トヨタ・プリウスGツーリングセレクション・レザーパッケージ(FF/CVT)【試乗速報】
レオ様も乗るんだから 2005.11.16 試乗記 トヨタ・プリウスGツーリングセレクション・レザーパッケージ(FF/CVT) ……343万1400円 元祖ハイブリッドカー「プリウス」がマイナーチェンジを受けた。とはいえ、心臓部のハイブリッドシステムには手が加えられていない。いったい、何が変わったのか。
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ダメでしたね
乗り始めて、すぐに違いがわかった。ステアリングフィールがぴしっとして、不自然さがなくなった。中心付近の曖昧な領域が消え去っている。ボディ全体がしっかりした感じで、いやなバタツキがない。
驚くほどの変わりようだったが、それで感心したわけではない。なにしろ、比較した対象は、編集部に2年前からあって5万キロ近く走行したプリウスなのだ。まっさらの新車なんだから、良くて当たり前である。編集部のクルマも、新車当時はぴしっとしていたはずだ。
ところが、エンジニアに話を伺うと、あっさりこういわれた。「いいえ、旧型のハンドリングはダメでしたね」。あらあら。開発陣もわかっていて、なんとかしなくてはいけないと思っていたのだとか。2代目プリウスがデビューした時は、「エコだけどスピードが出る」ということがテーマになっていた。だから、乗り心地やステアリングフィールはどちらかというと優先順位が低かったのかもしれない。
ハイブリッドもプレミアム
そんなわけで、このマイチェンではボディの補強による剛性向上、サスペンションのチューニングなどで、乗り心地や操安性を高めることに力が注がれたのだ。地味な作業ではあるが、製品に反映するとなると製作ラインに大幅な変更を施さねばならないわけで、社内的にはいろいろ大変だったらしい。最初からやっておけばよかったのに、なんて言わずに、この改良は素直に評価したい。
乗ってすぐにわかった違いは、実はほかにもある。インパネやドアトリムを触ると、しっとりと柔らかいのだ。カリカリと乾いた感触だった旧型に比べ、高級感は目に見えて向上した。そういえば、最近モデルチェンジした「シビック」でも同じようにソフトパッド化が施されていた。このあたりのクラスでもある程度の質感が当然のように要求される時代になったということなのだろう。
シートの表皮にはアルカンターラが採用され、これも高級感向上に寄与している。それだけではない。上級グレードである「G」に新しく設定された「ツーリングセレクション・レザーパッケージ」のシートは本革である。ハイブリッドも、プレミアムの波は及んできたのだ。お値段も325万5000円という堂々たるものだ。
エコも、リュクスも
プリウスなのに、肝心のハイブリッドについて何も触れていなかった。実は、書くことがない。モーター、バッテリーを含め、何も変わっていないのだ。2006年には「レクサス」ブランドから「GS」のハイブリッド版が登場することになっており、トヨタ全体として開発はいろいろな部分で進めているはずである。しかし、プリウスに関しては新たな技術は盛り込まれていない。
今や、ハイブリッドといってもそれだけでは誰も驚かない。プリウスは、普通のクルマになったのだ。だから、商品価値を上げるためには、快適さや豪華さが重要なポイントになってくる。「クラウン」に乗っていたユーザーが、リタイアしてからプリウスに乗り換える、というようなケースも増えているという。アメリカじゃ、レオナルド・ディカプリオをはじめとするセレブな人たちのあいだで人気だ。エコも大事だけどリュクスもね、という流れは自然なのだろう。
これまでは事実上対抗馬がいない状態だったが、新しい「シビックハイブリッド」の登場でプリウスも安閑とはしていられなくなってきた。競争があれば、品質は向上するはずだ。両者が切磋琢磨することで、いいクルマが生まれることを期待したい。もちろん、快適装備だけでなく、エコ技術でしのぎを削ってほしい。
(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2005年11月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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