新しくなった「GRドライビングエクスペリエンス」を体験取材! GAZOO Racingのレーサーに運転を学ぶ
2026.05.15 デイリーコラムGR主催のドライビングレッスンが大幅に進化
2026年5月某日、記者は「GR DRIVING EXPERIENCE(ドライビングエクスペリエンス)」を受講する機会を得た。寡聞にして知らなんだが、どうもこの4月に内容を大幅リニューアルしたとのことで、メディア向けに体験取材の機会が設けられたのだ。自慢じゃないが、記者は自分の運転スキルをみじんも、まったく、毛ほども信用していない。これはよい機会と手を挙げたのだ。
読んで字のごとくだが、GRドライビングエクスペリエンスとは、トヨタでモータースポーツ活動やスポーツカーの開発などを統括する、GAZOO Racingが開催する運転講習会である。現役のレーシングドライバーを含むプロフェッショナルの指導のもと、クルマの「走る・曲がる・止まる」に関する基本操作から、よりハイレベルなドライビングテクニックまで、自分のレベルに合わせてレッスンを受けられるというものだ。
かつては全国を巡って開かれていた本講習だが、今回のリニューアルでは、開催地を設備の充実した富士スピードウェイの「モビリタ」に固定。「ベーシック」「アドバンス」の2段階だったプログラムの内容も「GR1級」から「GR4級」までの4段階に細分化され、それこそ正しいドライビングポジションのとり方から、限界領域でのクルマの操作方法まで、ムリなくステップアップして学んでいけるようになった。
今回、メディア向けに用意されたトレーニングは、GR3級の「低ミュー路でのオーバーステア/アンダーステアの体験と理解」と、GR2級の「パイロンコースでの限界走行」。記者の講師はSUPER GTなどで活躍する井口卓人選手&松井孝允選手と、なんともゴージャスな先生方だった。
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滑りやすいシチュエーションでクルマの挙動を体験
さて、まずはGR3級の「低ミュー路でのオーバーステア/アンダーステアの体験と理解」から。このクラスは「車両の荷重移動と操作の関係性、車両挙動を理解する」ことを目標としたもので、実際のレッスンでは、スラローム走行(荷重移動と操作リズム)やオーバルトレーニング(スローインファーストアウト)も行われるという。が、それらのプログラムもすべて含めると丸一日かかる内容なので、今回は低ミュー路走行のみを、つまんで体験することとなった。
さっそく、まずは松井選手のドライブでコースイン。たっぷり水のまかれた散水路を、しかもウエットに弱いスタッドレスタイヤの「トヨタGR86」で走る。グリップ感は相当希薄で、それは助手席に乗る鈍感な記者でも分かるレベルなのだが、氏のドライブは安心感抜群。ドリフトも余裕しゃくしゃくで、なんだかとても簡単そうである。
しからばと思い、今度は記者がハンドルを握ってコースイン。そしてさっそく、プロドライバーとの技量の差を思い知った。いやシンプルに怖いんですけど。そもそもウエット路面でスタッドレスタイヤってこんなに滑るの!? 世の中には、使い古しのスタッドレスを年中履きつぶしている人がいるけど、そういう御仁はぜひこれを体験してほしい。なんかあったら、なんともならんぞ!
……なんて、本旨とは関係のないところで気づきを得つつ、どうにかこうにかコースを周回。コーナー手前で超減速、アクセル踏むのは直線だけ、といったありさまだが、これではアンダー/オーバーの練習にならん。意を決して速度を上げたら、いともたやすくコーナー進入で前輪がズルった。トランシーバーからの助言を参考に、次のコーナーではブレーキでフロントに荷重をかける。と、ちゃんと舳先(へさき)が動くじゃありませんか。逆に、お尻が振り出るオーバーステアへの対応については、カウンターステア(コーナーの方向とは逆にハンドルを切る)である程度挙動を収めることはできたが、華麗にドリフトを決めるまでには至らず、コースのあっちこっちで、くるんくるんと回ってしまった。
松井先生いわく、記者はリアが滑り出した際にスポンとアクセルを抜いてしまうのがダメらしい。急激にリア荷重が抜けて、車両をコントロールできなくなってしまうのだ。うーむ、残念。次なる機会があったら、ぜひそこを克服したい。
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「GR86」って実は結構スゴいんだぜ
続いては、GR2級の「パイロンコースでの限界走行」に挑む。こちらのクラスは「グリップ限界で車両挙動を操れる」ことを目標としたもので、通常は円旋回(ウエット路)でのオーバーステアコントロールや、オーバルトレーニング(ターンイン訓練)なども学ぶという。
ちなみに、今回体験しなかったGR4級は、運転の基礎を理解することが目標のクラス。正しいドラポジやフル加速&フルブレーキ、スラロームでのハンドル操作、円旋回(ウエット路)でのアンダーステアなど、まさに運転の基礎を学ぶものとなっている。いっぽう、いちばん上のGR1級は、サーキット走行の入門を想定したもの。パイロンコースでの限界走行に加え、サーキットルールの講習、ショートサーキットでのトレーニングなども行われるという。資料を見たところ、今回、記者が体験した「パイロンコースでの限界走行」は、どうやらGR2級とGR1級の両方で実施されるプログラムのようだ。
そんなわけで、今回もまずは井口選手のドライブでコースイン。舞台はモビリタの敷地をのびのび使った特設コースで、ギアが3速まで入る直線にヘアピン、スラロームを、Rの異なる複数のコーナーでつないだものだ。通常はコースの半分をウエット、もう半分をドライとしてグリップの違いを体験できるようにするそうだが、取材日はあいにくの雨。全域ウエットでの走行となった。
運転席を井口選手から譲られ、「最初はギアチェンジとかしないで大丈夫なので、まずはコースに慣れてください」という言葉を受けて記者の走行がスタート。最初の周は師匠の言に従って完熟に徹したのだが、気がせいて、2周目から早くもアクセルをガバチョと踏み込んでしまった。そしてまたしても、「え、GR86ってこんなに速かったっけ!?」と、セミナーの本旨と関係のないところでおどろいてしまった。直線ではやすやす100km/hを超えるし、スポーツタイヤの「ミシュラン・パイロットスポーツ4」は、ウエット路面でも粘る粘る。オーバーステアにハンドルで帳尻を合わすのも容易で、タイヤでこんなにクルマは違うのかと、イベントとは無関係なことにまず感動してしまった。
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この充足感はモータースポーツならでは
それにしても難しい。AUTO-Xなどをちょいとたしなんだこともある記者だが、やはりこうした“コース”でクルマを走らせるのはムズカしい。コーナーやスラローム等、おのおののエリアでの操作に集中しすぎると、次のエリアへの準備がおろそかになる。頭に血が上りやすい記者は、「ストレートエンドでの減速でギアダウンしそびれたままコーナーに進入して、失速」なんて失態を、方々で繰り返すことになった。うーむ、恥ずかしい。恥ずかしいが楽しい。ドーパミンがドバドバである。脳と体を総動員してメカを駆るこの感覚は、やっぱり、モータースポーツ(なんて記者のレベルで言ったらおこがましいですけど)でしか得られないものだろう。
そんなこんなで、あっという間に25分間のパイロンコース走行が終わり、今回のGRドライビングエクスペリエンス体験は終了。方々でくるんと回ったり、コース上でプスンといったりした記者だが、講師陣が「ナイスファイッ」という感じで言葉をくれて、よりプッシュをあおってくれたのがうれしかった。ここではミスは醜態にあらず。限界域での操作習得に挑んだ証拠なのだ。加えて、舞台はだだっ広いモビリタである。回っても滑っても無問題なほど広いコースで、普段は試せないことをのびのびと試せるのが、非常に有意義だった。
それにしてもウデが重い。25分の低ミュー路走行と、同じく25分のパイロンコース走行だけで、この充実感。ほかにもあれやこれやとプログラムが組まれる本来の講習では、どれほどのボリュームとなることやら。興味を持たれた読者諸氏はぜひ、スポドリ持参で富士スピードウェイに赴いてほしい。
(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=向後一宏、トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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