ボルボC70(FF/5AT)【ブリーフテスト】
ボルボC70(FF/5AT) 2007.03.30 試乗記 ……518万4000円総合評価……★★★★★
「ボルボ」のオープンモデル「C70」が発売された。春は目前、流行のクーペカブリオレスタイルになった新型を、市街地を中心に試した。
贅沢な乗り物
「ボルボC70」に関して、海外試乗会のおり、狭い山道を攻めるというスポーツ走行は体験済みなので、今回は市街地の狭い路地を徘徊するようなコースをあえて走ってみた。
横置きエンジンのショートノーズとはいえ、それでも昨今のミニバンなどに比べればノーズは長く、オーバーハングも気になるところ。しかしC70はそんなところでも、ハンドルはよく切れるしバンパーなどのコーナーを断ち落としたデザインが功を奏し、近づく電柱をもてあますこともまったくなかった。
オープンにした時の解放感は言うに及ばず、ミラーやモニターに頼った感覚的なものに比べ、直接見えることのありがたみを再認識した。
周囲の音がよく聞こえることも新鮮な驚きで、逆に出しっぱなしになっていたウィンカーの音が聞こえない点も体験。オープンゆえに直接見えることは素晴らしいが、見られることの恥ずかしさも同居。
一方ではクーペゆえのタイトさも味わえるし、その両方を30秒足らずで手軽に行ったり来たりできる二面性は格別。さらに言えば二人だけでなく4人で楽しめるオープンカーは、ファミリーカーとしても使える。C70は贅沢な乗り物かもしれない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2005年9月のフランクフルトショーでデビュー。昨今流行のメタルトップを採用し、先代のクーペ「ボルボC70」とそのオープン版「C70カブリオレ」を一本化する形で生まれた。ボルボの4座オープンカーとしては2代目となる。
日本では、約1年半後の2007年3月3日に発売された。
ボディは、先代(全長4715×全幅1815×全高1400mm)とほぼ変わらないサイズで、電動で3分割収納されるトップをイタリアの「ピニンファリーナ」と共同開発するなど、デザインの美しさを主張する。
ラインナップは、NAの2.4リッター直5(140ps)とターボの2.5リッター直5(220ps)。エンジンの種類により2つのモデルから選ぶことができる。
(グレード概要)
テスト車は、NAの2.4リッター直5モデル。上位モデルのターボ版「T-5」とは、エンジンのほかにホイールのサイズが相違点で、その価格差は76万円となる。
ハンドル位置は右のみ。オプションとして、「運転席8ウェイパワーシート」「本革シート」「ハイパフォーマンスオーディオシステム」「AUXインプット」「バイキセノンヘッドライト」がセットになったベーシックパッケージなどが用意される。
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【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
特別に凝ったところは見られないが、メーターまわりもスッキリして綺麗な処理には品がある。オープンにして走ることを想定して、付着するホコリなど水拭きできる材質を使用、その樹脂なども表面処理で安っぽく見せない所がボルボの実力。
シンプルなセンタースタック上のスイッチ類も見やすく使いやすい。革や木に頼らなくても高級感を醸すスカンジナビアン・デザインの白眉。
(前席)……★★★★★
シートはサイズ、形状ともに適切。座面の後傾角もバッチリで、ランバーサポート調整が無くとも上体の背面依存率は確保され、疲れない。座面先端のネットによる物入れは邪魔にならずメガネなど大事な物の収納に重宝。鋭角で外からは見えにくいので隠しポケットとしても有効。
フロントウィンドーは大きく傾斜しておりピラー端末は乗降性を妨げがちではあるが、これだけの車格になると絶対的な余裕がある。
(後席)……★★★★
独立した4席ゆえ横方向にも空間的な余裕がある。足先も前席シートの下に入るし、膝まわりの空間も確保され、この手の4座スポーツの標準を抜いて十分な空間が確保されている。オープンの状態でリアシートに座ると風に晒される率は前席より高いが、風防はそれほど完備されていないところが北欧的か。しかし、ヘッドレストは有効に首筋を守り、背面の高さは肩も隠してくれ、髪は乱れても飛来物からは保護してくれそう。
乗客が居ない場合、シートベルトが風で叩かれるのが難。
(荷室)……★★★
トップを畳んで収納してしまうと、殆どの空間部分は占領されてしまう。しかしリアウィンドー下には少しながら空間が残り、コンビニの買い物程度なら許容する。荷物を積みたければトップを上げてクーペで乗ればいいわけだから、それほど深刻な問題とは言えない。
ルーフを積まない状態では、FFゆえにフロアも低く、高めのデッキとあいまってかなり大量の荷物を収納可能。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
5気筒2.4リッターNAエンジンはすでに定評あるもので、この1720kgの決して軽くはないボディを不足なく転がす。もちろん絶対的にはターボ過給つきの方が活発ではあるが、4シーター・オープンという性格にはこれで十分。速く走りたければ5ATを駆使できるマニュアルシフトを使えばいい。ただし、流行の“手元でできるパドル”などは無いから、センターレバーを左に寄せて前後させなければならない。
なおフォード系列ながらボルボは前が「+」、手前が「−」の配置をとる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地は速度を問わず、低速から高速まで終始フラットな姿勢を崩さず、快適の一語に尽きる。ボディ剛性も十分で、ハーシュネスなど小突起に対しても寛容。トップの上げ下げによる剛性の差はあるが、問題にならない程度。
操縦安定性の面では、重量物の移動により当然ながらオープンの方が重心は低く安定性は高い。またトランク部分が重くなる特性上アンダーステアも軽くなる。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2007年3月1日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:1582km
タイヤ:(前)215/50R17(後)同じ(いずれも、ピレリP7)
オプション装備:パールペイント(10万8000円)/ベーシックパッケージ(38万6000円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:307.9km
使用燃料:40リッター
参考燃費:7.69km/リッター

笹目 二朗
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