レクサスLS600h(4WD/CVT)/LS600hL(4WD/CVT)【短評(前編)】
トヨタへの期待(前編) 2007.06.16 試乗記 レクサスLS600h“versionU・I package”(4WD/CVT)/LS600hL“後席セパレートシートpackage”(4WD/CVT)……1392万5150円/1510万円
トヨタが世界に誇るハイブリッドシステムを搭載した、レクサス最上級モデル「LS600h」。満を期して登場したフラッグシップモデルに試乗。その実力とは。
エディターにお願い
「うわっ!」
思わず声が出た。注目のレクサス最上級モデル、LS600h/LS600hLの記念すべき最初の試乗は、『webCG』アオキエディターの運転により、ロングバージョンLS600hL“後席セパレートシートpackage”のオットマン付リヤシートで過ごす30分だった。後席のセンターコンソールとにらめっこしながら、シートポジションを調節していたら、何の前触れもなく、音もなく、クルマがスッと発進したものだから、私はマジで驚いてしまった。次からは一声かけてね、エディター!
それにしても、2.3トン強のロングホイールベースボディを力強く滑らかに発進させるとは、恐るべき心臓の持ち主だ。
LS600h/LS600hLは、いまさら説明する必要などないと思うが、レクサスLSの最上級グレード、すなわちレクサスのフラッグシップモデルとなる重要なクルマ。トヨタが世界に誇るハイブリッドシステムを搭載することから、モデル名には“h”の文字が入っている。数字の“600”が6リッターエンジンなみの動力性能を表しているのも、みなさんきっとご存知だろう。
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燃費も恐るべし
カタログを見ると、5リッターV8とモーターで構成されるLS600h/LS600hLのハイブリッドシステムは、445psの最高出力を持つと記されている。これは偶然にも「BMW760Li」の6リッターV12と同じ数字であり、「アウディA8 6.0クワトロ」のW12にわずか5ps及ばないという実力である。
にもかかわらず、10・15モード燃費はLS600h/LS600hLともに12.2km/リッターで、760Liの5.4km/リッター、A8 6.0クワトロの6.1km/リッターに大きく水をあけるのだから、環境問題に敏感なVIPなら興味を持たずにはいられないはずだ。
そんな期待のモデルが2007年5月17日に日本デビューを果たした。ラインアップはLS600hとそのロングホイールベース版のLS600hLで、パッケージオプション装着車を含めると、970万円から1510万円まで8つの選択肢が用意される。ちなみに、私が最初に乗ったLS600hL“後席セパレートシートpackage”は、後席の定員が通常より一人少ないVIP御用達の最上級モデルである。
このLS600hLに限らず、どのモデルにも、ハイブリッド車であることをアピールする特徴がいくつかあって、車名を表すバッジに加えて、フロントやリヤのレクサスエンブレムやサイドの「HYBRID」の文字、さらにリヤコンビネーションランプや専用デザインのヘッドランプなどには、ブルーがあしらわれている。見る人が見ればわかるという違いだが、オーナーの心をくすぐるにはこれくらいのほうが効果的なのかもしれない。
6リッターなみの実力は本当だった
VIP気取りの後席インプレッションは後ほどまた改めてということにして、まずは“いつもの場所”からのレポートといこう。試乗したのは、標準ホールベースのLS600hのなかで最も豪華な仕様の“versionU・I package”だ。
パワースイッチを押してハイブリッドシステムを起動し、いつもと変わらぬゲート型のシフトパターンをなぞりながらシフトレバーをDのポジションへ。ブレーキからアクセルペダルへ右足を踏み換えると、エンジンの回転計はゼロを示したままだが、クルマはモーターの力で静かに発進する。そしてスピードが上がっていくと、いつのまにか回転計の針がゼロの位置を離れ、エンジンが動き出したことがわかる。しかし、聞こえてくるのはロードノイズとエアコンの風の音くらい。キャビンは静かなままである。
街なかを流すくらいなら、エンジンの回転数は1000rpmを少し上回る程度。ここで、アクセルペダルを軽く踏んでやると、間髪入れずにスッと加速。このとき、エンジンは素早く回転を上げるが、2000rpmを超えることはほとんどない。
もう少しアクセルペダルを踏み込むと、LS600hは勢いよく加速を始める。そのスムーズさと力強さは“6リッターなみ”の謳い文句どおりである。(後編につづく)
(文=生方聡/写真=高橋信宏)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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