ホンダ・シビック1.8GL(FF/5AT)【試乗記】
街乗りだけじゃもったいない 2006.04.13 試乗記 ホンダ・シビック1.8GL(FF/5AT) ……243万750円 1972年に誕生した「シビック」は、今や世界160ヶ国で販売されるグローバルモデル。8世代目に進化し、ミドルクラスセダンにランクアップした新型シビックの、ベーシックな1.8リッターガソリンモデルに乗った。ハイブリッドが本命なのか?
私が大学生の時、友達がクルマを買った。中古の「ワンダーシビック(3代目)」だった。サークルの先輩が新車を買った。「スポーツシビック(5代目)」だった。
そんな若者に好まれた「シビック」も今は昔。2005年9月に発表された現行8代目シビックは、そんな彼らの選択肢からはちょっとはずれそうな、セダンのみのラインナップになった。コンパクトカーとしての立場を「フィット」に譲り、「アコード」にも迫る勢いで上方移行をした新型シビックは、ホンダラインナップでのミディアムセダンを担う存在となった。クラスアップしたボディはついに3ナンバー化し、全長×全幅×全高=4540(+70)×1750(+55)×1440(0)mm、ホイールベース=2700(+80)mmとなった(カッコ内は先代シビックフェリオ比)。2リッタークラスのボディサイズだと思っていたら、つい先日2リッターモデルも追加された。
ガソリンエンジンのほか、ハイブリッドが用意されるあたりは、先代同様。しかしいかにも空力が良さそうなモノフォルムボディを見ると、「今作はハイブリッドが本命か」と思わせる。そんな先入観を持ちながら乗り込んだのは、1.8リッターガソリンモデルの装備充実グレード「1.8GL」である。
インテリアは好き嫌いが分かれるところ
乗り込んで真っ先に目に入るのは、他のホンダ車とも共通する飾り気の無いインテリア。スピードメーターとタコメーターが上下に分かれたマルチプレックスメーターや、独特の形状を持つステアリングホイールなどは好き嫌いが分かれるところかもしれない。ATセレクターレバーの位置は、先代のパネルからフロアに移された。
座面が低いシートは、肩までおよぶサイドサポートのおかげでホールド性が高く、ヘッドレスト形状も頭にフィットする。足元も広く、座った感じは快適だ。大きく傾いたウインドシールドと、広いダッシュボードが目の前に広がる。相対的にスカットル位置が高くなることと、フロント周りがラウンドした形状などで、ボディの見切りに不安がつきまとうが、フロントオーバーハングはそれほどないので、ことさら心配する必要はない。チルト&テレスコピックも全グレードに標準装備。さらにセレクターレバーをパーキングの位置に移動すると、ドアロックが解除される仕掛けなどは歓迎されるべき装備で、是非とも多くのクルマで採用してほしい。
一通りインテリアを見渡し、エンジンを始動する。シビックは最近流行りのプッシュ式ではなく、オーソドックスなコラムにキーを差し込んでひねるタイプ。火の入ったエンジンはアイドリングで700rpmを示し、静粛で不快な振動は感じない。
ピシッとしたハンドリング
オルガン式に生えたアクセルペダルを踏み込み高速道路を走ると、直進安定性の高さが際立つ。ホンダ流のクイックなギア比(2.6回転)を持つステアリングホイールではあるが、ちょこちょことした修正は不要だ。さらに電動パワステの感触も良い。速度や切れ角などにかかわらず適度な重さがあり、路面の状態を感じやすい。段差でのショックもうまく吸収するし、乗り心地も絶妙の加減だ。
山道でコーナーに近づき、舵を切ると、ノーズはスパっと切れ込む。ロールが少なく、旋回中の安定感が高い。タイヤに依存せず、サスペンションがしっかりと地面に追従している足まわりのセッティングである。なお、VSAはこのグレードではオプションとなるが、およそちょっと攻め込むぐらいでは出番は無さそうだ。それほどコーナーでの安定感がある。
まるで「フォード・フォーカス」や「VWゴルフ」などドイツ車のような、ビシッとしたハンドリング。そして乗り味。このクラスの国産セダンとしては、抜群にスポーティである。「日産ブルーバードシルフィ」「トヨタ・プレミオ/アリオン」などのおっとりとした味付けとは全く違うクルマだ。
このクラスの国産セダンは、とかく落ち着いた印象をアピールしがちである。その中にあって、異彩を放つシビック。スポーティなクルマとは謳っていないが、運転に特別興味がないお父さんでも、「よく走るなぁ」と口走るんじゃないだろうか。
ハッチバックがなくなり、若者がシビックを選ぶ時代ではなくなった。しかしなにげなくシビックを選んだお父さんは、気持ちがちょっと若返るような気がする。そのうち「街乗りだけではもったいない」と思うようになりそうだ。
(文=webCG本諏訪裕幸/写真=荒川正幸/2006年4月)

本諏訪 裕幸
-
ホンダ・ヴェゼル【開発者インタビュー】 2025.11.24 「ホンダ・ヴェゼル」に「URBAN SPORT VEZEL(アーバン スポーツ ヴェゼル)」をグランドコンセプトとするスポーティーな新グレード「RS」が追加設定された。これまでのモデルとの違いはどこにあるのか。開発担当者に、RSならではのこだわりや改良のポイントを聞いた。
-
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(4WD/CVT)【試乗記】 2025.11.22 初代モデルの登場からわずか2年半でフルモデルチェンジした「三菱デリカミニ」。見た目はキープコンセプトながら、内外装の質感と快適性の向上、最新の安全装備やさまざまな路面に対応するドライブモードの採用がトピックだ。果たしてその仕上がりやいかに。
-
ポルシェ911カレラGTSカブリオレ(RR/8AT)【試乗記】 2025.11.19 最新の「ポルシェ911」=992.2型から「カレラGTSカブリオレ」をチョイス。話題のハイブリッドパワートレインにオープントップボディーを組み合わせたぜいたくな仕様だ。富士山麓のワインディングロードで乗った印象をリポートする。
-
アウディRS 3スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】 2025.11.18 ニュルブルクリンク北コースで従来モデルのラップタイムを7秒以上縮めた最新の「アウディRS 3スポーツバック」が上陸した。当時、クラス最速をうたったその記録は7分33秒123。郊外のワインディングロードで、高性能ジャーマンホットハッチの実力を確かめた。
-
スズキ・クロスビー ハイブリッドMZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.11.17 スズキがコンパクトクロスオーバー「クロスビー」をマイナーチェンジ。内外装がガラリと変わり、エンジンもトランスミッションも刷新されているのだから、その内容はフルモデルチェンジに近い。最上級グレード「ハイブリッドMZ」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末
2025.11.26エディターから一言「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。 -
NEW
「スバルBRZ STI SportタイプRA」登場 500万円~の価格妥当性を探る
2025.11.26デイリーコラム300台限定で販売される「スバルBRZ STI SportタイプRA」はベースモデルよりも120万円ほど高く、お値段は約500万円にも達する。もちろん数多くのチューニングの対価なわけだが、絶対的にはかなりの高額車へと進化している。果たしてその価格は妥当なのだろうか。 -
NEW
「AOG湘南里帰りミーティング2025」の会場より
2025.11.26画像・写真「AOG湘南里帰りミーティング2025」の様子を写真でリポート。「AUTECH」仕様の新型「日産エルグランド」のデザイン公開など、サプライズも用意されていたイベントの様子を、会場を飾ったNISMOやAUTECHのクルマとともに紹介する。 -
NEW
第93回:ジャパンモビリティショー大総括!(その2) ―激論! 2025年の最優秀コンセプトカーはどれだ?―
2025.11.26カーデザイン曼荼羅盛況に終わった「ジャパンモビリティショー2025」を、デザイン視点で大総括! 会場を彩った百花繚乱のショーカーのなかで、「カーデザイン曼荼羅」の面々が思うイチオシの一台はどれか? 各メンバーの“推しグルマ”が、机上で激突する! -
NEW
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】
2025.11.26試乗記「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。 -
ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)【レビュー】
2025.11.25試乗記インドの巨人、ロイヤルエンフィールドの中型ロードスポーツ「ハンター350」に試乗。足まわりにドライブトレイン、インターフェイス類……と、各所に改良が加えられた王道のネイキッドは、ベーシックでありながら上質さも感じさせる一台に進化を遂げていた。
































