第49回:アルファMiToの横丁の「夜会」! 気になるイタリア人の反応は?
2008.07.12 マッキナ あらモーダ!第49回:アルファMiToの横丁の「夜会」! 気になるイタリア人の反応は?
MiToのアンテプリマ
日本のメディアで早くも話題騒然の「アルファ・ロメオMiTo」だが、普通のイタリア人はというと、まったくもって冷静である。
背景には、前回記したように早めに夏休みムードが高まるイタリアでは、自動車販売が冷え込むことがあるからだ。そのため現状では、MiTo知ってる?と若者に聞いても、「もしかしたら聞いたことあるかな〜」だったり、まったく知らなかったりする。
実は前回の取材でアルファ・ロメオのディーラーも訪問したのだが、実車はおろかMiToのミの字も見当たらない。
営業所長に聞くと、「本格的販売は9月からだなぁ」と教えてくれた。
ところがそう聞いてボクが店を出ようとしたときだ。所長が
「でも、来週木曜日にMiToのアンテプリマやるから、おいでよ」と付け加えるではないか。
“anteprima”とはイタリア語で内覧会を意味する。
「夜6時半から9時までだよ」
内覧会というより、夜会といったところか。
なんで「半」なのか突っ込みたかったが、「6時『半』ですね? と、妙に正確ですねえ」と強調するように留めた。
所長は「そう。『半』だよ」と言ってガハハと笑った。
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来場者の反応
約束の7月3日木曜日、夜6時半過ぎ、ボクは再びアルファディーラーに赴いた。冒頭のように知名度はこれからのMiToである。いったい人が集まっているのか……。そんな心配をよそに、店にはすでに10人ちょっとのお客さんが入れ替わりたち替わり入っていた。
先日の所長をつかまえて聞けば、上得意客にダイレクトメールで知らせたのだという。
店頭に来ていたのは、1.4リッターガソリンターボ仕様。「ロッソ・ジュリエッタ」と名づけられたボディカラーは、普段のアルファのイメージを持って見るとかなり明るい印象を受ける。
なおカタログには、これとは別に、いわゆる「ロッソ・アルファ」も用意されるとあった。
気になる来場者の反応は?
初心者の時からずっとイタリア車党というエンリコさん(プログラマー)は、「とてもよくできた車だね」と印象を述べた。
ここに来る前に近くのランチアショールームで新型「デルタ」も見てきたという彼は、最近のフィアット系モデルの質感向上を評価する。
「値段も適切だと思う」と。
MiToのイタリア国内価格は、1.4リッターの78馬力モデルの1万5300ユーロ(約257万円)から始まるが、これは来年からこの国で施行される、初心者ドライバーに対する馬力制限対応モデル。事実上のベースモデルとなるのは、1.4リッターターボで155馬力の1万7950ユーロ(約303万円)だ。
MiToが気になっているとみたエンリコさんだが、昨年新型「フィアット・ブラーヴォ」を買ってしまったので、しばらくはお預けのようだ。
賛否両論
このアルファ販売店と同じ親会社が経営するメルセデスディーラーでCクラスのスポーツクーペを買ったという若者も、アルファのクオリティ感向上に驚いていた。
「昔乗ってたフィアット・プントは、シフトノブがいきなりスッポーンと抜けるような代物だったからね(笑)」
さらに「街乗りにはいいサイズに違いない」とそのコンパクトさを評価した。
ただし実際に買う可能性は? と聞くと、彼の場合ノーコメントに終わった。
今回の来場者とは別に、MiToの存在を慎重にとらえるイタリア人がいることも事実だ。さきほどのエンリコさんは「価格が適切」と答えたが、今日多くの若者の間には、「アルファは割高」という意見が多く聞かれる。イタリアでは1万8000ユーロあると、より排気量が大きい1.6リッターの「フォルクスワーゲン・ゴルフ」が買えるのである。
またボクの知り合いで、過去に「アルファ164」や「アルファ75」を乗り継いだという60代のアルフィスタ卒業生たちも、「イタリアでも速度や交通規制が厳しくなった。メーカーがスポーティといっても、もはや走りを楽しむ時代ではなくなった」「フィアット色が濃くなった今のアルファは昔とは別のもの」と冷静だ。
強面なセールスマンだけど……
ともあれ、MiToの勝負も夏が終わらないと始まらない。それに、自他共に認めるおしゃべり好きイタリア人の間で賛否両論が繰り広げられることで、その存在が伝播してゆくに違いない。イタリアの自動車業界は「夢は夜ひらく」ならぬ「夢は秋ひらく」のである。
ショールームを覗くと、さっそく2組ほどの商談が始まっていた。やはりデリバリーは早くて9月末、本格的に始まるのは10月から11月という。
この日は最初の1台ゆえ試乗はなし。「ちょっとだけヨ」という感じで、来場者はエンジン音やエグゾーストノートのみを楽しんだ。
さて、今宵招いてくれた礼を言って帰ろうとしたときだ。3人のセールスマンに手を阻まれた。いずれもボクより背が高く、スキンヘッドである。顔見知りとはいえ、ビジュアル的に結構ビビる。もし日本人が見ていたら、明らかに「何らかの事件」と映るに違いない。
ところが、どうだ。
彼らは「もうそろそろ俺たちを苗字で呼ぶのは、よそよそしいからやめようぜ。頼むからアンドレアやルカと(ファーストネームで)呼んでくれよな」
と言ってボクの手をガッチリ握った。
強面の彼らだが、ノリは気がおけない。イタリアでMiToを買うと、こうしたアミーコ(友達)感覚溢れるセールスマンとお知り合いになれるという特典も、もれなく付いてくる。
(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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