第70回:あえて危険な状況を体験する!? 「BMWドライバー・トレーニング」に参加した
2008.05.23 エディターから一言第70回:あえて危険な状況を体験する!? 「BMWドライバー・トレーニング」に参加した
堂々と言いたいところですが……
「運転なら自信があるっ!」
クルマ好きなら堂々と言いたい一言である。ただ、実際のところ、ドライバー自身も気づかぬ長年の悪癖などがあるはずだ。常に正しい運転ができている人なんていないだろう。2008年5月17日から「BMWドライバー・トレーニング」が始まった。それにさきがけ、報道陣向けにも同様のプログラムが開催されたので参加した。レベルに応じていくつかのコースが選べる。今回は「コンパクトコース」。ただし取材用に若干短縮されたものである。
正しいドラポジから
トレーニングは運転の基本中の基本、ドライビング・ポジションから始まる。講師はモータージャーナリストの菰田潔氏だ。
「シートポジションは気持ち高めに設定しましょう。目線が高ければ前方死角を減らせます」
担当、低めを好む……。
「ステアリングは“9時15分”で持つことを勧めます。“10時10分”よりも1回の動作で切れる量がより多いのです」
思い出してみると10時10分……。
「ステアリングは、引くよりも押すように回すほうがいいですね。その方が手のひらでより多く路面インフォメーションを得られます」
引くように回している自分……。
というように、適したドラポジのためのポイントをなぜそうすべきなのか教えてくれる。基本的なことではあるものの、自分の運転を思い出すとできていない部分もある。恥ずかしい。座学から、焦る。
リラックスして急ブレーキ!?
ドラポジが補正されたら、いよいよ実車でブレーキングの講習だ。講師から受講生には「60km/hまで思いっきり加速し、目印のパイロンを超えたらフルブレーキングせよ」と司令が下る。
アクセルを床まで目一杯踏みつけ目標に突進。バイエルン仕込みのエンジンは「コォーン」と唸り、瞬く間に60km/hに達する。赤いコーンを通過したところで急ブレーキ。広く安全な場所と分かっていてもブレーキペダルを踏む際に、体がグッと力んでしまう。
「もう少し、リラックスして急ブレーキをかけましょう」と、講師のモータージャーナリストの佐藤久美氏。
「リラックスして急ブレーキ?」と思うかもしれないが、上半身がリラックス状態であることが大事なのだという。力んでいると障害物回避のためのステアリング操作ができなくなってしまうからだ。
“戻し”が肝心
続いては「スムース・ドライビング」の特訓だ。街なかでのスムースな運転のための講習である。
「助手席に座る同乗者がギアチェンジや加速、ブレーキングに気づかないような運転をしましょう」とは、講師のモータージャーナリストの五味康隆氏。動作ひとつひとつが雑だったり荒っぽかったりするとクルマの挙動がぎくしゃくする。荒い場合は外からクルマを見ていてもよくわかる。
運転するポイントは「動作はゆっくり確実に」だ。それはステアリング操作、ペダル操作、シフト操作すべてに言える。決して「ノロノロ走れ」ということではなく、スピードが高くても各動作を丁寧にということだ。
特に大事なのは“戻し”の動作。アクセル、ブレーキペダルから足を離す際に、パッと離してしまうのではなく、ゆっくり、丁寧に離すことが大切という。意外と忘れがちなことだが、クルマの挙動変化を抑えられるのだ。
「わかっているよ!」なんて言わずに
最後のレッスンはコーナリング。パワフルな3リッター直6を積んだ「130i」に教習車をチェンジする。円状に並べられたパイロンのまわりを、一定舵角を保ちながら30km/hから40km/hほどで走行する。ちょっと目がまわる特訓だ。
ここでは意識的にアクセルのオン、オフを行い、クルマが描くライン変化を体感する。多くのクルマは、一定舵角で旋回するとスピードを上げるにつれ少しずつ軌道が外側に膨らむ(=アンダーステア)。その時、ドライバーの多くは、外に膨らみだすと無意識のうちにステアリングを切り増しがちだという。
だが、それよりも大事なのは、アクセルペダルから足を離すことだ。車載トランシーバーに「ラインが膨らみすぎても、舵角はそのままに、まずはアクセルを戻すべし」と講師のモータージャーナリストの萩原秀樹氏からの司令。膨らみだしていたクルマの軌道はすぐに元へと戻った。
ちなみに、今回受講したものは4時間程度の講習だったが、通常のトレーニングでは、ほぼ半日を費やす。そのため、今回の講習以上に初歩的なレクチャーもある。『webCG』読者にとっては、「それくらいわかっているよ!」と思うかもしれないが、受けてみるとできていないこともありがち。「運転なら自信があるっ!」と思っていても受ける価値のあるドライビング・レッスンだ。コースによってはサーキット走行が組み込まれているものもあるので、クルマ好きには魅力的に映ることだろう。
「BMWドライバー・トレーニング」のスケジュールや詳細はこちらから
http://www.bmw.co.jp/jp/ja/brand/activities/driving/training_overview.html
(文=NAVI山田侑右/写真=BMWグループ・ジャパン)

山田 侑右
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。