シトロエンC5 2.0(4AT)/C5 V6エクスクルーシブ(6AT)【試乗記】
受け継がれる伝統 2004.12.03 試乗記 シトロエンC5 2.0(4AT)/C5 V6エクスクルーシブ(6AT) ……360.5万円/458.6万円 現行ラインナップで唯一、シトロエンのお家芸「ハイドラクティブ」を備える「C5」。2004年のパリサロンで発表された新型が、早くも日本に登場した。次世代のシトロエンデザインを纏うニューC5に、大川悠が試乗した。
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次期シトロエン・デザインへの第一歩
2004年秋、パリサロンの会場で、シトロエンのブースにある、比較的大きなクルマが気になって近づいたら、「C5」の新型だった。
新しいとはいっても、ボディ前後のリスタイルが主。2001年のこのショーに展示された未来のDSのようなコンセプトカー、「Cエアドリーム」風のダブルシェブロンを強調したノーズに、異形ヘッドライトやテールライト(メーカーではブーメラン型と称する)を取り入れただけなのである。それでも実際目にすると、従来のC5とはかなり印象が違った。
よく観察すると、サルーンはシルエットも異なる。C5のスタイル面での特徴は、「クサラピカソ」を押しつぶして前後に引き延ばしたような、モノスペース的シルエットを持つ3ボックススタイルにある。だが、どうもそれが中途半端で不評だったらしい。新型はCピラーの角度を立て、トランクへのノッチを強調し、従来に較べてハイデッキスタイルが採られた。
主にスタイルのために前後オーバーハングを延ばしたボディは、全長がサルーンで12cm、ブレークで6cm増え、全幅はいずれも1cm広い。サルーンは荷室が長くなったことで、容量が15リッター増しの471リッターに拡大された。「エグザンティア」の後継車としては大きいボディが、またすこし大型化したことに釈然としないが、輸入元は先代よりクラスをすこし上げたモデルと説明する。
ともかく、メリハリがなくて弱いというか、押し出しが効かないとあまり評判よくなかったC5の格好が、今回多少は個性的かつ挑戦的になったことは事実である。このライトやノーズのモチーフは今後のシトロエンのテーマになるはずで、同じパリサロンに発表され、2005年6月頃日本に導入される「C4」も、同様なデザインテーマを打ち出している。
熟成した実用性
室内もデザイン細部が変更を受けたと説明されるが、ドイツのライバルのように、ネオバウハウス的機能主義や仕上げ品質で勝負しない。依然として、どこかで有機的な感覚を大切にしている。そのせいか、チリ合わせや素材の質感は、それほど追求していない。
見た目に華は乏しいが、室内空間の広さは誰もが認めるだろう。外寸に対するキャビンの比率が高いから絶対的に広い。特にリアルームは広々としているし、リアシートのクッション長が短いわりにはとても快適だ。また、C5の特徴でドライバーズシートが比較的中央よりにあるから、ドアとの隙間が広がり、前席住人も心理的に広く感じられる。ただしドライバーにとっては、それが1780?の全幅を、それ以上に広く感じさせるのも事実。フロントフェンダーが見えないうえに、リアデッキも高いから、狭い道路では結構、気を遣わされる。
箱根で開かれた試乗会では4気筒、V6ともにサルーンに乗ったが、やはり「シトロエンの価値はハイドラクティブ」という言葉に尽きた。
V6はより軽快でスムーズになっただけでなく、アイシン製の6ATが与えられ、チップシフトも組み合わされた。結果として全体的にドライブトレーンがリファインされ、より繊細な制御が可能になったし、以前よりも走りが活気に富んでいる。
4気筒は4段ATのままだが、これが意外によかった。エンジンは圧縮比を10.8から11.0に変更。可変バルブタイミング機構が与えられ、低速トルクがかなり増えている。このために1.5トンほどのサルーンに4人フル乗車して箱根の山を登っても、まったく問題はなかった。トランスミッションにやや古さを感じるが、変速レスポンスはかなりいいし、ちょっと前のフランス車とは違いシフトプログラムもきちんとしている。
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最大の価値はハイドラクティブ
一番感心させられたのは、やはり、ハイドラクティブがもたらす乗り心地とハンドリングの絶妙なことである。このサスペンションに接するたびに新鮮な感動があるが、久々に乗って、またこの空気とオイルのシステムがもたらす世界に感銘を受けた。中速域以上の乗り心地、コーナリング時のロール制御は見事というほかない。FWDにもかかわらず、前後輪をすべて使い切りながらコーナーを抜けるように感じさせるハンドリングは、ハイドラクティブ以外のクルマでは求められないものであり、それだけでこのクルマの存在価値がある。
ただし、以前よりだいぶ良くなったとはいえ、鋭い目地段差のような高周波域の振動は、相変わらず直接的に伝わる。低速では後ろのサスペンションユニット類から、やや安っぽい音が聴かれるのが残念だった。
C5の価格は、4気筒で360万円前後、V6はその100万円高とけして安くはない。価格を抜きにしても、誰にでも勧められるクルマとはいえないのだ。たしかに、以前よりはメリハリが出たスタイリング、進化したシャシーの電子的コントロール(これを可能にするべく、C5のハイドラクティブIIIは、ブレーキやステアリング関係のオイルラインはサスペンションとは完全に独立した)が与える安全性と信頼性、さらに広がったトランクルームなど、過去に較べて商品性は高まった。
それでも、シトロエンはシトロエンである。このクルマが創り出す世界は、他のライバル群のそれとは多少異なる。強い機械でもなければ、仕上げ水準が高い洗練された商品でもない。シトロエンが与えられるのは、突進するというよりも浮遊するような、あるいは機械的というより有機的な感覚なのである。そういった意味で、この大きなシトロエンは、やはり長い伝統をきちんと現代に翻訳していると思った。
(文=大川悠/写真=峰昌宏/2004年11月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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