フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントTSIコンフォートライン(FF/2ペダル6MT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントTSIコンフォートライン(FF/2ペダル6MT) 2007.12.14 試乗記 ……310万7000円総合評価……★★★★
根強い人気のゴルフワゴンが、3代目で「ゴルフヴァリアント」となって生まれ変わった。1.4リッター直噴ツインチャージャー搭載モデルで走りと使い勝手を試す。
TSI+DSGにワゴンボディでこの価格
「ゴルフトゥーラン」、そして「ゴルフプラス」の登場で、一時は開発計画から外されたと言われる「ゴルフヴァリアント」。遅ればせながらデビューに漕ぎ着けたのには、日本市場からの要望の多さも大きく影響していたと言われる。実際、発売開始から2週間で受注は1500台を超えたというから、やはり待ち望んでいた人は沢山いたのだろう。
これだけの人気には、価格という大きな要因があることも忘れてはならない。何しろTSIコンフォートラインの296.0万円も、2.0TSIスポーツラインの335.0万円も、同じエンジンを積むハッチバックの「GT TSI」、そして「GTI」より安いという、きわめて戦略的な価格設定なのだから。
先代に較べて全長で165mmも拡大されたボディサイズやピラーが大きく寝かされたフォルム、テールランプなど各部の凝ったデザインなど、先代までの質実剛健なゴルフワゴンのイメージからすると随分変わってしまったという感はある。低価格を実現できた要因のひとつであろう率直に言って安っぽいリアシート周辺の処理や、使い勝手をそれほど突き詰めていないと感じさせる荷室も、先代や先々代から乗り換えようというユーザーにとっては引っ掛かるところかもしれない。
しかし、TSI+DSGに統一されたパワートレインや、クローム処理されたグリルやモール類等々がもたらす外観の見映えの良さは、十分それを補う魅力であることも確か。旧型ユーザーが買い替える理由としては申し分ないし、約半数を占めているという日本車からの乗り換え組にも、大いに響いたはずだ。実際、細々と文句を言いたいところはあるものの、では代わりになるクルマはあるのかと問われたら言葉に窮するのが本当のところ。しかも、この価格だ。総じて言えばバリュー・フォー・マネー度のきわめて高い1台だと結論づけるしかなさそうである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2007年9月3日、7年ぶりのモデルチェンジで3代目となったゴルフのワゴンバージョン。2007年3月のジュネーブショーがデビュー。上位モデルの「パサート」にあわせて、名称を「ワゴン」から「ヴァリアント」に変更した。
ベースは現行の5代目「ゴルフ」。スリーサイズは、全長×全幅×全高=4565mm×1785mm×1530mmで、ホイールベースは2575mm。
ラインナップは、1.4リッターTSI(170ps/24.5kgm)を積む「TSIコンフォートライン」と2リッターTSI(200ps/28.6kgm)の「2.0 TSIスポーツライン」の2種類。 組み合わされるトランスミッションはともに6段のDSG(2ペダル式MT)のみ。パドルシフトは、2.0TSIスポーツラインだけに備わる。駆動方式はどちらもFF。
機能面では、前後2分割式の「電動パノラマスライディングルーフ」がオプションで採用された。
(グレード概要)
「TSIコンフォートライン」は装備充実。前席エアバッグなど8エアバッグや2ゾーンフルオートエアコン、チルト/テレスコピック付き電動パワーステアリング、ESP(横滑り防止装置)、フォースリミッター付シートベルトテンションナーなどを標準装備。ヘッドランプは4灯ハロゲン式となり、タイヤは205/55R16を装着する。
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【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
デザインも装備も基本的にハッチバックと変わらない。ステアリングのスポーク部分にアルミ製のインレイが入っているのはGT TSI辺りと共通の雰囲気とも言えるし、ゴルフというより「ジェッタ・ヴァリアント」と呼びたくなる外装と合わせたものと取ることもできる。
そのステアリングには、スポーツラインではDSGのシフトパドルが装備されるが、このコンフォートラインにはない。実は1.4TSIは、2.0TSIよりも500rpm最高許容回転数が高く、積極的に回して楽しめるエンジンだけに、これはちょっと残念なところである。
ヴァリアントならではの装備としては、オプション設定となるパノラマスライディングルーフが挙げられる。長さ1360mm、幅870mmという巨大なガラスエリアはクローズ状態でも晴れた日には室内にさんさんと陽光を降り注ぎ、なかなか心地良い。この手の装備では珍しく、運転席でもちゃんと恩恵を受けられるのは嬉しいポイント。価格の面でも、これなら付けてもいいかなと思わせる。
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(前席)……★★★
前席の居住性に関しては、ハッチバックと何ら変わるところはない。広さは十分で、特に横方向の余裕はセグメント随一だ。それは逆に言えば、相変わらずドライビングポジションはあまり良いとは言えないということでもある。ゴルフプラスやゴルフトゥーランと共用されるシャシーは、そのせいか低めの座面に対してステアリングが上向き気味だし、フロントウインドウ下端に土手のあるインストゥルメントパネルのおかげで着座位置をかなり高めにしないとフードが視界に入ってこないなど、かつてのような四隅に手が届きそうな感覚をもたらしてはくれない。
シート自体は、スポーツラインよりコンフォートラインの方が快適度が高い。サイドサポートがそれほど盛り上がっていないので日常の身体の動きが規制されないし、それでいてサポート性もそれなりに確保されている。
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(後席)……★★
ハッチバックと違ってダブルフォールディングが可能で、その際にフラットな空間を生み出せるように座面高を上げていることもあって、広さや着座姿勢に関しては文句はない。
しかし、その座面が薄く平板なおかげで座り心地は今ひとつ。しかも引き起こすと裏側のスポンジまで見えてしまうのは興ざめだ。今どき国産大衆車でも、もう少し気が利いている。座面を吊っているのもか細い鉄の棒1本。骨組み自体が頑丈で、しかも立てた座面をガッチリとしたステーで固定するゴルフトゥーランに較べると、どうにも貧相に見える。
ハッチバックを下まわる車両価格はこうして実現されているわけだが、ここ2世代で培ってきたゴルフに期待する製品クオリティには、ハッキリ言って届いていない。新規ユーザーはともかく、ゴルフを乗り継いできた人を、これで満足させることができるのか気がかりだ。
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(荷室)……★★★
ゴルフはハッチバックでも通常時350リッター、最大1305リッターと大きなラゲッジスペースを誇るが、このヴァリアントは通常時で505リッター、後席を畳んだ状態では1495リッターを確保。この容量に不満を抱く人はそうは居ないだろう。ちなみに先代との比較では、それぞれ45リッター、25リッターのプラスに留まる。
全長が165mmも伸びていることを考えると物足りなくも思うが、これはDピラーを寝かせたデザインの弊害だろう。フロアは後席を倒した時にフルフラットになるよう高さを嵩上げした二重構造とされているが、深さ数cm程でしかない床下空間はあまり有用とは言えない。先代のバリアブルカーゴエリアも決して広くはなかったが、洗車道具くらいは置いておけたのに。また、後席を倒した際のトノカバーの置き場も用意してほしかった。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
スーパーチャージャーの力で低速域から力強いトルクを発生するツインチャージャーTSIユニットは、ハッチバックより大きく重くなったボディをモノともせず、軽快で伸びやかな加速を楽しませてくれる。今回はもっとも重い状態でも2名乗車+撮影機材のみでフル積載状態は試せなかったが、おそらく大きな不満をもたらすことは無いはずだ。
むしろ今回のような2名乗車くらいまでなら、その走りっぷりは十分、スポーティという言葉で括れるほど。過給によって絶対的なパワーとトルクを得ているだけでなく、小排気量の美点で吹け上がりが軽く、トップエンドまで実によく伸びてくれるので、感覚的にもとても楽しめる。
DSGは低速域でギクシャクするとまでは言わないまでも、まだ多少スムーズさを欠くこともある。しかし、それも敢えて言えばという話で、燃費を含めたパフォーマンスを考えれば十分に納得できる仕上がりと言える。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
フットワークはとにかくスタビリティありきの安定志向。要するにゴルフらしい味付けだ。ワインディングロードで振り回して云々という面白みは少ないが、真っ直ぐ走らせているだけでも感じられるどっしりとした安心感、頼れる雰囲気は、それだけで十分に個性であり美点である。
もう少しだけ快適性が高ければ、特にサスペンションのしなやかなストローク感を味わわせてくれれば……と思わせるのも、やはりゴルフ。とは言え、車重が増えているせいか、リアサスペンションの動きが落ち着いて、若干しっとり感が出ている気はする。後席に居ると、シートの出来でそれも相殺されてしまうのだけれど。
しかし全体的に見れば、特にヴァリアントだからと言って殊更にネガティヴな要素は増えていないと言っていいだろう。強いて言えば、室内騒音のレベルがやや大きくなっている点が挙げられるが、それもうるさくて困るというほどではなく許容範囲である。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2007年8月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:4988km
タイヤ:(前)205/55R16(後)同じ(いずれも コンチネンタル SportContact2)
オプション装備:電動パノラマスライディングルーフ(14万7000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(6):山岳路(3)
テスト距離:273.4km
使用燃料:30リッター
参考燃費:9.1km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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