BMW 116i(FR/6AT)【ブリーフテスト】
BMW 116i(FR/6AT) 2007.09.04 試乗記 ……295.0万円総合評価……★★★★
BMWの現行ラインナップにおいて、エントリーモデルのなかのエントリーモデルといえる「116i」。そこにあるBMWらしさとは? 笹目二朗が試乗した。
軽快さが欲しい
BMWのエントリーモデル「BMW116i」が初めて接する人に与える印象は、興味深いところ。FRとしての特性は、功罪相半ばするからだ。
まったくアメリカンな造りの「BMW Z4」に比べ、1シリーズはBMW本来のスポーティなレイアウトをとる。たとえばエンジンルームを見ると、Z4のエンジン後方は隙間がガラガラに空いていて、運転席の足元も余裕が大きい。いっぽう116iは、エンジンがスカットルに飲み込まれるほど後方にマウントされ、ギアボックスのための張り出しが窮屈に見える。しかし、膝や脚で体を支えられれば、コーナリング中の強烈な横Gに耐えられるし、クルマとの一体感も得られる。もちろん重量物を真ん中に集中させることは、重心高を下げることと同じくらい重要なことだ。
ホイールベースを長く採ると、乗り心地や安定性に貢献することはセオリー通りであるし、前後の重量配分にも有利である。しかし、敏捷に旋回させるという意味ではマイナスだ。その昔、スポーツカーなどでは、ことさら短くとる「ショートホイールベース型」がもてはやされた時代さえある。
116iのロングホイールベースは、重量の重さとともに運動性能面ではネガティブに作用している。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2004年9月21日に発売が開始された「1シリーズ」は、BMWのエントリーモデルに位置付けられるハッチバック。駆動方式はBMWこだわりのFR(フロントエンジン・リアドライブ)とし、前:後=50:50に近い重量配分を実現した。現在のグレードは3種。1.6リッター直4を積む「116i」(115ps/6000rpm、15.3kgm/4300rpm)、バルブトロニックつき2リッター直4エンジンの「120i」(156ps/6400rpm、20.4kgm/3600rpm)そして、3リッター直6エンジンを搭載する「130i M-Sport」(265ps/6600rpm、32.1kgm/2750rpm)である。
(グレード概要)
BMWのラインナップにおいて、唯一、300万円以下の定価に抑えられている「116i」。ひとつ上のグレードである「120i」と比べると、内部トレー付きのフロントセンターアームレストやスポーツレザーステアリングホイール、自動防眩ルームミラーなどがオプション扱いとなる。
1.6リッターエンジンはバルブトロニックこそ導入されないものの、吸排気両方のバルブタイミングをコントロールするダブルVANOSは搭載。BMWのアイデンティティたる前:後=50:50の重量配分や、近年BMWが積極的に導入しているランフラットタイヤが実装されている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
前方の眺めは他の1シリーズと同じで、メーターそのものはやや小振りながら読みやすく、タコメーターを右に見るのを好む向きは、気にいるだろう。BMWというブランドに期待して買う人に後悔はさせない。
ハンドル径はやや大きめで、握った感触も骨太。廉価版感覚はない。ウィンカーはワンタッチで自動的に3回点滅する世話好きタイプ。好き嫌い分かれる。
(前席)……★★★★
BMWはシート座面の前端部を引き出せる例も多い。これは省略されているけれども特に不都合はない。表皮の布地はやや安手ではあるが座り心地は良好。腰がすっぽり納まる感覚もBMW流で、サイドの盛り上がりは横方向のサポートに寄与する。座面の後傾斜角も十分。ギアボックスをクリアする部分の室内への張出は大きめだが、エンジンが後方にマウントされている証拠。
(後席)……★★★
FRゆえセンタートンネルの膨らみはFF車に比べて不利だが、中央に座る3人目を考えないで済む人には無関係。ボディ剛性を高めていると思えば納得できる。ヘッドクリアランスも頭髪が触れるほど狭くはない。広々感はないもののロングホイールベースの恩恵で腰部の圧迫感は少ない。ただし足元の余裕も少なめ。折り畳めるシートにしてはクッション厚い。
(荷室)……★★★
FF車のトランクと比較してもそれほど負けていない。ランフラットタイヤを装着しているのでスペアタイヤはナシ。リアシートを畳んで荷室を広げることも可能。ハッチバック形式なのでトレイの上にも空間はある。ゲートそのものはバンパーの高さから開き、フロアは更に低いので、小物が中から転げ落ちる心配はなさそう。内張りトリムにより仕上げは上々。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
全長4240mmのコンパクトサイズには1.6リッターで十分、回して楽しむ余地あり……と期待したが、1370kgの車両重量はやや重すぎ。しかし滑らかに回るし6段ATのステップアップ比は適当。どちらかと言えば高速域の方が元気だ。シフトはアップ時にはレスポンス良いがダウン時は繋がりが緩慢。やはり本来はクラッチ付きのMTで乗るべきクルマ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
舗装の新しい平滑な路面ではフラットながら、凸凹があるとボディの上下動は大きめ。バネ径やダンパー減衰力は硬めの設定ながら、ブッシュ類の選定は巧妙で、目地段差ハーシュネスなどG的なレベル(入力の強さ)は許容範囲。ランフラットタイヤにしては乗り心地まずまずだ。ただし、駆動系やタイヤなど、下まわりからの騒音は大きい。価格を考えると期待値はもうすこし上にある。
全長に対して長めのホイールベースは安定性に貢献。キビキビ動かすために、1シリーズはステアリングのギア比を詰めて対応している。落ちついた性格ながら、1.6リッターに期待する軽快感は今ひとつ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2007年8月6日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:3649km
タイヤ:(前)195/55R16(後)同じ(いずれも、ピレリeufori@(ユーフォリア))
オプション装備:--
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:571.4km
使用燃料:62.5リッター
参考燃費:9.14km/リッター

笹目 二朗
-
ホンダN-ONE e:G(FWD)【試乗記】 2025.12.17 「ホンダN-ONE e:」の一充電走行距離(WLTCモード)は295kmとされている。額面どおりに走れないのは当然ながら、電気自動車にとっては過酷な時期である真冬のロングドライブではどれくらいが目安になるのだろうか。「e:G」グレードの仕上がりとともにリポートする。
-
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】 2025.12.16 これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】 2025.12.15 フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。
-
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.13 「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
NEW
フォルクスワーゲンTロックTDI 4MOTION Rライン ブラックスタイル(4WD/7AT)【試乗記】
2025.12.20試乗記冬の九州・宮崎で、アップデートされた最新世代のディーゼルターボエンジン「2.0 TDI」を積む「フォルクスワーゲンTロック」に試乗。混雑する市街地やアップダウンの激しい海沿いのワインディングロード、そして高速道路まで、南国の地を巡った走りの印象と燃費を報告する。 -
NEW
失敗できない新型「CX-5」 勝手な心配を全部聞き尽くす!(後編)
2025.12.20小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージによる新型「マツダCX-5」の開発主査へのインタビュー(後編)。賛否両論のタッチ操作主体のインストゥルメントパネルや気になる価格、「CX-60」との微妙な関係について鋭く切り込みました。 -
NEW
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【海外試乗記】
2025.12.19試乗記フェラーリが「グランドツアラーを進化させたスポーツカー」とアピールする、新型FRモデル「アマルフィ」。見た目は先代にあたる「ローマ」とよく似ているが、肝心の中身はどうか? ポルトガルでの初乗りの印象を報告する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ911カレラT編
2025.12.19webCG Movies「ピュアなドライビングプレジャーが味わえる」とうたわれる「ポルシェ911カレラT」。ワインディングロードで試乗したレーシングドライバー谷口信輝さんは、その走りに何を感じたのか? 動画でリポートします。 -
ディーゼルは本当になくすんですか? 「CX-60」とかぶりませんか? 新型「CX-5」にまつわる疑問を全部聞く!(前編)
2025.12.19小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ「CX-60」に後を任せてフェードアウトが既定路線だったのかは分からないが、ともかく「マツダCX-5」の新型が登場した。ディーゼルなしで大丈夫? CX-60とかぶらない? などの疑問を、小沢コージが開発スタッフにズケズケとぶつけてきました。 -
EUが2035年のエンジン車禁止を撤回 聞こえてくる「これまでの苦労はいったい何?」
2025.12.19デイリーコラム欧州連合(EU)欧州委員会が、2035年からのEU域内におけるエンジン車の原則販売禁止計画を撤回。EUの完全BEVシフト崩壊の背景には、何があったのか。欧州自動車メーカーの動きや市場の反応を交えて、イタリアから大矢アキオが報告する。






























