アウディA6 55 TFSIクワトロSライン(4WD/7AT)
進化したマルチプレーヤー 2019.06.25 試乗記 アウディの上級モデル「A6」が5代目に進化。新しいプラットフォームとエンジン、そして48Vマイルドハイブリッド機構を備えた新型は、どのような走りを実現しているのか? まず日本に導入されたV6ユニットの上級グレード「55 TFSIクワトロ」で試した。上級ラインナップが出そろう
2018年の新型「A8」と新型「A7スポーツバック」導入に続いて、2019年3月、新型A6/A6アバントが日本上陸を果たした。これにより、新世代の上級“A”モデルが出そろったことになる。
このうち、A6/A6アバントとA7スポーツバックはセダン、ステーションワゴンと4ドアクーペという違いがあり、見た目の印象もかなり異なるが、実際は基本設計を共有する近しい間柄。それだけに、セダン、アバント、スポーツバックの3タイプのなかから、デザインやパッケージングで好みのモデルが選べるというのはうれしいことだ。そんな3台のなかから、プレステージ性の高さで選ばれているA6セダンを今回試した。
新型A6は、“C8”というコードネームで呼ばれることからもわかるように、初代「アウディ100」から数えて8世代目にあたるアウディのEセグメントモデルだ。4代目(C4)の途中で名称がA6に改められたため、最新モデルはA6としては5代目になる。ちなみに、“C6”こと3代目A6は、当時アウディに在籍していた日本人デザイナー和田 智さんの作品で、いまやアウディのシンボルである“シングルフレームグリル”を本格的に採用したのも、このC6型のA6からだった。
様変わりしたシングルフレームグリル
それだけに、ここ最近のA6のフロントマスクの変化は、シングルフレームグリルの進化の歴史ともいえる。実際、C6時代は下辺が短い台形だったが、C7では上の角が切り落とされた六角形に変更。そして、最新のC8ではより横長な形状に変わり、フロントマスクのシャープさを際立てるデザインへと変化している。
これにあわせて、エクステリア全体もシャープなイメージを強めたのが新型A6の特徴といえる。特に、前後フェンダーの上を走るくっきりとしたラインは、鳥肌が立つくらい印象的だ。これはアウディの歴史に名を刻む「アウディ・クワトロ」のイメージを受け継ぐもので、過去に敬意を払いながら、新しい形をつくりあげてきたデザイナーたちの思いが伝わってくる。
そのクリーンでシャープなイメージはインストゥルメントパネルのデザインにも反映されている。アウディは「MMI」と呼ばれるヒューマンインターフェイスにより、空調やオーディオなどのスイッチを極力減らしたシンプルなダッシュボードを実現してきたが、最新版では2階建てのタッチパネルによってさらにすっきりとしたデザインに進化させている。その見た目はA7スポーツバックとほぼ同じだが、室内空間のデザインは4ドアクーペのA7スポーツバックよりもスペース重視で、とくにより広い後席を望むなら、A6を選ぶことをお勧めする。
マイルドハイブリッドの強み
試乗車は、3リッターV6直噴ターボエンジンの3.0 TFSIを搭載する「A6 55 TFSIクワトロSライン」。名前だけでは、どのエンジンを搭載しているのかわかりにくくなってしまったのは残念だが、電気の時代がやってくることを考えると、排気量によらない新しいネーミングは理にかなっている。
従来の3.0 TFSIが過給器にスーパーチャージャーを用いていたのに対し、新型はツインスクロールターボ(ツインターボではない)を採用する。最高出力340ps(250kW)、最大トルク500Nm(51.0kgm)の3.0 TFSIは、余裕ある排気量も手伝って、1500rpmの手前あたりからすでに豊かなトルクを発生し、全長4950mm、車両重量1900kgの大きなボディーを軽々と前に推し進める。その軽快さに気を取られていると、ひとまわり小さいクルマを運転しているような錯覚を起こしてしまいそうだ。勢いよく加速したい場面でもこの3.0 TFSIエンジンはドライバーを裏切らない。フラットなトルク特性により、強力で伸びのある加速は6000rpm超まで続くのだ。
さらに新型A6のハイライトとして、この3.0 TFSIエンジンに48Vマイルドハイブリッドドライブ(MHEV)が組み合わされたことが挙げられる。それにより、55km/h以上で走行中にアクセルをオフにすると、条件が整えばエンジンが停止し、クルマが惰力走行(コースティング)を行うようになったほか、ブレーキを踏んで停止する場合には、従来よりも早めにエンジンを切るなどして燃料消費を抑えている。実際、試乗中も頻繁にコースティング中のエンジンオフが確認できたし、減速時には早い段階でエンジンが止まり、早々にアイドリングストップに入る。さらにエンジンの再スタートも、従来のアイドリングストップに比べると素早くスムーズである。
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今後のグレード展開にも期待
それだけだと、48V MHEVのメリットはわかりにくいかもしれないが、アイドリングストップ中でもエアコンが利くのは実に快適である。加えて、カタログなどではうたわれていないが、48V MHEVの発電用モーターが、加速時にエンジンを多少アシストしているようで、同じ3.0 TFSIエンジンを積む「SQ5」よりも、特に低回転でレスポンスが良いのはうれしい発見だった。
新型A6の走りは見た目ほどシャープ過ぎず、ダンピングコントロールサスペンションが装着される試乗車は、マイルドでフラットな乗り心地がこのクラスにふさわしい味付けといえるものだった。アウディ自慢のフルタイム4WD「クワトロ」は、相変わらず高速での安定感が抜群で、ロングドライブにはうってつけ。一方、可変ギアレシオのダイナミックステアリングと4輪操舵を組み合わせた「ダイナミックオールホイールステアリング」により、狭い場所での切り返しがラクにできるのも、このクルマの魅力である。
その中身を考えると、1000万円を超える価格は一概に高いとはいえないが、やはりもう少し手ごろなモデルもほしいところ。アウディ ジャパンによれば、2019年内には2リッター直列4気筒ターボの2.0 TFSIエンジンや、ディーゼルの2.0 TDIの導入を予定しているということなので、個人的にはスムーズでトルクあふれる2.0 TDIとクワトロの組み合わせでこのA6を試せる日がいまから楽しみである。
(文=生方 聡/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
アウディA6セダン55 TFSIクワトロSライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1885×1440mm
ホイールベース:2925mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:340ps(250kW)/5200-6400rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1370-4500rpm
タイヤ:(前)245/45R19 102Y/(後)245/45R19 102Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:12.3km/リッター(JC08モード)
価格:1006万円/テスト車=1131万円
オプション装備:オプションカラー<フロレットシルバーメタリック>(9万円)/パワーアシストパッケージ<電動チルト/テレスコピックステアリングコラム+パワークロージングドア>(16万円)/リアコンフォートパッケージ<リアシートヒーター+4ゾーンオートマチックデラックスエアコンディショナー+リアウィンドウサンブラインド+リアドアウィンドウサンブラインド>(30万円)/Bang & Olufsen 3Dサウンドシステム(18万円)/アシスタンスパッケージ<フロントクロストラフィックアシスト+サラウンドビューカメラ+カーブストーンアシスト+リアサイドエアバッグ+アダプティブウィンドウワイパー>(14万円)/ドライビングパッケージ<ダイナミックオールホイールステアリング+ダンピングコントロールサスペンション+ダイナミックステアリング>(38万円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:3359km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6)/高速道路(4)/山岳路(0)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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