第78回:パリ直送!「レトロモビル2009」速報
2009.02.11 マッキナ あらモーダ!第78回:パリ直送!「レトロモビル2009」速報
拡大
|
拡大
|
アダルト化、進む?
2009年2月6日、ヨーロッパ最大級のヒストリックカーショー「第34回レトロモビル」がパリで開幕した。
今年創業90年を迎えたシトロエンは、前日に発表した新ロゴで会場セットを統一。1919年の「タイプA」と、現行の「C3ピカソ」を中心に据え、その周囲を「DS」「SM」「アミ」「2CV」「メアリ」など各公認クラブのスタンドが取り囲んだ。
シトロエンの歴史保管庫からの出展が多い例年とは対照的に、今年はレストア直後の個人蔵車が主なクラブの主役を務めた。
会場全体を見渡して気づくのは、いかにもレトロモビルに通い詰めたと思われる年配のエンスージアストが増えていることである。率直にいえば、アダルト化? が進んでいるのは明らかだ。
そういう筆者も、気がつけば最初に来たのは13年前。今や常連のフランス人から「毎年見かけるねえ」と声をかけられ、そういう彼らの眼の奥には「あんたも好きねえ」と書いてあるようになった。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
まだまだある魔力
それはさておき、2日目夜恒例のオークションは、昨年からクリスティーズにかわって担当するようになったボナムス社によるものだ。
今年の目玉は、1937年「ブガッティ・タイプ57Sアタランテ・クーペ」である。ブガッティの中でもアタランテといえば、エンスージアスト垂涎の的だが、このクルマはなんと約50年にわたってガレージで惰眠を貪っていたという数奇なストーリーをもつ。今回はほぼ発見されたままのコンディションでの出品だった。
欧州でもアメリカでもコンクールデレガンスというと、常連といわれるクルマが勝つようになって久しい昨今だが、ヒストリックカーの世界には、こんな奇跡も、まだ存在するのである。
なお、このアタランテは、会場の直通電話参加者によって310万ユーロ(約3憶6890万円)で落札され、その瞬間会場からは拍手が巻き起こった。
特別展示の中で来場者の注目を集めていたのは、「新しいエネルギー」のコーナーである。といっても、ここはレトロモビル。最新モデルの展示ではないところがミソだ。
走行前に充填した80バールの圧搾空気でシリンダーを動かす市電は、なんと133年前にフランス・ナントで営業運転が開始されたものだ。
戦後間もなく1947年にゴネというエンジニアが試作した車両は、フロントにチュンダップの2気筒エンジンを、リアに電気モーターを搭載した、ハイブリッドである。
乗り物産業が今のように高度化・複雑化する以前は、かくも自由な発想で溢れていたという、なかなか考えさせられる企画である。
また今年は、レトロモビル史上初の試みとして、アマチュアも参加できるコレクターズセールが2月14日、15日に開催される。
かくもレトロモビル自体は、常に時代に合わせて進化を試みている。だからこそ何度訪れても飽きない。それこそが「あんたも好きねえ」と言われながらもまたふらふらと来てしまう、レトロモビルの魅力、いや魔力に違いない。
「レトロモビル」はパリ・ポルト・ド・ヴェルサイユの見本市会場で2009年2月15日まで開催中。
以下、写真でお楽しみください。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
最終回:人それぞれに「最後のアルファ・ロメオ」 2026.8.27 イタリア・シエナで開催された「アルファ・ロメオ・スパイダー/GTV」のささやかなオーナーミーティングを、地元在住の大矢アキオが取材。あなたにとって最後で最高のアルファ・ロメオは、いつの世代のどのモデルですか?
-
第975回:ホンダ&スバルのTシャツがイタリアを席巻中 2026.8.20 イタリアで、ホンダやスバルをモチーフにした“日本車Tシャツ”が人気に。自動車をモチーフにしたアパレルの世界で、日本車や日本のブランドがもてはやされる理由とは? 素直に喜べないその背景を、現地在住の大矢アキオが考察する。
-
第974回:「民生用」と「軍用」をまたぐクルマたち――ルノーの最新戦術車両に思う 2026.8.13 ルノーのクロスオーバーSUV「ラファール」がまさかの軍用車に? ルノーと軍需との第1次大戦にまでさかのぼるつながりと、彼らが今ふたたび防衛産業と距離を詰め始めた理由、世界的に見られる軍用と民生用の垣根を超えたクルマの歴史を、大矢アキオが解説する。
-
第973回:静かになりすぎたクルマと「聴かせて、聴かせて隊」に思うこと 2026.8.6 最近イタリアでよく見かけるという、道行くスポーツカーやスーパーカーのドライバーに、豪快なエキゾーストサウンドをせがむ若者の姿。彼らの存在は静かになりすぎた四輪車に対するアンチテーゼか? 現地在住の大矢アキオが考察する。
-
第972回:黒船来襲も! イタリア自動車販売店は戦国時代 2026.7.30 イタリアで急速に進む、自動車販売店の統廃合と巨大グループの伸長。その背景にはどんな理由があり、私たちにどんな変化をもたらすのか? 現地在住の大矢アキオが、変わりゆく自動車販売のあり方を考察するとともに、消えゆく街かど自動車文化に思いをはせた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。