える」とアナウンスされた初のオールシーズンスポーツタイヤとなる「クロスクライメート3スポーツ」が新設されたことにある。
そんな追加モデルも含め、ミシュランが提案する「雪も走れる夏タイヤ」といううたい文句は今回も継続。余談ながら、世界のタイヤメーカーのなかでミシュランと並ぶ両巨頭と認められるブリヂストンが、実は「マルチウェザー」なる名称のオールシーズンタイヤをラインナップに持ちながらも積極的なプロポーション活動を(恐らくは「あえて」)行わないのは、やはり「オールシーズンタイヤは万能」と誤解されるのを恐れてのことであろうと推測できる。
スノータイヤとしての機能性は?
初代から2代目へとモデルチェンジされた際に明確に性能向上を体感することができたウエット性能が、さらに摩耗時の制動距離においても「驚愕(きょうがく)のレベル」を達成するなど、webCGでもすでに編集S氏によって非積雪状態での好印象が報告されているクロスクライメート3(参照)。2026年の1月にあらためて積雪状態でテスト走行を行った今回の舞台は、ミシュランが以前から日本での冬季試験に活用している北海道・士別に位置する交通科学総合研究所の特設コースである。
特別豪雪地帯に位置するこの研究所のロケーションはもとより、北海道では秋になったらすべてのクルマはスタッドレスタイヤへと履き替えるのが常識。そもそもこうした降雪地域では、オールシーズンタイヤの需要は限られるという背景をまずはお知らせしておきたい。
それでもミシュランがテストイベントにこの地を選んだのは、あくまでも極端な場面で、最新クロスクライメートの持つポテンシャルとスタッドレスタイヤとの性能・キャラクターの違いを明確に知ってもらいたいという思いからであろう。繰り返すが、本来であればスタッドレスタイヤの装着を当然とするのがこのテスト地周辺の環境だ。
ただし、テスト時の研究所の路面状況は整備された圧雪で気温もマイナス2桁。端的に言って雪は溶けかけの方が滑りやすいということを考えれば、首都圏ではあり得ないほどに冷え込んだこうした環境は、オールシーズンタイヤにとってはむしろ走行のハードルが低いとも考えられる。
実際に205/55R16サイズのクロスクライメート3を装着した「トヨタ・カローラ ツーリング」で圧雪路面をスタートすると、FWD仕様であるにもかかわらず、特にデリケートなアクセルワークを必要とするわけでもなく速度は確実に高まっていく。無論、ドライやウエット路面と同じように走れる……とまではいかないものの、ステアリングの利きにも不安を感じることはない。この時点でスノータイヤとしての機能性は「十分満足できるレベルにある」と報告することが可能であった。
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実は内部構造からして別物
しかし、そこからコース上に設定された氷盤路面へと差しかかってブレーキペダルに軽く足を乗せてみると、「あっ、やっぱりこうなるのか」と思わず声が出てしまう状況に。
専門の研究機関ゆえ、氷盤路面はピカピカに磨き上げられ整備されているので、これも確かに極端な条件。とはいえ、そこでのグリップ感は乏しく、停止後の再発進性も雪上と同様とはいかない。すなわち、サマータイヤに近いトレッドコンパウンドを用いるがゆえ、スタート早々にしてオールシーズンをうたいつつも、氷上走行に好適とはいえないことをあらためて教えられることになった。
そんな体験の後に「フォルクスワーゲン・ゴルフeTSI」へと乗り換え。こちらでは225/40R18サイズのクロスクライメート2とクロスクライメート3スポーツ装着時の印象の違いをチェックする。
クロスクライメート3とクロスクライメート3スポーツの両者はいずれも最新モデルではあるものの、相違点は多岐に及ぶ。サイズ設定は18インチから21インチという大径サイズに限られ、その偏平率も35~55のみ。また全モデルで300km/hという超高速にまで対応する「Y」表記のスピードレンジを採用するなど、オールシーズンながらもスポーツタイヤであることを明確に主張するのがクロスクライメート3スポーツである。
その内部には「パイロットスポーツ」シリーズで培ってきたアラミドとナイロンを組み合わせた高剛性の「ハイブリッドキャッププライ」を採用。クロスクライメート3がクロスクライメート2から踏襲したトレッドコンパウンドを採用するのに対して、クロスクライメート3スポーツでは新開発の専用「サーマルアダプティブコンパウンド2.0」を採用するなど、トレッド面だけでなく実は内部構造からして別物といえるのがこのタイヤだ。
果たしてその走りは、「なるほどこれはスポーツだ」と納得のいく感触を味わうことになった。
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目のつけ所がひと味違う
オールシーズンタイヤ、しかも雪上にもかかわらずクロスクライメート3スポーツを装着したテスト車のステアリングホイールに伝わるしっかり感や剛性感は、想像以上に高い。クロスクライメート2とのフィーリングの違いは明白で、それがまず「明らかにスポーティー」という印象につながることになる。
そんな両者での味つけの違いは、縦方向のグリップ感、すなわち加速と減速についてはさほど大きいとはいえない一方、パイロン間をリズミカルに抜けていくスラローム走行やオフセットして並べられたパイロン間をすり抜けるダブルレーンチェンジのシーンになると、前述のようなステアフィールや横方向へのふんばり感の違いが「誰にでもわかるはず」というレベルへと拡大する。
ここまでくると、V字シェイプでいかにもオールシーズン然とした表情を見せるトレッドパターンを、もう少しスポーティーに演出してほしいなどと欲張りな注文まで出したくもなってしまうほど。しかしそこはもちろん、現在のトレッドパターンこそが雪上での高いパフォーマンスを発揮するキモに違いないのだと納得する。
ドイツで2010年に気温がおおむね7℃を下回る環境での冬用タイヤの装着が義務づけられて以降、欧州の周辺諸国でもオールシーズンタイヤの市場が急速に拡大しているという。それゆえ、欧州生まれのクロスクライメートシリーズでは、高荷重に耐える商用車用や長時間の駐車時でもフラットスポットなどが発生しにくい高内圧での使用を念頭に置いたキャンピングカー用など、さまざまなバリエーションが展開されている。
実はクロスクライメートシリーズのスポーツモデルの開発には、スポーツカーやプレミアムカーの多くのユーザーが、オールシーズンタイヤに興味を示したという背景があったと説明される。そこでは、ベーシックなオールシーズンタイヤのユーザーからはあまり聞かれることのない高速安定性やハンドリングに対する要望が強く挙げられたという。
今や多くのタイヤメーカーが手がけるオールシーズンタイヤ。そのなかにあっても、ミシュランの製品はやはり目のつけ所がひと味違うという印象なのである。
(文=河村康彦/写真=日本ミシュランタイヤ/編集=櫻井健一)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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