トヨタの最新安全技術を体験(前編)
2012.11.19 自動車ニューストヨタの最新安全技術を体験(前編) 衝突事故を軽減・回避する3つの技術
2012年11月14日、トヨタ自動車は同社の東富士研究所において「安全技術説明会」を実施した。今回の安全技術説明会の主たる内容は、先日概要が発表された、これから登場する新型車に採用予定の3つの安全技術(関連記事はこちら)をテストコースで実際に体験すること、および東富士研究所内に新設した「ITS実験場」における、研究開発中の路車間・車車間通信システムのデモンストレーションだった。その模様を2回に分けてリポートする。
■アクセルとブレーキの踏み間違い事故を防止する
間もなく登場する新型セダン、というからおそらく次期「クラウン」に導入されるであろう3つの安全技術。そのうち2つは、国内で年間7000件前後も発生しているというアクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故防止を主目的に開発された。
うちひとつがクリアランスソナー(超音波)によって障害物を認識した場合、急発進による衝突時の被害軽減に寄与する「インテリジェンス・クリアランス・ソナー(ICS)」。踏み間違い事故の多くが駐車場で起きていることから、試乗体験はコンビニエンスストアの駐車場で、セレクターを「R」レンジに入れた状態で急発進し、壁に衝突しそうになるという想定で行われた。アクセル全開状態で後退すると、まず警報音が鳴り、それでもアクセルを踏み続けると自動的にエンジンの出力が制御され、ブレーキがかかるという仕組みである。試乗では壁との隙間を10cmほど残して停車し、衝突は避けられた。
もうひとつは、「ドライブ・スタート・コントロール(DSC)」。駐車場などでアクセルを踏んだまま「R」レンジから「D」レンジにシフトするなど、通常とは異なるアクセルやシフト操作をした際に、画面表示などで注意を促すと同時に出力を制御して急発進、急加速を抑制するという機構である。こちらは同乗体験だったが、駐車場で後退した際にポールに衝突してしまい、あわててアクセルを踏んだまま「R」から「D」にシフトするという設定だった。システムが作動すると、この状況で「D」レンジでアクセル全開にもかかわらず、発進はまったく勢いがなかった。
■トヨタの「PCS」は高い速度域の追突までカバー
3つ目の安全技術はミリ波レーダーを使った「衝突回避支援型プリクラッシュセーフティシステム(PCS)」。PCSは他社も含めて採用が広がりつつある安全技術だが、トヨタの新しいシステムは高い速度域の追突までカバーし、実際に発生している追突事故の90%以上の速度域に対応しているというのが特徴である。
具体的には、追突事故の90%以上が相対速度(追突する車両とされる車両との速度差)60km/h以内で起きているというデータに基づき、追突の危険を検知すると警報によりドライバーにブレーキによる減速を促し、実際にブレーキを踏んだ際に最大60km/h(先行車が20km/h、自車が80km/hで走行の場合)の減速をアシスト。また居眠りなどにより警報に気づかずブレーキを踏まなかった場合も、15km/hから30km/h程度の減速を自動的に行うというものだ。
試乗体験は70km/hまで加速してそのまま速度を維持、ゆっくり走る先行車に接近して警報が鳴ってからブレーキを弱く踏み(赤信号で止まる程度)、このままだとぶつかる! という状況でPCSが作動し、追突を回避するというもの。なぜブレーキを弱く踏むかというと、実際の追突事故のデータによると、追突前にブレーキを踏んではいるものの踏力が弱い(一般的にイメージする急ブレーキの半分以下)ケースが多いからという。
このほか、すでにマイナーチェンジされた「レクサスLS」に搭載されている、ミリ波レーダーとステレオカメラを組み合わせ、自車と対象物の相対速度40km/h以下で自動ブレーキが働き衝突回避を支援する、バージョンアップされたPCSの作動体験も実施された。
(文と写真=沼田亨)
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