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【スペック】全長×全幅×全高=4899×1860×1464mm/ホイールベース=2968mm/車重=1850kg/駆動方式=FR/3リッター直6DOHC24バルブターボ(306ps/5800rpm、40.8kgm/1200-5000rpm)+モーター(55ps、21.4kgm)(欧州仕様車)

BMWアクティブハイブリッド5(FR/8AT)【海外試乗記】

魅力はスムーズさと新しさ 2012.02.14 試乗記 島下 泰久 BMWアクティブハイブリッド5(FR/8AT)

2012年の初夏に「BMW5シリーズ」のラインナップに追加予定の「アクティブハイブリッド5」。BMW初の、6気筒エンジンを採用したハイブリッドセダンは、どんな走りを見せるのか? ポルトガルから第一印象をリポートする。
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アクティブハイブリッドの本命

BMWはこれまで、“アクティブハイブリッド”と名付けたハイブリッドモデルをまずは「7シリーズ」、続いて「X6」と大型車種から展開してきた。これらは別々のシステムを用いているが、いずれもエンジンはV型8気筒で、価格にしろ燃費にしろ、普及や徹底的な環境性能を目指したものというよりは、まずは“露払い”といった存在感だったと言えるだろう。

その意味では、いよいよ本当の普及段階へと入る重要なモデルと言えそうなのが、2011年の東京モーターショーでワールドプレミアされた「アクティブハイブリッド5」である。そう、あらためて説明するまでもなく「5シリーズ」のハイブリッドモデルだ。

注目のパワートレインは、「535i」に搭載されている最高出力306ps、最大トルク40.8kgmを発生する3リッター直列6気筒直噴ツインスクロールターボエンジンと、最高出力55ps、最大トルク21.4kgmの電気モーターを組み合わせたもので、システム最高出力は340ps、最大トルクは45.9kgmに達する。これによって、0-100km/h加速は5.9秒と、車重が150kgも増えているだけに535iとほぼ同等にとどまるものの、燃費はEU複合モードで6.4リッター/100km(約15.6km/リッター)と、535iの8.1リッター/100km(約12.3km/リッター)から2割程度の向上を果たしている。

 
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ハイブリッドシステムは、エンジンとトランスミッションの間に55psのモーターを挟み込んだもの。リチウムイオンバッテリーは、トランクルーム前方に搭載され、重量配分の最適化が図られている。
ハイブリッドシステムは、エンジンとトランスミッションの間に55psのモーターを挟み込んだもの。リチウムイオンバッテリーは、トランクルーム前方に搭載され、重量配分の最適化が図られている。 拡大
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すばらしく滑らか

発進は基本的にモーターのみで行われる。ガンッと背中を蹴飛ばされるような……というほどではないが、しかし十分に力強く、そしてすばらしく滑らかな加速感は、この瞬間だけでガソリン車とは違うものに乗っているということを強く意識させる。条件にもよるが、そのままモーターのみで60km/hまで加速するか、あるいは最大で4kmをモーターのみで走行することができる。

必要になれば当然、エンジンが自動的に始動するが、この時の動作のスムーズさには感心させられた。ショックはほぼ皆無。気付けばエンジンがかかっており、また停止しているという印象。エンジンとギアボックスの間に1基のモーターを挟むこのかたちのハイブリッドシステムも増えてきたが、各社競って制御が洗練されてきているという印象である。

日常走行域では、良くも悪くもハイブリッドであることを強く意識させられることはなく自然な、それこそ535iと変わらない感覚で運転できる。全域どこからでも豊かなトルクを取り出せる特性は、実に走らせやすく、「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」は燃費最優先となる新設定の「ECO PRO」モード固定でも、ほとんど不足を感じることはない。その上、必要な時にはアクセルペダルをさらに深く踏み込めば、モーターのアシストが加わった力強い加速を得ることができる。この“ツインパワーターボ”ユニットは、高回転域で大きめのバイブレーションが出るのがBMWのストレート6としては物足りないところなのだが、そこまでのフィーリングは上々と言える。

速度が乗ったところでアクセルペダルを戻していくと、コースティングモードとなる。つまりエンジンが停止して惰性走行に入るのだ。コースティングは通常モードでは80km/hまでだが、「ECO PRO」モードでは実に160km/hまで行われる。高速道路を走らせていても巡航状態になるとすぐにエンジンが停止。この時の路面の上を滑るような走行感覚は独特で、あるいは室内が静寂に包まれるのとあわせて、この瞬間が一番ハイブリッドらしさを強く感じるところかもしれない。

発進時はモーターで駆動する。バッテリーに十分な電気が蓄えられた状態であれば、最大4km(平均車速35km/hの場合)までモーターのみで走行が可能。
発進時はモーターで駆動する。バッテリーに十分な電気が蓄えられた状態であれば、最大4km(平均車速35km/hの場合)までモーターのみで走行が可能。 拡大
 
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エンジンとモーターの間には、湿式多板の分離クラッチが置かれ、エンジンからの駆動力を制御する。
エンジンとモーターの間には、湿式多板の分離クラッチが置かれ、エンジンからの駆動力を制御する。 拡大

2012年の初夏に上陸

ただし、正確な計測を行ったわけではないので確信めいたことは言えないが、今回走行中に燃費計に表示されていた数字は、それほど印象的なものではなかった。モーター走行やアイドリングストップが増える都市部の方がハイブリッドの特性が活(い)きるのだろう。試乗の舞台となった郊外の交通環境だとうまみは、やはり少なそうである。

もちろん車重が大幅に増えているのも効いているのだろう。これは乗り心地にも影響を及ぼしているし、さらに言えばリチウムイオンバッテリーに侵食されて荷室が狭いのもマイナス。これらの価値を相殺して、なおどこに魅力を感じるかで、アクティブハイブリッド5の評価は決まるのかもしれない。

ハイブリッドであることに過剰な期待を抱いていると裏切られるかもしれないが、エンジンのフィーリングや正確なフットワークといったBMWらしさに、モーター走行をはじめとするいくつもの新しい魅力が加わり、しかも何より“旬”モノなのだ。特に5シリーズを購入候補としている人にとっては、大いに引かれるところだろう。

問題は価格である。現行ラインナップでは535iが840万円、550iが1040万円となるが、このアクティブハイブリッド5はどうやらその中間、大台をわずかに割り込む辺りに落ち着きそうな気配だ。日本上陸は2012年の第2四半期中ということである。

(文=島下泰久/写真=BMWジャパン)

 
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トランクルーム容量は、標準「5シリーズ」より145リッター少ない、375リッターとなる。
トランクルーム容量は、標準「5シリーズ」より145リッター少ない、375リッターとなる。 拡大
軽量化のため「アクティブハイブリッド5」では、エンジンフードやフロントフェンダーのほか、ドアパネルもアルミ製となる。
軽量化のため「アクティブハイブリッド5」では、エンジンフードやフロントフェンダーのほか、ドアパネルもアルミ製となる。 拡大
島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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