ジープ・チェロキー(4WD/4AT)【海外試乗記】
ジープらしさ 2007.12.26 試乗記 ジープ・チェロキー(4WD/4AT)ダイムラーと別れをつげたクライスラー・グループからニューモデルが登場。4代目新型「ジープ・チェロキー」にモロッコで試乗した。
丸から角へ
「ジープ・チェロキー」というと、いまでも低く四角いフォルムの2代目を思い浮かべる人が多い。丸目のジープ顔とこんもり背の高いキャビンを持つ3代目、つまり現行型の人気は、それに比べるとイマイチだ。
これは日本に限った話ではないようで、18年間も生きた2代目とは対照的に、3代目チェロキーは6年で新型に切り替わることになった。「チェロキー」ならぬ「リバティ」を名乗る北米ではすでに販売が始まっており、それ以外の地域での発売を機に国際試乗会が行われた。日本では来年第2四半期に導入予定だという。
新型チェロキーは東京モーターショーにも展示されていたので、実車を見た人もいるだろう。簡単にいえば、丸から角に戻った。ヘッドランプも矩形に変わっており、シンプルな縦長テールランプは2代目を思わせる。
プラットフォームはひと足先に上陸した「ダッジ・ナイトロ」と共通で、スリーサイズも近い。でも7スロットグリルの顔や台形フェンダー、天地に長いグラスエリアなどのディテールからなる姿は、まぎれもないジープだ。
![]() |
注目は電動キャンバストップ
室内空間はナイトロと同等。つまりおとな4人にとって十分以上の広さだ。インパネ下のカバーがヒザにせまり、後席の座面が短く傾きがないといった気になる点もそのままだった。クライスラー・グループ内でジープはダッジより格上なので、質感はこちらのほうが上。
ラゲッジスペースはスライド可能なフロアがなくなった代わりに、テールゲートにガラスハッチがついた。
![]() |
装備で目につくのはルーフのほぼ全面が開く巨大な電動キャンバストップ。オープンカーとしてスタートしたジープの伝統を再現したのかもしれない。これだけ大きいと開放感はサンルーフの比ではないし、開けたときの風切り音も思いのほか少なく、使えるアイテムだった。
オフロードで本領発揮
試乗の舞台になったのは北アフリカのモロッコ。まずは荒れ気味のアスファルトを走り始める。3.7リッターV6エンジンと4段ATというパワートレインはナイトロと同じ。チェロキーの方がやや重いが、その差は50kgにも満たないので、加速感は変わらない。トルキーなエンジンのおかげで、ギアが4段でも不満はなく、高速道路のない今回のステージでは必要十分な加速をもたらしてくれた。
乗り心地は、モロッコの舗装路ではゴツゴツ感が気になった。ところがその後ダートに入ると一変。硬めではあるがストローク感のあるサスペンションが本来の仕事を始め、巨大キャンバストップを持つとは思えない剛性感たっぷりのボディがしっかり受け止める。アスファルトよりむしろ快適に思えるぐらいだ。
岩場を通過してもゴンッという音が響くだけで、ダイレクトなショックはこない。舗装路ではありえない大きな起伏さえ、しっとり吸収してくれるのだ。
足だけでなく4WDシステムもナイトロよりオフ向き。2WDのほか、電子制御カップリングで前後トルク配分を自在に調節する4WDオートと、直結4WDローレンジの3モードを持つセレクトラックIIを使う。4WDオートは、リアに多めの駆動力が配分される設定で、ダートではFRのようにダイナミックなハンドリングが楽しめる。圧巻だったのは4WDローレンジで、歩くのも困難なフカフカの砂漠をノーマルタイヤのままで走りきった。
新型では他のSUVでおなじみのヒルディセントコントロールも採用したが、システムをオンにしたままアクセルやブレーキを踏んで加減速しても、ペダルを離せばまた作動を開始してくれる独自性を備える。電子制御を導入しても、自分の手足で悪路を走破する楽しみを残している。そんなところにジープらしさを感じた。
(文=森口将之/写真=クライスラー日本)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。