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第9回:イタリア最新ボディカラー事情−−「イタリアンレッド×、ツヤ消し○」(大矢アキオ)

2007.09.22 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第9回:イタリア最新ボディカラー事情−−「イタリアンレッド×、ツヤ消し○」

7割が「銀」!

「イタリアンレッド」のクルマは、実は本場イタリアで不人気色である。
イタリアでは、中古車市場でもレッドが珍重されるのはフェラーリくらいだ。アルファ・ロメオでも、多くの場合は敬遠される。

かわりに人気なのは、シルバーメタリックやブラックである。事実、乗用車外板色の比率では、シルバーが小型車で58%、中型車ではなんと70%を占める。いっぽうレッドは小型車で3%、それ以上のクラスになると、データの数字に上らないくらい少なくなってしまう。ちなみに「ヤリス(日本名:ヴィッツ)」も68%がシルバーである(いずれのデータも、2006年トヨタ・モーター・イタリア資料より)。

筆者の観測によれば、この潮流には契機があった。1997年に政府が新車買い替え奨励金制度を施行したときだ。おかげで当時この国ではちょっとした新車ブームが起きた。人々はイタリア車を捨て、ドイツ車を買い求めた。またたとえイタリア車でも、高級車を連想させるカラーのクルマを購入した。
そのときクルマのシルバー、ブラック化が一気に加速した。だから今日イタリアで、赤いブレラや159を見かけたら、十中八九ドイツやスイスといった外国ナンバーであるといってよい。

トリノのスーパー駐車場にて。シルバーの多いことよ。
トリノのスーパー駐車場にて。シルバーの多いことよ。 拡大
「ランチア・イプシロンMOMO DESIGN」(2005年)
「ランチア・イプシロンMOMO DESIGN」(2005年) 拡大
MOMO DESIGNのツヤ消しヘルメット。
MOMO DESIGNのツヤ消しヘルメット。 拡大

新型500にも?

いっぽう最近、イタリアでジワジワとブームになりつつあるカラーがある。
マット、つまりツヤ消しだ。クルマ=光沢あるボディという既成概念が染み付いている頭には、それなりにインパクトがある。

イタリアの量産市販車で最初にツヤ消し塗装を採用したのはランチアである。2005年11月に発表した「イプシロン」の特別仕様車「MOMO DESIGN」で、ツートーンカラー車のルーフに黒のツヤ消しを使ったのだ。コラボレーション相手であるMOMO DESIGNのヘルメットに、同様の塗装が施されていたのにヒントを得たものである。

しかし、実際にイタリア市場で人々の関心を集めたのは、翌2006年4月に登場したスマートの新色バージョン、その名も「スマート・マット」であろう。ランチアは今でも「小さな高級車」のイメージがあって、マットカラーを積極的に選ぶユーザーは少なかった。しかし、スマートを買うユーザーは比較的遊び心があり、こうした冒険的試みがすんなりと受け入れられたものと思われる。

新型フィアット500にも、もしかしたらツヤ消しカラーが追加されるかもしれない。
写真は、2007年7月5日、トリノの新型500記者発表会場の片隅で筆者が発見したものだ。星飛雄馬を見守る明子姉ちゃんのごとく、ひっそりと佇んでいた。参加者の反応を探るためだったのか。

この“全身ツヤ消し”500、正直なところボク個人は、“半身ツヤ消し”のイプシロンやスマートと違い、一瞬「これ覆面車?」と勘違いしてしまった。このあたりに、ツヤ消しボディの限界があるのかもしれない。
しかし、それだけ衝撃的ということで、仕向け地やプロモーションによっては、話題を醸し出せるだろう。

スマートのツヤ消しブラック仕様。
スマートのツヤ消しブラック仕様。 拡大
こちらはオレンジのツヤ消し。
こちらはオレンジのツヤ消し。 拡大
新型500発表会に佇んでいた、ツヤ消しバージョン。
新型500発表会に佇んでいた、ツヤ消しバージョン。 拡大

「なんちゃって」もアリ

関係者によると、ツヤ消しボディの最良の手入れ方法は、「濡れたスポンジで磨くこと」だという。スエードの靴を手入れするような、それなりの気遣いが必要というわけか。

面白いのは、前述のクルマと同時進行で、イタリアに「ツヤ消し系」がにわかに増えてきたことだ。すでにドゥカティやピアッジョといったバイクメーカーも、ラインナップにツヤ消しブラックを用意している。バイク用品店には、MOMO DESIGN以外でも、ツヤ消しカラーのヘルメットが多数並ぶようになってきた。チューニング系ファンの間では、自分のクルマをツヤ消しに塗り替える若者も増えてきている。

先日、近所を歩いていたときのことである。「あッまたもや、ツヤ消しボディ!」と思ってよく見ると、退色した赤の「インノチェンティ・ミニ」だった。
イタリアの強い陽射しのもと、特に赤いボディカラーは輝きを失う。新車から20年以上は経過していると思われるそのインノチェンティは、すでに赤を通り越してピンクに近くなっていた。

以来ボクはそのクルマを「なんちゃってツヤ消し」と呼んであげることにした。
いや待てよ、ツヤ消し塗装がジーンズ界におけるストーンウォッシュだとすると、自然に退色したクルマは、本物のヴィンティッジ・ジーンズである。

ここで筆者の大予言。近い将来、ホンモノの“退色ボディ”がカッコよくなるという、自動車史上初の大革命が起きる!
……当たり外れはともかく、ツヤ消しの流行はそんな夢をも見させてくれる。

(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=大矢アキオ、FIAT)


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「なんちゃってツヤ消し」の古いインノチェンティ。
「なんちゃってツヤ消し」の古いインノチェンティ。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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