アウディR8(4WD/2ペダル6MT)【海外試乗記】
スポーツカーでも、“らしさ”を失わない 2007.02.08 試乗記 アウディR8(4WD/2ペダル6MT)2003年のコンセプトカー「ルマン・クワトロ」発表からおよ3年半の時を経て市販された「R8」。同社初の量産ミドシップスポーツカーのフィーリングを確かめるべく、アメリカ・ラスベガスで試乗した。
日常性に配慮したスポーツモデル
ルマン24時間レースで伝説的な連勝記録を作った名レーシングカーと同じ名前を戴く、アウディ初の本格ミドシップスポーツカー「R8」。このクルマは、2003年のフランクフルト・モーターショーで初披露され、その後東京でも展示されたコンセプトカー「ルマン・クワトロ」の市販バージョンである。
実際、基本フォルムは内外装ともにほとんどそのままと言っていいほどだ。
しかしエンジンは最高出力610psを誇ったルマン・クワトロのV型10気筒5リッターFSIバイターボではなく、「RS4」譲りのV型8気筒4.2リッターFSI(420ps)に置き換えられている。
アウディによれば、ライバルと見据えるのはフェラーリやランボルギーニなどのスーパースポーツではなく、より日常性に配慮したスポーツモデルだという。なにしろプレゼン資料には、「シート後方の90リッターのスペースにゴルフバッグが2つ入る」と高らかに謳われているくらいなのだ。
要するにその最大のライバルは、こちらはゴルフバッグを積むのは厳しいとはいえ、やはり「ポルシェ911カレラ4」ということになるのだろう。そこにアウディらしいデザインそしてテクノロジーで勝負を挑もうというのが、このR8である。
アウディの持てるすべてが注ぎ込まれた
なるほどそのデザインはいかにもアウディらしく、他のライバル、たとえば「アストンマーチンV8ヴァンテージ」や「ジャガーXK」等々と較べても、大胆というか非日常の匂いが強く感じられる。
さらにテクノロジーの部分でも、最新世代のASF(アウディ・スペース・フレーム)で構築されたアルミボディ、フルタイム4WDのクワトロ、FSI、アウディマグネティックライド、2ペダルシーケンシャルシフトのRトロニック等々が採用され、アウディの持てるすべてが注ぎ込まれているといっていい。
では肝心な走りっぷりはといえば、アメリカはラスベガスの速度規制の厳しい一般道では、至極快適と感じられる仕上がりを見せていた。若干の個体差があった試乗車のうちいい印象のもので判断すれば、姿勢は基本的にフラットでサスペンションは硬めだが突き上げ感は小さい。大きな入力に対しては、マグネティックライドの力をもってしてもアルミボディらしい硬さを感じもするが、おおむね快適という言葉で括ることができそうだ。
気になるとすれば、シングルクラッチの2ペダルMT、つまりは「ランボルギーニ・ガヤルド」用の改良型であるRトロニックが、発進時や街中など低中速域での変速時に常にギクシャク感を伴うことぐらいである。
ゾクゾクする刺激はないが……
しかし、こうした日常域の快適性以上に注目すべきは、そのハンドリングのほうだろう。前後重量配分44:56のシャシーは、テストコースで攻め込んだときにも軽快かつ素直で、まさに思いのままの胸のすくターンインを実現していた。挙動には確かにミドシップらしい鋭さがあるのだが、ビスカスカップリングを用いてフロントに最大35%のトルクを配分するクワトロシステム等々の働きで動き自体は穏やか。要するにリアルスポーツカーらしい走りっぷりを、冷や汗をかくことなく楽しむことができるのだ。
ただし、それはゾクゾクするような刺激が強いわけではないということでもある。エンジンにしてもそうで、RS4では素晴らしい体験をさせてくれたのに、R8に載せると回転レスポンスにしてもトルクのツキにしても、もっとドライバーを鼓舞してくれるものであってほしいと思ってしまう。パーシャルでは今イチながら、思い切り踏み込むとまさにルマン用のR8を彷彿させるサウンドを炸裂させるあたりは悪くないのだが。
そうはいうものの、それでこそアウディらしいスポーツカーだというのも、紛れもない事実である。デザインにしてもそうだが、基本的にはクールでフラットで、そして精緻そのもの。スーパースポーツならそれでは決定的になにかが足りないということになりそうだが、日常使用する人だって少なくないであろうこのカテゴリーのスポーツカーとしては、そしてその中からアウディを選ぼうという人にとっては、まさにこうしたクルマこそが求めていたものなのかもしれない。
このR8、価格はヨーロッパで10万4400ユーロからとされている。つまり日本円で1500万円を超えるわけだが、果たしてここ日本では一体どのあたりに設定されるのかは気になるところである。なお、上陸時期は今秋の予定だ。
(文=島下泰久/写真=アウディ・ジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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