メルセデス・ベンツG55 AMG ロング (4WD/5AT)【試乗記】
古い建物にモダンなオフィス 2008.01.11 試乗記 メルセデス・ベンツG55 AMG ロング (4WD/5AT)……1650.0万円
根強い人気で、「GLクラス」登場後も継続販売される、スクエアボディの「Gクラス」。25年以上のロングセラーである、このクルマの魅力を探る。
1979年生まれのロングセラー
“ゲレンデヴァーゲン”こと「メルセデス・ベンツGクラス」は、メルセデスとオーストリアのシュタイア・プフ(現マグナ・シュタイア)が7年の歳月をかけて共同開発し、1979年に発売した正統派オフロード・ヴィークル。以来、シュタイアの工場では19万台を超えるGクラスが生産され、いまだに根強い人気を誇っているのはご存じのとおり。
このGクラスには、4ドアのロングボディのほか、2ドアのショートホイールベース版やカブリオレが存在する。現在日本で販売されているのはロングのみで、「G500ロング」と「G55 AMGロング」のふたつがラインナップされている。
このうち今回試乗したのは後者のほうで、ノーズに収まるエンジンは、「SL55」などでおなじみのスーパーチャージャー付5.5リッターV8。SL55にくらべて少し控えめとはいえ、最高出力500ps/6100rpm、最大トルク71.4kgm/2750-4000rpmの性能は圧倒的だ。
変わらないスタイル
飾り気のない角張ったエクステリアがGクラスのアイデンティティ。時代に流されずそのスタイルを守り続ける一方、たとえばヘッドライトにはステアリング操作にあわせて進行方向を照らすアクティブライトシステム機構が付けられたり、ウインカー内蔵のドアミラーが採用されたりと、細かいところに最新のトレンドが盛り込まれているのは見逃せない。
それとは対照的に、インテリアは他のメルセデスから乗り換えても古さを感じないデザインでまとめられているうえ、贅沢にあしらわれたウォルナットパネルやレザーのトリムのおかげで高級感もたっぷり。パリの古い建物に一歩足を踏み入れると、そこはモダンなオフィスだった……そんな感覚である。
さっそく運転席に収まると、バスの運転席ほどに高いアイポイントが新鮮だ。モノコックボディを採用する最近のSUVとは違い、ラダーフレームのGクラスは着座位置が高く、おかげで眺めが良好。平面で構成されたボディとフェンダー上のウインカーのおかげでボディの見切りも極めて良好、全幅が1860mmと広いわりに扱いやすいのは助かる。
迫力のV8
AMG自慢のV8は低い回転から凄みのあるサウンドと溢れんばかりのトルクを湧き出させながら、グイグイと加速していく。さらにアクセルペダルを踏むと、V8特有のドロドロした音はボリュームを増し、2.5トンのボディは瞬く間に目的のスピードに到達してしまう。
これだけのパワーを受け止めるために、前後のリジッドアクスルサスペンションはスポーティに締め上げられる。そのため、低速では硬く、ときにはガツンとショックを伝えることもある。スピードが上がるにつれて、次第に硬さは気にならなくなり、高速ではフラットさも確保される。とはいえ、決して安楽な乗り物じゃないことはお忘れなく!
正直なところ、Gクラスのシャシーに対してAMG V8のパワーは有り余る印象で、走りっぷりも現代のパフォーマンスSUVには及ばない。しかし、Gクラスのスタイルに惚れ込んだ人にしてみれば、それも“味”というわけで、“ゲレンデ”の人気はまだまだ続きそうだ。
(文=生方聡/写真=峰昌宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
ホンダ・ヴェゼル【開発者インタビュー】 2025.11.24 「ホンダ・ヴェゼル」に「URBAN SPORT VEZEL(アーバン スポーツ ヴェゼル)」をグランドコンセプトとするスポーティーな新グレード「RS」が追加設定された。これまでのモデルとの違いはどこにあるのか。開発担当者に、RSならではのこだわりや改良のポイントを聞いた。
-
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(4WD/CVT)【試乗記】 2025.11.22 初代モデルの登場からわずか2年半でフルモデルチェンジした「三菱デリカミニ」。見た目はキープコンセプトながら、内外装の質感と快適性の向上、最新の安全装備やさまざまな路面に対応するドライブモードの採用がトピックだ。果たしてその仕上がりやいかに。
-
ポルシェ911カレラGTSカブリオレ(RR/8AT)【試乗記】 2025.11.19 最新の「ポルシェ911」=992.2型から「カレラGTSカブリオレ」をチョイス。話題のハイブリッドパワートレインにオープントップボディーを組み合わせたぜいたくな仕様だ。富士山麓のワインディングロードで乗った印象をリポートする。
-
アウディRS 3スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】 2025.11.18 ニュルブルクリンク北コースで従来モデルのラップタイムを7秒以上縮めた最新の「アウディRS 3スポーツバック」が上陸した。当時、クラス最速をうたったその記録は7分33秒123。郊外のワインディングロードで、高性能ジャーマンホットハッチの実力を確かめた。
-
スズキ・クロスビー ハイブリッドMZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.11.17 スズキがコンパクトクロスオーバー「クロスビー」をマイナーチェンジ。内外装がガラリと変わり、エンジンもトランスミッションも刷新されているのだから、その内容はフルモデルチェンジに近い。最上級グレード「ハイブリッドMZ」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末
2025.11.26エディターから一言「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。 -
NEW
「スバルBRZ STI SportタイプRA」登場 500万円~の価格妥当性を探る
2025.11.26デイリーコラム300台限定で販売される「スバルBRZ STI SportタイプRA」はベースモデルよりも120万円ほど高く、お値段は約500万円にも達する。もちろん数多くのチューニングの対価なわけだが、絶対的にはかなりの高額車へと進化している。果たしてその価格は妥当なのだろうか。 -
NEW
「AOG湘南里帰りミーティング2025」の会場より
2025.11.26画像・写真「AOG湘南里帰りミーティング2025」の様子を写真でリポート。「AUTECH」仕様の新型「日産エルグランド」のデザイン公開など、サプライズも用意されていたイベントの様子を、会場を飾ったNISMOやAUTECHのクルマとともに紹介する。 -
NEW
第93回:ジャパンモビリティショー大総括!(その2) ―激論! 2025年の最優秀コンセプトカーはどれだ?―
2025.11.26カーデザイン曼荼羅盛況に終わった「ジャパンモビリティショー2025」を、デザイン視点で大総括! 会場を彩った百花繚乱のショーカーのなかで、「カーデザイン曼荼羅」の面々が思うイチオシの一台はどれか? 各メンバーの“推しグルマ”が、机上で激突する! -
NEW
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】
2025.11.26試乗記「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。 -
ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)【レビュー】
2025.11.25試乗記インドの巨人、ロイヤルエンフィールドの中型ロードスポーツ「ハンター350」に試乗。足まわりにドライブトレイン、インターフェイス類……と、各所に改良が加えられた王道のネイキッドは、ベーシックでありながら上質さも感じさせる一台に進化を遂げていた。
































