アウディS4アバント(4WD/7AT)【試乗速報】
走りが大きく変わった 2009.04.27 試乗記 アウディS4アバント(4WD/7AT)……855.0万円
A4のモデルチェンジより遅れること1年。ハイパフォーマンスグレード「S4」が生まれ変わった。7段Sトロニックやリアスポーツディファレンシャルなど新機軸満載の新型に早速試乗した!
ここまでやるのか?
「アウディS4」といえば、A4シリーズの頂点として、もっとも高いパフォーマンスを誇る存在。とは言うものの、さらにその上にはクワトロGmbHが開発した「RS4」も設定されているから、それほどスポーツ性に特化した過激な存在にはなっていない……というのが、その位置づけだった。今までは。
しかし新型S4は、そんなヒエラルキーをひっくり返すくらい刺激的なパフォーマンスとダイナミクスを手に入れている。
「アウディがここまでやってしまって、本当にいいの?」
新しいS4は、そんなふうに感じてしまうくらい、走りへのこだわりを感じさせるモデルに仕上がっているのだ。
相変わらず見た目は控えめなほうである。縦方向のバーが強調されたグリルや専用のエアロパーツ、アルミ調のドアミラーなどお約束のアイテムが付加されてはいるが、外観の基本的な仕立ては「わかる人にはわかる」という程度。一方インテリアは、カーボン製パネルが使われ、シルクナッパレザー張りのスポーツシートやバング&オルフセン製オーディオなどがフルに装備されるなど充実している。
力強さと爽快感
しかしなんと言っても注目すべきは、そのメカニズムだ。まずエンジンは、先代のV型8気筒4.2リッター自然吸気から、V型6気筒3リッター直噴スーパーチャージャー付きへと置き換えられた。このダウンサイジングによって、最高出力は11ps減の333psとなるも、最大トルクは逆に3.1kgm増しの44.9kgmに。しかも燃費は18%の改善を見ているという。
そして、そのパワーを伝達するギアボックスには同時デビューの「A4 2.0TFSIクワトロ」と同じくデュアルクラッチギアボックスの7段Sトロニックを採用した。
さらにリアディファレンシャルには、これまた新機軸の「アウディスポーツディファレンシャル」が搭載される。これは左右輪のトルク配分をアクティブに可変させて走行安定性と旋回性をともに向上させるシステム。三菱の「スーパーAYC」やBMWの「ダイナミックパフォーマンスコントロール」などと同じ働きをするものだといえばわかりやすいだろうか。S4では、ステアリングのギア比やダンパー減衰力、エンジンやトランスミッションの特性を任意で変更できる、標準装備のアウディドライブセレクト(ADS)で、このスポーツディファレンシャルの効きをも調整することが可能だ。
まさにアウディが誇るハイテクを結集させたこのS4。強い印象をもたらすのは、まずはエンジンである。スーパーチャージャーの効果か、アクセルを軽く踏み込んだだけでも図太いトルクを発生し、しかもそのまま踏み降ろしていくとトップエンドまでリニアにパワーを放出しながら一気呵成に回り切る。過給器付きならではの力強さと、過給器付きらしからぬ爽快感が見事に両立させられているのだ。Sトロニックの歯切れの良い変速感も、こういうエンジンとの組み合わせだからこそ、おおいに活きるというものだろう。
これまでにない操縦性
コーナリングは過激な躾けだ。ノーマルモードでは快適な乗り味をもたらしているADSをダイナミックモードに切り換えてワインディングに挑むと、まずターンインがきわめてニュートラルステアに近づいていく。これだけだったらADS付きのA4でも似た感覚を味わえるが、S4の場合はさらに脱出に向けてアクセルを気持ち多めに踏み込んでいくと、まるでFR車のようにアクセルでリアを振り出すように曲げていくことができるのだ。ブレーキングと操舵、そしてアクセルオンのタイミングを合わせればカウンターステアだって許容する。こんな操縦性は、これまでのアウディでは考えられなかったものと言える。
アウディのクワトロと言えば、圧倒的なスタビリティこそがなによりの持ち味。そう考えると、ここまで曲げる必然性があるのかは微妙なところではある。徐々に奥が深くなっていくようなコーナーでは、電子制御される要素が複雑に絡み合っているゆえか、やや挙動の滑らかさを欠く感があるのも気になった。しかし楽しくなかったかといえば、少なくとも短時間の試乗では、おおいに楽しんでしまったのも事実だ。
そんな新しいS4、大きな飛躍を見せたその走りとは裏腹に、価格はセダンで785万円とリーズナブルな線に収まっている。なにしろ3.2FSIクワトロは645万円するのだ。これだけのハイテクと前述の装備がすべて標準だと考えれば、S4は買い得とすら思えてくる。この経済環境でも健闘を続けているアウディにとって、勢いに弾みをつける1台になる可能性は十分だと言えそうである。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2026.2.23 「BYDシーライオン6」は満タン・満充電からの航続可能距離が1200kmにも達するというプラグインハイブリッド車だ。そして国内に導入されるBYD車の例に漏れず、装備が山盛りでありながら圧倒的な安さを誇る。300km余りのドライブで燃費性能等をチェックした。
-
アルファ・ロメオ・トナーレ ハイブリッド インテンサ(FF/7AT)【試乗記】 2026.2.22 2025年の大幅改良に、新バリエーション「インテンサ」の設定と、ここにきてさまざまな話題が飛び交っている「アルファ・ロメオ・トナーレ」。ブランドの中軸を担うコンパクトSUVの、今時点の実力とは? 定番の1.5リッターマイルドハイブリッド車で確かめた。
-
トライアンフ・トライデント800(6MT)【海外試乗記】 2026.2.20 英国の名門トライアンフから、800ccクラスの新型モーターサイクル「トライデント800」が登場。「走る・曲がる・止まる」のすべてでゆとりを感じさせる上級のロードスターは、オールラウンダーという言葉では足りない、懐の深いマシンに仕上がっていた。
-
マセラティMCプーラ チェロ(MR/8AT)【試乗記】 2026.2.18 かつて「マセラティの新時代の幕開け」として大々的にデビューした「MC20」がマイナーチェンジで「MCプーラ」へと生まれ変わった。名前まで変えてきたのは、また次の新時代を見据えてのことに違いない。オープントップの「MCプーラ チェロ」にサーキットで乗った。
-
アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ エストレマ(FR/8AT)【試乗記】 2026.2.17 「アルファ・ロメオ・ジュリア」に設定された台数46台の限定車「クアドリフォリオ エストレマ」に試乗。アクラポビッチ製エキゾーストシステムの採用により最高出力を520PSにアップした、イタリア語で「究極」の名を持つFRハイパフォーマンスモデルの走りを報告する。
-
NEW
右も左もスライドドアばかり ヒンジドアの軽自動車ならではのメリットはあるのか?
2026.2.25デイリーコラム軽自動車の売れ筋が「ホンダN-BOX」のようなスーパーハイトワゴンであるのはご承知のとおりだが、かつての主流だった「スズキ・ワゴンR」のような車型に復権の余地はないか。ヒンジドアのメリットなど、(やや強引ながら)優れている点を探ってみた。 -
NEW
第950回:小林彰太郎氏の霊言アゲイン あの世から業界を憂う
2026.2.25マッキナ あらモーダ!かつて『SUPER CG』の編集者だった大矢アキオが、『CAR GRAPHIC』初代編集長である小林彰太郎との交霊に挑戦! 日本の自動車ジャーナリズムの草分けでもある天国の上司に、昨今の日本の、世界の自動車業界事情を報告する。 -
NEW
ルノー・グランカングー クルール(FF/7AT)【試乗記】
2026.2.25試乗記「ルノー・グランカングー」がついに日本上陸。長さ5m近くに達するロングボディーには3列目シートが追加され、7人乗車が可能に。さらに2・3列目のシートは1脚ずつ取り外しができるなど、極めて使いでのあるMPVだ。ドライブとシートアレンジをじっくり楽しんでみた。 -
NEW
第862回:北極圏の氷上コースでマクラーレンの走りを堪能 「Pure McLaren Arctic Experience」に参加して
2026.2.25エディターから一言マクラーレンがフィンランド北部で「Pure McLaren Arctic Experience」を開催。ほかでは得られない、北極圏のドライビングエクスペリエンスならではの特別な体験とは? 氷上の広大な特設コースで、スーパースポーツ「アルトゥーラ」の秘めた実力に触れた。 -
ボルボEX30クロスカントリー ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2026.2.24試乗記ボルボの電気自動車「EX30クロスカントリー」に冬の新潟・妙高高原で試乗。アウトドアテイストが盛り込まれたエクステリアデザインとツインモーターからなる四輪駆動パワートレイン、そして引き上げられた車高が織りなす走りを報告する。 -
エンジニアが「車検・点検時に注意すべき」と思う点は?
2026.2.24あの多田哲哉のクルマQ&Aすっかりディーラー任せにしている車検・点検について、ユーザーが自ら意識し、注視しておくべきチェックポイントはあるだろうか? 長年トヨタで車両開発を取りまとめてきた多田哲哉さんに意見を聞いた。






















