(写真=北畠主税<ARGOS>)
ロータス2イレブン・ロードバージョン(MR/6MT)【短評(前編)】
面目躍如(前編) 2008.05.05 試乗記 ロータス2イレブン・ロードバージョン(MR/6MT)サーキットユースが前提の「ロータス2イレブン・ロードバージョン」。走行性能や日本の道路におけるユーティリティを『CG』塚原久が検証する。
『CG』2008年2月号から転載。
あのクルマがやってきた
2007年のジュネーヴ・ショーで世界初公開されたロータス2イレブンが同年の東京モーターショーでも展示されたことはファンのほとんどがご存知だろうが、“耐候性”というものをほとんど持たないあのクルマが、日本でもナンバーをぶら下げて走れるようになると聞くと、ぐっと興味も増すのではないだろうか。今回は鈴鹿サーキットのフルコースで最初のお手合わせを願った。
ロードカーをベースとして軽量化やサスペンションの強化を施し、サーキット走行を楽しめるように仕立てるのは、ある程度以上のポテンシャルを持つスポーツカーにとって珍しいことではない。だがこのロータス2イレブンの場合、公道とサーキットとの相対関係が常識とは逆になっている。つまりこのクルマはまずレーシングトラックで楽しめるマシーンとして作られ、公道も走れるようにしたと解釈するのが適当に思われるのだ。
以前ポール・ホレルが送ってきたリポートによると英国以外での公道走行は難しいとのことだったが、日本総代理店のエルシーアイは今、日本国内でナンバーを取得すべく着々と作業を進めている。確かにサーキット走行の敷居がさほど高くなくなった今の日本なら、これは案外と現実的な選択肢なのかもしれない。
写真をみればわかるとおりロードバージョンとはいってもウィンドシールドさえ備わらず、雨露を凌ぐ幌やエアコン/ヒーターなど望むべくもないから、このクルマを日常的に走らせるにはかなりの覚悟が必要だが、考えてみればちょっと前にはルノー・スポール・スパイダーなど類似の例があったわけだし、モーターサイクルと比べれば身体が晒されてないぶん安全なことは間違いない。そう割り切れる筋金入りのエンスージアストなら、このマシーンを公道で走らせることに罪悪感など感じる必要がないことに気づくはずだ。
ロードバージョンは、ヘッドライトなどの安全装備を持たないトラックバージョンと比べて75kg車重が増え、745kg(メーカー公表値)になることを除けば、スペックの面ではほぼ同じといえる。パワーユニットはエキシージ・カップ240と同じく、トヨタの直列4気筒1.8リッターの2ZZ-GEU型にイートン社製ルーツ式スーパーチャージャーを組み合わせたタイプ。パワーとトルクは255ps/8000rpm、24.7mkg(242Nm)/7000rpmというから、カップ240と較べて8psと0.6mkgの強化が施されている計算になるが、これはたぶんブースト圧やECUの制御が巧みになったためだろう。
なお現行のエキシージのトップモデルであるカップ255も2イレブンと同じスペックをもっている。日本で登録される際の車検証記載重量は780kgというが、それを元に計算してもパワーウェイト・レシオは3.1kg/psとなり、レーシングスポーツとして立派に世界のトップクラスに肩を並べることが想像できる。
走行会の星
今回試乗した2イレブンは、まだ登録前の状態で、ナンバープレートも英国のそれをぶら下げたままだったが、鈴鹿のフルコースのパドックで対面するとレーシングカーとしてはちょっと頼りない雰囲気もあった。シートベルトはELR式3点しかついていない。きちんとブーツの備わったシフトレバーや2色に塗り分けられたシートなどを見ているうち、これなら多少のやせ我慢をすればロードユースも可能だろうと思った。
メーター類はノーマルのエリーゼとまったく同じレイアウトで、目の前の左側に10000rpmまでのレブカウンターが、右側にはマイル表示を主とした速度計が備わるのみ。シンプルそのものの計器類だが、小さな液晶モニターには水温計や燃料計が備わるし、レブカウンター中央には7500rpmあたりで点灯するシフトアップインジケーターもあるから、これで何の不都合もない。最近のレーシングスポーツはほとんどがPIに代表されるモニターシステムを採用しており、それが走行後のドライビング分析に役立つことは事実だが、モニターがあるとそれに気を取られすぎて「楽しく走る」ことより「速く走る」ことに意識が集中しがちなきらいがある。
その意味でロータスが850万円という決して安くないマシーンに質素なメーターしかつけなかったのは、旧き佳きレーシングスポーツの雰囲気を醸し出すだけでなく、「ラップタイムを気にせず楽しんでください」というメッセージが隠されているように感じた。(後編につづく)
(文=塚原久/写真=北畠主税<ARGOS>、ロータス・カーズ/『CG』2008年2月号)
拡大
|

塚原 久
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。

