第13回:今度は本気!? アバルト・ブランド復活大作戦!「アバルトビデオ」も大興奮
2007.10.20 マッキナ あらモーダ!第13回:今度は本気!? アバルト・ブランド復活大作戦!「アバルトビデオ」も大興奮
アバルトディーラー32店舗一気にオープン!
フィアットによるアバルト・ブランド復活作戦が、本国イタリアでいよいよ本格的に始まった。
2007年9月19日、お膝元トリノのマルケ通りには、「オフィチーネ・アバルト」がオープンした。750平方メートルにわたる展示スペースやショップのほか、170平方メートルの工房を備えるフラッグシップ・ショールームである。ビジターは広いガラス越しに、工房内で行なわれているチューニングの様子を眺められる。なかなか憎いアイディアだ。
それに続いて先週末の10月13日、14日には、イタリア全国32店に新設されたアバルト・ディーラーが一斉に開店した。
呼び物は、新生アバルト第一弾である「グランデプント・アバルト1.4ターボ155HP」である。
ノーマル仕様の「グランデプント」とは別物のフロントバンパーをもち、サイドにはトラディショナルなABARTHストライプが走る。赤いミラーも目を惹く。
インテリアには専用のバケットシートが奢られ、レザートリムやカーボン風ダッシュボードパネルがスポーティムードの演出に一役買っている。
最高速度208km/h、0-100km/h加速8.2秒というこのモデルの、イタリアにおける販売価格は、1万7800ユーロ(約295万円)である。この国においては、「MINI One」とほぼ同じ価格だ。
日本もお得意様リストに?
今回のアバルト再生に、フィアットグループは並々ならぬ気合を入れている。事実、計画は従来の同社では信じられないスピードで進行された。
アバルト復活が公式にアナウンスされたのは、今年2月のこと。3月のジュネーブショーでは、フィアットとはまったく別の独自スタンドを設営してプロトタイプを展示した。
6月には、フィアットの100%子会社として「アバルト&C」が設立され、フィアットのルカ・デメオCEO(当時)が直々で社長に就任した。同時に市販より一足先に、各地のラリーに参戦を開始した。
イタリアでは今回オープンした32店に加え、年内に3店開店する。さらに公認チューニングショップを40拠点、認定サービス工場を100拠点整備する計画だ。
グループ全体のマーケティング担当副社長に昇格した後も、アバルトの社長を兼任することになったデメオによれば、「ヨーロッパで100から120店の専売店を設ける」という。その手始めは、年内のスイスらしい。
日本にも拠点が設けられ、それは欧州以外では最初の輸出国となるようだ。 7月のフィアット500発表の際、デメオは筆者の質問に対し、「日本は(500の)スポーツ仕様のイメージが、とりわけ浸透している国」と語った。新生アパルトにとって、すでに日本はお得意様のひとつと数えられているようだ。
成功するか、前代未聞のプレミアム
5〜6年前フィアットが経営危機にあったとき、アバルトは、フィアットのスポーツ系アクセサリーラインか一時的な特別仕様車に過ぎなかった。まさにブランドという、宝の持ち腐れ状態だったといっていい。
当時からすると、今回のアバルト復活は、当初からなんとも勢いのいい話である。
ただしフィアットは、今後のアバルト店展開については、あくまでも慎重に行なっていくともアナウンスしている。イタリアの50代以上のエンスージアストの脳裏には、レース/ラリーシーンにおけるアバルトの記憶がある。しかしそれ以下の世代にとって、アバルトの名前は父親からわずかに聞いたくらいだ。
クルマに関心のない若者には最早ほとんど馴染みがないのが実情である。チューニングも、けっして広く普及したホビーとはいえない。したがってフィアットの慎重さは、適切なものとボクは思っている。
参考までに、ボクの住むシエナはれっきとした県庁所在地である。だが現在のところアバルト店はなく、最寄の店は60km離れたフィレンツェまで行かなければならない。
他の欧州メーカーにも類をみない、小型かつレースマインド溢れる、古くて新しいプレミアムが成功するか興味あるところだ。
待てない人のためには、コレ
日本上陸まで待てない人のために、アバルトのオフィシャルサイトをお知らせしよう。
ラリーシーンやデザイナー談話など、動画コンテンツが数多い。ボクは勝手に「アバルトビデオ」と名づけている。
ちなみに、“Abarth”を“アダルト”に似た発音をしてもイタリアでは絶対通じない。最初の部分「ア」に強いアクセントがつく。
などと偉そうに言うボクであるが、以前イタリア人の家で小さなサソリを発見したとき、慌てた挙句とっさに「アバルト!アバルト!」と叫んで怪訝な顔をされた。本当はスコルピオーネ。ワニは英語で「ラコステ」だと信じている人を笑えない。
(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=FIAT GROUP AUTOMOBILES)
拡大 |

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第938回:さよなら「フォード・フォーカス」 27年の光と影 2025.11.27 「フォード・フォーカス」がついに生産終了! ベーシックカーのお手本ともいえる存在で、欧米のみならず世界中で親しまれたグローバルカーは、なぜ歴史の幕を下ろすこととなったのか。欧州在住の大矢アキオが、自動車を取り巻く潮流の変化を語る。
-
第937回:フィレンツェでいきなり中国ショー? 堂々6ブランドの販売店出現 2025.11.20 イタリア・フィレンツェに中国系自動車ブランドの巨大総合ショールームが出現! かの地で勢いを増す中国車の実情と、今日の地位を築くのに至った経緯、そして日本メーカーの生き残りのヒントを、現地在住のコラムニスト、大矢アキオが語る。
-
第936回:イタリアらしさの復興なるか アルファ・ロメオとマセラティの挑戦 2025.11.13 アルファ・ロメオとマセラティが、オーダーメイドサービスやヘリテージ事業などで協業すると発表! 説明会で語られた新プロジェクトの狙いとは? 歴史ある2ブランドが意図する“イタリアらしさの復興”を、イタリア在住の大矢アキオが解説する。
-
第935回:晴れ舞台の片隅で……古典車ショー「アウトモト・デポカ」で見た絶版車愛 2025.11.6 イタリア屈指のヒストリックカーショー「アウトモト・デポカ」を、現地在住のコラムニスト、大矢アキオが取材! イタリアの自動車史、モータースポーツ史を飾る出展車両の数々と、カークラブの運営を支えるメンバーの熱い情熱に触れた。
-
第934回:憲兵パトカー・コレクターの熱き思い 2025.10.30 他の警察組織とともにイタリアの治安を守るカラビニエリ(憲兵)。彼らの活動を支えているのがパトロールカーだ。イタリア在住の大矢アキオが、式典を彩る歴代のパトカーを通し、かの地における警察車両の歴史と、それを保管するコレクターの思いに触れた。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。






























