ベントレー・コンチネンタルGT(4WD/6AT)【短評(前編)】
ツイードジャケットを着たターミネーター(前編) 2005.12.09 試乗記 ベントレー・コンチネンタルGT(4WD/6AT) ……2145万円 1998年、フォルクスワーゲングループの傘下に入って生まれ変わった、高級ブランドベントレー。復活をかけてつくられた、4座の2ドアクーペ「コンチネンタルGT」に試乗した。販売台数は10倍に
自動車メディアに携わる人間の意識は、はっきりいって、一般ユーザーよりも遅れていると思う。最近それを実感したのが、ドイツ資本のもとで生まれ変わった英国車たちの評価だ。
「MINI」がBMWのもとで生まれ変わったとき、業界の評価はあまり芳しいものではなかったと記憶している。ところがフタを開けてみれば、このとおり。今回試乗した「ベントレー・コンチネンタルGT」もそうだ。「中身はVW(フォルクスワーゲン)だろ」とか陰口をたたかれながら、セールスは絶好調。ベントレー全体の販売台数は、たった1年で10倍(!)にもなったという。
でもそれは、ベントレーというブランドが俗化したことを意味するものではない。それをコンチネンタルGTに乗って、思い知らされた。
セキュリティポリスも付いている
『webCG』編集部でクルマを受け取り、すぐに夜の都内の雑踏に泳ぎ出した瞬間、まずはプレッシャーで押しつぶされそうになった。2000万円を越える価格がズシッとのしかかって、息が詰まる。他車を押しのけてでも前に出ようという運転などできず、逆に道を譲る始末。まわりのクルマよりもあきらかに格上なのに、それを活かしきれないもどかしさ。自分がオーナー失格であるという結論は、早々に下された。
ボディサイズは4815×1920×1400mmと、幅以外はそれほど大きくないのに、ウエストラインが高く、2重ガラスを使ったウインドーの丈は短めなので、かなりのボリュームに感じる。このあたりも演出なのだろうか。でも心配無用。ヒトやクルマがボディに近づくと、ピピピ……とアラームが鳴って教えてくれる。本来は障害物の接近を知らせるクリアランスソナーなのだが、脇を歩行者が通過しただけでも鳴る。危険を事前に察知して行動するSPみたいだ。
英国流のインテリア
30分ぐらい走ると、だいぶ気持ちに余裕が出てきた。信号待ちを利用して、インテリアを観察する。ウォールナットとレザーとアルミがおりなす、古式ゆかしい空間。ウッドパネルはインパネやドアトリムのみならず、ルーフコンソールにまでおごられる。徹底した仕立てだ。フロントシートのクッションはけっこう固く、左右のサポートは予想以上にタイト。シートバックはピシッと張っている。いままで経験した英国製高級車に通じる座り心地ではある。ただしドライビングポジションは、背筋をピンと立てたものではなく、グランドツアラーっぽいリラックスした姿勢になる。
ヒップポイントが深く落とし込まれたリアシートは、身長170cmの自分が前後に座っても、ひざの前には余裕が残るが、頭はリアウィンドウにぶつかってしまう。つまり2+2。なのにルーフにはフロントと同じように、ウォールナットパネルがベースのマップランプがついている。ふとセンターコンソールまわりに目をやると、オレンジの小さな光の粒が、あちこちに転がっていた。ルームミラーに仕込まれた照明が、淡く照らしていたのだ。スポットランプはフワッと点いて、フワッと消える。反対側を見ると、ドアオープナーが白い間接照明で浮かび上がっている。なにもかもが控えめ。このあたりの流儀は、完全に英国流だ。
(後編へつづく)
(文=森口将之/写真=荒川正幸/2005年12月)
・ベントレー・コンチネンタルGT(4WD/6AT)【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017547.html

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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