第231回:究極は「青い血ドバー」
2022.05.02 カーマニア人間国宝への道DSの最上級セダンで首都高に出撃
担当サクライ君よりメールが入った。
「今度『DS 9オペラ』と『BMW M240i』に乗れますが、どちらにいたしましょう」
私は間髪入れず「DS 9のほう!」と返信した。なぜならシトロエンが大好きで、「エグザンティア」や「C5」に乗ってきたから(ついでに「DS3」にも)! ハイドロ亡き後のシトロエン/DSの最高級セダンがどんな乗り味なのか、とっても気になるぅ。
せっかくなので、現「C5ツアラー」オーナーの担当K(カーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当者)も呼ぶことにした。シトロエンにうるさいマニアが2人そろえば、より正確な評価が可能なはずである。
午後8時。サクライ君がDS 9でやってきた。ボディーが真っ黒で、スタイリングはよくわからないが、「なんかちょっと違うな」という印象だ。
K:なんかちょっと違いますね。
オレ:われわれ守旧派が期待する、シトロエン/DSらしいアバンギャルドさとはちょっと違うよねぇ。
とはいうものの、暗すぎてよくわからないので、辰巳PAでじっくり拝見することにして、まずは出撃だ。
オレ:ところで乗り味はどうなの? フワフワなの?
サクライ:いやぁ、それがしっかりしてるんですよ。いい意味で。
オレ:えっ、シトロエンがしっかりしてて、いい意味なんてあり得るの!?
サクライ:それがあるんです。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
足のハナシになったら止まらない
走りだして約50m。
オレ:あっ! 乗り心地がステキだ!
サクライ:「DSアクティブスキャンサスペンション」といいまして、カメラが路面をスキャンして凹凸を検知し、事前に電子制御サスペンションが調整するんです。
オレ:そうなの? ハイドローリックなんとかじゃないの?
サクライ:それとは違います。
ハイドローリックなんとかとは、「C5エアクロス」の「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」のこと。あれはとってもフワフワで好きだった。あれがハイドロの後継技術だと思っているのだが、DS 9はソレとは違うらしい。
実は、「乗り心地がステキだ!」と思ったのは時速30kmまでで、速度が上がるにつれDS 9の乗り味は、サクライ君が言った「しっかりしてるんですよ」になった。
実は私が乗っていたC5も、ハイドロの割にはかなりしっかりしていた。あの頃のフランス車はドイツ車コンプレックスで、やたら足を固める傾向があったのだ。DS 9も、その延長線上にあるような気がしないでもないが、どうなのだろう。
K;でも、僕のC5は、清水さんのより明らかにソフトですよ。
オレ:そうだったよね。一回乗せてもらってビックリしたけど、あれはスタッドレス(タイヤを)履いてるからって言ってなかった?
K:それもありますけど、サマータイヤでもかなりフワフワです。
オレ:そうなんだ! シトロエンも反省して、後期型はフワフワにしたのかな?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
シロトエンは故障してナンボ!?
K:僕のは2013年式ですから、そうだと思います。『MAMA』(横浜市都筑区のフランス車専門店)に「C6」のディーゼルがあったんで、欲しいな~って東條店長に言ったら、「シトロエンマニアの間では今、C5後期型が究極ってことになりつつあります」って言われました。
オレ:そ、そうなのぉ!?
C6よりもC5の後期型が究極とはビックリだ。C6のデザインは永遠の憧れ、シトロエンデザインの極北だと思ってるけど、乗り味ならC5後期型なのかっ!?
K:でも僕のなかでは、C5みたいな、故障しないシトロエンしか知らないのは本物じゃないっていう思いがあるんです! エグザンティアみたいにブッ壊れるシトロエンじゃないとダメだって!
オレ:いや、俺のエグザンティアもあんまり壊れなかったよ。マフラーが折れたくらいで、ハイドロはスフィアすら一回も交換せず、7年間ノートラブルだった。
K:そうなんですか!? それじゃダメじゃないですかっ!
オレ:本当の本物は元祖「DS」とか、「CX」のボビンメーター付きだよねぇ。永遠の夢だよねぇ。
K:いやー憧れますねぇ。でも無理だよなぁ。あんな古いのに乗ってて、青い血を吐いて息絶えでもしたら、その場で奥さんにこんなの捨ててこいって言われちゃいますよ。
オレ:オレも青い血、一度は吐かせてみたかったよ。ドバーって。
K:青い血、憧れますねぇ。
という具合に、シトロエンファンのオッサン2人は、DS 9のことなど忘れ、サスがフワッフワで青い血を吐いて息絶える、「本当の本物のシトロエン」への憧れを吐露し続けたのでした。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第346回:EVかいわいで辰巳かいわいへ 2026.10.12 清水草一の話題の連載。日産の「サクラ」と「アリア」、そしてホンダの「スーパーONE」と、国内メーカーがリリースする3台のEVに立て続けに試乗した。三者三様の走りを味わい、リアルに感じたことをカーマニア目線で報告する。
-
第345回:10秒ごとの快感 2026.9.28 清水草一の話題の連載。実に16年ぶりのフルモデルチェンジとなった日産の新型「エルグランド」が狙うのは、圧倒的な強さを誇るトヨタのミニバン「アルファード」と「ヴェルファイア」の牙城だ。早速、首都高でエルグランドの走りを確かめた。
-
第344回:アンパンマンよりばいきんまん 2026.9.14 清水草一の話題の連載。メルセデス・ベンツの新型「CLAシューティングブレーク」が気になってしかたがない。理由はその特徴的なフロントフェイス。左右の目玉(ヘッドランプ)がつながったデザインがたまらない。果たして実車の印象は?
-
第343回:おやじ、涅槃で待つ 2026.8.31 清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない?
-
第342回:どうしてこんなに高いんですか 2026.8.17 清水草一の話題の連載。BYDが日本の軽自動車市場に向けて独自開発した電気自動車「ラッコ」が上陸した。早速、愛車「ダイハツ・タント」の後継として検討すべく、近所のディーラーで試乗することに。果たしてその印象は?
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。









































