日産スカイライン 370GT タイプSP (FR/7AT)【ブリーフテスト】
日産スカイライン 370GT タイプSP (FR/7AT) 2009.02.19 試乗記 ……459万7950円総合評価……★★★★
発売当初からクーペモデルには搭載されていた3.7リッターV6エンジンが、この冬セダンにも採用された。スポーティ仕様の最上級モデルでその走りを試す。
ハイレベルな仕上がり
2008年12月の小変更で、上級グレードのエンジンが従来の3.5リッター「VQ35HR」から3.7リッター「VQ37VHR」に、トランスミッションが5段ATから7段ATに置き換えられ、ますます魅力を増したスカイライン。実際に運転してみると、スポーティなだけでなく、快適さも兼ね備える、ハイレベルなスポーツサルーンに仕上がっていた。
4輪アクティブステア(4WAS)は熟成の跡が見られ、デビュー当時に比べると人工的な味付けが薄まっている。ただ、まだ一部不自然さも残っていて、個人的にはこのオプションを選ぶかどうかは微妙なところ。4WASが、スカイラインの走りを楽しむうえで必須のアイテムとは思わないし。
そんなディテールはともかく、この内容でこの価格なら説得力は十分だろう。“C”や“3”もいいけれど、日本発のグローバルスポーツサルーンもぜひ一度お試しあれ!
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行スカイラインセダンは、2006年11月20日に発売された12代目。当初のエンジンラインナップはハイレスポンスを謳うV6ユニット「VQ35HR/VQ25HR」の2種が用意され、トランスミッションはいずれも5段AT。
2008年12月のマイナーチェンジで、従来の3.5リッターエンジンがバルブ作動角・リフト量連続可変システム(VVEL)を備えた3.7リッター「VQ37VHR」エンジンに変更され、トランスミッションはマニュアルモード付きの7段ATが採用された。
装備では、2.5リッターを含むすべてのモデルで、オプション設定だったSRSカーテンエアバッグ、前席サイドエアバッグ、アクティブAFSなどが標準装備となった。
(グレード概要)
テスト車は、3.7リッターの最上級モデル「370GT タイプSP」。スポーツフロントバンパーやサイドシルスポイラー、スポーツチューンドサスペンションが装備されるスポーティ仕様。3.7リッターのベースモデル「S」と比べ、運転席ランバーサポートやチルトメーター&チルト・テレスコピックステアリングの操作が電動になるほか、運転席連動ステアリング/ドアミラー自動調節システムや、前席シートヒーター付き本革シート、パーソナルドライビングポジションメモリーシステムなどが標準装備される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ダッシュボートからフロントドアまで連続するデザインが、ドライバーを包み込む感じをうまく演出するスカイラインのコクピット。T字型のダッシュボードはいたってシンプルだが、太い本アルミパネルやそれなりに質感の高いダッシュボードの素材、ドアトリムに配された合皮のパッドなどが、スポーティさと質感を高めている。
メーターは、見やすい大型のアナログ式。文字盤に灯る紫のイルミネーションはカッコいいと思わないが、Z同様、ステアリングとともにメータークラスターがチルトするのはいいと思う。
メーカーオプションのカーナビは、ディスプレイのすぐ下にたくさんスイッチが並ぶのが視覚的に少しうるさいけれど、操作性はまずまずで、これで手を伸ばさずにすむ位置に主要なスイッチがあればさらに使いやすくなる。
(前席)……★★★★
最上級グレードの370GT タイプSPでは、レザーシートが標準装着されるうえ、運転席、助手席ともにポジション調節が電動になる。座り心地は、張りのあるレザーが適度なサポートを生んで心地良い。電動シートだけにポジション調節がきめ細かくできるのもうれしい点だ。電動の運転席ランバーサポートも搭載される。
ステアリングコラムはチルトとテレスコピックが電動調節でき、シート、ミラー位置とともに、リモコンキーに連動してメモリーすることが可能だ。
(後席)……★★★
膝のまわりや頭上には十分なスペースが確保されている。シートは、クッション、バックレストとも立体的な形状のおかげで身体の収まりがよく、また、リクライン調節が可能なので、好みの姿勢が取りやすい。前席下が狭く、足をあまり前に出せないのがやや難点。シートベルトのバックルが乗員に近い位置にあるのは少し窮屈に思えた。
(荷室)……★★★
奥行きは90cm台、幅も100〜140cmと、このサイズのFRセダンとしては、とくに大きいわけではないが、荷室高が50cm前後あるのと、ホイールハウスより後ろの部分が幅広くなっているので、この数字から想像する以上に荷物が詰め込めそう。だた、トランクの開口部はあまり大きくない。後席にはトランクスルーが付くが、シートは固定式なので、長尺物の収納は難しいだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
従来の3.5リッター「VQ35HR」でも不満はなかったが、この3.7リッター「VQ37VHR」はさらに気持ちよくレブリミットまで回転を上げる印象だ。
排気量に余裕があるので、2000rpm以下でもトルクにはゆとりがあり、実に扱いやすい。もちろん、高回転型エンジンを謳うだけに、回せば回すほど魅力を増すのが特徴で、3000rpmを超えるころには一段とトルクの盛り上がりを見せ、4000rpm前後からはグォーンというサウンドを伴いながらレッドゾーンの7500rpmを突き抜けるまで力強い加速が続くのだ。
7段ATはシフトショックが小さいうえ、マニュアルモード時の素早いシフトが好印象。とくに自動的にブリッピングしながらレスポンスよく決まるシフトダウンは爽快だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
デビューから2年あまりが過ぎ、久しぶりに乗って感心したのがその快適さだ。乗り心地自体はやや硬めながら、18インチタイヤのあたりはマイルドで、バネ下の動きを上手く抑え込んでいる。一般道では、フラットさが感じられるほど落ち着いた挙動を見せ、その印象は高速になっても変わらない。高速の直進安定性も高いレベルにあり、長距離ドライブが楽しいタイプのクルマである。
一方、コーナーでは、4輪アクティブステアのおかげで、クイっと曲がる感覚が面白いが、舵角が小さいときのステアリングフィールに不自然さが残るなど、気になる部分もあった。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2009年2月9日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年式
テスト車の走行距離:4616km
タイヤ:(前)225/55R18(後)245/45R18(いずれも、ブリヂストン POTENZA RE050A)
オプション装備:4輪アクティブステア(13万6500円)/HDDカーウィングスナビゲーションシステム(45万450円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:271.1km
使用燃料:37.39リッター
参考燃費:7.25km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。






























