アウディA6シリーズ【海外試乗記】
断然A6 2004.05.13 試乗記 アウディA6シリーズ アウディのアッパーミドルクラス「A6」のニューモデルが、2004年のジュネーブショーで発表された。上下に分かたれたグリルを合体させ、押しの強いフロントマスクを手に入れた新型に、自動車ジャーナリストの生方聡がイタリアで乗った。本格的“シングルフレーム”時代の幕開け
迫力である。強烈である。新型「アウディA6」のフロントマスクは、これまでの“エレガント”“控えめ”路線から、押しの強いデザインに一変した。
“シングルフレーム”と呼ばれるフロントグリルが、これからのアウディの顔になる。フロントバンパーを挟んで上下にメッキフレームを配した“ダブルグリル”が、ここ数年アウディが推し進めてきた迫力増強策だった。それに飽き足らない彼らは、上下のフレームをひとつの大きなフレーム=シングルフレームへと進化させることにより、その存在感を高めようと考えた。そして、「パイクスピーククワトロ」「ヌヴォラーリクワトロ」といったショーモデル、あるいは、「A8」の最上級モデル「A8 6.0クワトロ」にシングルフレームを与えることで、アウディデザインを新たなステップに導いてきた。
案の定、シングルフレームが新型A6に採用され、骨太でスポーティなアウディの本質を、表情でも訴えようという動きが本格化した。それにしてもA6は、ことデザインに関して、話題となるクルマである。先代A6サルーンを思い浮かべてほしい。弧を描くようなラインのルーフに丸みを帯びたトランクリッドのデザインが、あまりにエレガントで惚れ惚れしたものだ。
が、新型A6のエクステリアデザインをとりまとめた日本人デザイナー和田智氏によれば、旧A6は「UFOみたいだった」という。「素晴らしいデザインだけど、人間からすこし遠い存在」だったという意味だ。そこで今回は「より人に近い感覚でデザインした」らしい。なるほど。
リアのあたりは素っ気ないほどスッキリしている。将来登場するはずのステーションワゴン「アバント」のことを考えると、リアよりフロントに個性を与えたほうが得策なのだろう。
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サイズも立派になった
堂々としているのはフロントマスクだけではない。ボディサイズも堂々たるものだ。新型A6のボディは、全長4916×全幅1855×全高1459mm、ホイールベースが2843mm。これは旧型に比べて全長で約120mm、全幅で45mmの拡大だ。ホイールベースも83mm伸びたことになる。その理由は、室内空間の拡大と安全性の向上にあるというが、そろそろ手に余るサイズになりつつある。実際、今回試乗会が開かれたイタリアのコモ湖周辺は、道が狭く、そのわりに交通量が多いため、運転には気を遣う場面にしばしば遭遇した。
ただ、ボディの大きさとは裏腹に、きびきび走るのが不幸中の(?)幸いだった。フロントに4リンク、リアが“トロペゾイダル”と呼ばれるダブルウィッシュボーンのサスペンションが、軽快なハンドリングと乗り心地のよさを実現するのだ。
ノーズに縦置きされるエンジンは、4.2リッターV8を筆頭に、3.2リッターV6、2.4リッターV6の3つがガソリンエンジン。ディーゼルエンジンは、3.2リッターV6と2リッターV6というラインナップだ。日本市場に導入が予定されるのは、4.2、3.2、2.4のガソリンエンジン。
4.2リッターと3.2リッターはフルタイム4WDの「クワトロ」仕様で、6段オートマチックが組み合わされる。一方、2.4リッターは無段変速の「マルチトロニック」との組み合わせだ。
ラインナップの中核をなす3.2リッターと2.4リッターは、いずれもバンク角90度の新設計V6で、5バルブではなくオーソドックスな4バルブヘッドを採用する。3.2リッター V6は直噴ガソリンエンジン(FSI)だ。
ちなみに、旧型では「アウディA4」やA6と足まわりの基本構成をともにする「フォルクスワーゲン・パサート」だが、次期型ではエンジンが横置きになるとのウワサがあり、アウディとは別の路線を歩みそうだ。
走りのクオリティも向上
そんなA6のステアリングを握って実感したのは、一段とレベルアップした走りのクオリティである。
従来型でも十分に快適な乗り心地を示したA6だが、新型では高速走行時のフラット感が加わって、ハイスピードでのクルージングがさらに快適になった。ボディ剛性のアップやサスペンションの改良により、スタビリティの高さも申し分ない。2005年にはエアサスペンション仕様が追加されるはずだが、この機械式のサスペンションでも十分といえる。
新開発の3.2リッターV6「FSI」エンジンは、最高出力255ps/6500rpm、最大トルク33.7kgm/3250rpmのスペックを持ち、実際、2000rpm以下から豊かなトルクを発生。フラットなトルク特性のおかげで、どの回転域でも頼りになる印象である。
4.2リッターV8はこれに輪をかけて力強く、迫力のあるサウンドも手伝って、A6をスポーティに走らせるには格好のパワーユニットだが、個人的にはここまでの余裕が必要とは思わなかった。
2.4リッターV6は、177ps/6000rpm、23.5/3000−5000rpmの最高出力&最大トルクを発生するが、1.5トン強のボディに対してはさほど余裕は感じられず、試乗したマニュアルギアボックスとの組み合わせで、必要にして十分な性能であった。残念ながら試乗車にはマルチトロニック仕様がなかったが、おそらくこちらのほうが使い勝手はよいはずである。
短時間の試乗であったが、新型A6の完成度の高さを肌で感じることができた。試乗会直前に日本国内で乗ったA8もラクシャリーサルーンとしてはスポーティな印象だったが、このA6はさらにスポーティで運転が楽しい。自分でサルーンのステアリングを握るなら断然A6である。これなら近い将来姿をあらわすアバントにも期待できそうだ。
(文=生方聡/写真=アウディジャパン/2004年5月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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