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【スペック】全長×全幅×全高=4671×1895×1829mm/ホイールベース=2690mm/車重=1948kg/駆動方式=4WD/4リッターV6DOHC24バルブ(242ps/5200rpm、38.4kgm/3700rpm)(北米仕様車)

トヨタFJクルーザー(5AT/4WD)【海外試乗記】

日本生まれ北米育ち 2008.06.04 試乗記 河村 康彦 トヨタFJクルーザー(5AT/4WD)
日本ではあまり聞き慣れないトヨタのSUV「FJクルーザー」。1960年代のランドクルーザー「40系」のスタイルを再現した、トヨタが北米向けに生産するモデルだ。自動車ジャーナリスト河村康彦がアメリカで試乗した。

ベースはプラド

「40系」と称された“ジープルック”の「トヨタ・ランドクルーザー」。1960年の発売以降、四半世紀近くセールスが続けられ今でも世界各国で名車の誉れが高い。「トヨタFJクルーザー」とは、そんなヨンマルのアイコンをデザインに採りいれたいわゆるノスタルジックカー。2006年から北米マーケット限定で発売されているモデルだ。

郷愁を呼び起こすフロントマスクを備えたモデルだが、“レトロカー”と称されるモデルたちと一線を画すのは、そのデザインがノスタルジーの演出だけにとどまらず、たとえばサイドビューなどには新たなスタイリングの提案も盛り込んだ点にある。ハードウェアも、このモデルがベースとするのは日本でいうところの「ランドクルーザー・プラド」。すなわち、ボディ骨格には屈強なフルフレーム方式を採用するなど、見た目だけではなくその構造上もヨンマルに敬意を表した本格的なオフローダーとしての内容を備えるのだ。

米国旅行の折に運よく触れることができたのは最新の2008年モデル。以前のモデルと異なる点は、全席対応のカーテンエアバッグが標準装着され、ビルシュタイン製ダンパーやラグ溝タイヤ、リアのデフロックなどといった本格的なヘヴィーデューティ装備が“オフロードパッケージ”としてオプション設定されるところある。

6段MT(!)や後2輪駆動モデルも用意されるFJクルーザーだが、今回借り出したのは4WDの5段AT仕様。オプションとして、キーレスエントリーやバックソナーなどからなる“コンビニエンスパッケージ”や、ダッシュボード上の3連マルチインフォディスプレイ、サブウーハー付きアップグレードオーディオなどがセットの“アップグレードパッケージ”が装備される。これだけ付いても価格は、3万868ドル(約320万円)となかなかリーズナブルだ。

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合理的なパッケージング

FJクルーザーは、先輩が築いたヘリテッジに敬意を表しつつ、それに頼るだけではないモダンさを盛り込むことにも挑戦した。乗り込んでみると、「ルックスこそがまずは売り物」であるはずが、実は最新のSUVとしてもなかなか優れた実用性の持ち主であることに感心した。

前述のように本格フレーム式ボディの採用もあり、高いフロア/シートへの乗降性は優れているとは言えない。しかし、外観からは期待のできなかった後席スペースにはそれなりのゆとりがあるし、ラゲッジスペースは後席使用時でもドカンと広い。“キュービック・フィート”で表示されるEPA測定法によるラゲッジスペース容量を換算してみると、後席使用時で790リッター、後席アレンジ時には1892リッターにもなったからそれも「なるほど」だ。こちらもまた、“ポンド”を換算した結果に得られた車両重量は1948kg。本格的なオフローダーという点を考慮すると「意外に軽量?」というところだろうか。

そんなFJクルーザーを、6気筒の4リッターエンジン+5段ATという組み合わせは、まずどのようなシチュエーションでも不満なく加速させてくれた。フリーウェイジャンクションの坂をのぼりながらの合流や、砂漠地帯の丘陵を越えるための延々何マイルにも及ぶダラダラ坂といったアメリカではありがちな条件下では、まず何よりもエンジン排気量がモノをいうもの。こうした時には4リッター排気量もさして“大排気量”とは思えなかった。それでも特にアクセルペダルを深く踏み込む要もなしに、なんなく走り切ってくれた。

オールラウンダー

フルフレーム式のボディゆえ「ブルブル来るかな?」とある程度覚悟をした乗り味も、路面凹凸を乗り越えると多少“その気”はあるものの“乗用車”として長時間を乗り続けても不満のない快適性を提供してくれた。それはハンドリングの感覚でも同様だ。見渡す限りが地平線、といった状況下で強風に吹かれても進路の乱れは最小限。むしろ舵の正確性は、全高が1.8mを超え、オールシーズンタイヤを履くという点を考慮に入れればこれもまた「想像と期待以上!」という評が与えられる。

今回はちょっとばかりのオフロード走行にもトライをしてみた。こんなシーンではさすがは“プラド譲り”の踏破力が輝くことに。
サスストロークの長さは「さすが」の一言だし、荒れた路面でキックバックを巧みに遮断してくれるステアリングシステムも、昨今流行の“SUV”とは一味違う本格派の仕上がりだ。
一方、ちょっと残念なのはせっかくの4WDシステムの恩恵をオンロード上では受けられない点。MT仕様ではトルセン式のセンターデフを用い、フルタイム4WD車としての扱いが可能なFJクルーザーだが、AT仕様のシステムはパートタイム方式。しかも、それを4WD位置に切り替えるとESC(トヨタ名“VSC”)がカットされてしまうこともあり、日常ユースでの4WDポジションの使用は推奨されないのだ。

それにしても何より悔しいのは、これほどの美味しいモデル(それも実は日本国内製なのだ!)を事実上アメリカ人に“占有”されてしまっていること。もう少し幅狭で、もちろん右ハン仕様の日本向けモデルをこしらえて貰えれば、きっと現在のトヨタラインナップの中でも飛び切りのオススメモデルとなってくれそうなのに……。

(文と写真=河村康彦)

河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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