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【スペック】全長×全幅×全高=4370×1750×1410mm/ホイールベース=2660mm/車重=1530kg/駆動方式=FR/2リッター直4DOHC16バルブ(156ps/6400rpm、20.4kgm/3600rpm)/価格=434万円(テスト車=528万7000円)

BMW120iカブリオレ(FR/6AT)【試乗速報】

スポーツドライビングの原点 2008.04.17 試乗記 森口 将之 BMW120iカブリオレ(FR/6AT)
……528万7000円
クーペモデルの導入から1ヶ月、BMW「1シリーズ」にカブリオレが追加された。2リッター4気筒エンジンを積む4シーターオープンモデルに試乗。その乗り心地は意外に……。
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クーペより100万円も安い

BMWマーケティングおそるべし、である。
「1シリーズカブリオレ」は、ボディの下半分をひと足先に出たクーペとほぼ共有するのに、エンジンはまるで違う。クーペが306ps/40.8kgmを発生する3リッター直列6気筒ツインターボの「135i」なのに、カブリオレは2リッター直列4気筒の「120i」。156ps/20.4kgm。パワーもトルクも半分だ。

ヨーロッパではカブリオレにもストレート6は積まれるのに(クーペに4気筒ガソリンエンジンの設定はない)、日本はなぜここまで区別するのか。インポーターに訊ねたら、このクラスの輸入車で後輪駆動は皆無なので、クーペでは走りをアピールすべく135iにしたが、カブリオレはフォルクスワーゲンやプジョーなどライバルが何車種か存在するので、それらと同じ排気量の120iで価格競争力を持たせたのだという。

プライスは434万円。ボディ形態だけ考えれば、クーペより高いはずのカブリオレが、逆に100万円以上安い。最大のライバルとなるだろう「フォルクスワーゲン・イオス2.0T」さえ10万円下まわる。たしかに相手はリトラクタブル・ハードトップを持ち、ターボエンジンを積むけれど、同じクラスのVWよりBMWが安いというのは衝撃的だ。


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【テスト車のオプション装備】
メタリックカラー=7万5000円/ボストンレザー=25万8000円/アロイホイール=9万2000円/ソフトトップ=1万7000円/ウィンドディフレクター=4万9000円/グレー・ポプラ・ウッドトリム=5万1000円/自動防眩ドアミラー=4万4000円/ルームミラー内蔵ETCシステム=4万9000円/PDC=10万8000円/アダプティブヘッドランプ=5万9000円/HiFiシステム=14万5000円
【テスト車のオプション装備】
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安くてもBMWスタンダード

でも120iカブリオレ、けっしてチープじゃない。ソフトトップは安っぽいビニールではなくクロス張りで、ブラックのほかグレーやベージュも用意。開閉は50km/h以下であれば走行中でもOKのフルオートで、約22秒で動作を完了する。

キャビンは他の1シリーズと同じ精緻な仕上げで統一。オートエアコンやパワーシートを標準装備し、iドライブやレザーシートをオプションで設定する。ソフトトップはリアウィンドウが小さく、斜め後方のブラインドスポットが広いことが、リトラクタブルハードトップと比較した場合の欠点だ。リアシートは幅が狭く、背もたれが直立に近いものの、幌を閉じた状態でも身長170cmの自分がラクに2人座れるスペースを確保。トランク容量は260リッターと、まずまずの容量を実現している。

安全面でも、リアシートのヘッドレスト裏にポップアップ式ロールバーを備え、Aピラーやフロア、ドアまわりを強化するなど抜かりない。つまり全身にBMWスタンダードが貫かれている。それが400万円台前半で買えるのは、「安い!」 と思ってしまう。そして走りを味わったいま、その気持ちはさらに強くなった。


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荷室は、ルーフを閉じた状態だと305リッター、オープン時で260リッターの容量を確保する。写真はオープン時。
荷室は、ルーフを閉じた状態だと305リッター、オープン時で260リッターの容量を確保する。写真はオープン時。 拡大

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おだやかな乗り心地

カブリオレの車重は135iクーペと同じ1530kgに達する。同じエンジンを積むハッチバックより140kgも重い。でもエンジンは156ps/20.4kgmというスペックから想像する以上に、低回転から豊かなトルクと好ましいレスポンスを発揮し、6段ATが的確にその力をデリバリーしてくれるので、上り坂を含めて力不足は感じなかった。

高速道路を走らなかったこの日のドライブでは、サイドウィンドウを上げていれば、ウィンドデフレクターなしでも風の巻き込みはほとんどない。乗り心地はおだやか。BMWの試乗記でこの言葉を使うとは思わなかったが……205/50R17という過激すぎないタイヤ、スポーツサスペンションでない足、スポーツタイプじゃないレザーシート、オープンとは思えない剛性感を持つボディの集合体は、いい意味でドイツ車らしくない、しっとりした乗り心地を届けてくれた。

おかげで街なかでは重くグリップが太いステアリングが不釣合いに思えたが、ペースを上げるとアクティブステアリングではない自然な操舵感に、むしろ好感を抱くようになる。軽い4気筒を前車軸より完全に後ろに積んだおかげで、身のこなしは軽快そのもの。コーナーでのバランスのよさに50:50の重量配分を実感する。
右足を床まで踏み込んでもコトは起こらないけれど、旋回を強めながら地を蹴る感触はやっぱりFR。思えば素のBMWシャシーを味わうのはひさしぶりだ。それがこんなに気持ちいいとは!

気がつくとATをマニュアルモードに切り替え、エンジンを回して山道を駆け回ってしまった。バルブトロニック装備の4気筒をオープンで味わうのはこれが初めて。回転は全域にわたってスムーズで、3000rpmあたりから力強い唸りを加えていく。さすがBMW、6気筒じゃなくてもスポーツできるのである。

それは4人乗りの「ユーノス・ロードスター(マツダではない)」のようであり、昔の「2002」のようでもあった。BMWでは「02シリーズ」の現代版は135iクーペとアナウンスしているけれど、開放的なキャビンを活発な4シリンダーで軽快に走らせるこっちのほうが、個人的には断然「マルニ」っぽい。スポーツドライビングの原点みたいなものが、この屋根開き4座にはある。

(文=森口将之/写真=峰昌宏)

森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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