第67回:花粉症はナゼ発症するのか〜答えは日光に〜(その4)(矢貫隆)
2005.09.21 クルマで登山第67回:花粉症はナゼ発症するのか〜答えは日光に〜(その4)(矢貫隆)
■花粉アレルギーの出現頻度に地域差
日光市内にある「小泉内科クリニック」を訪ねたことがある。
「前回で登場した、例の小泉院長ですね」
アレルギー専門医として知られる彼は、東大の内科医局員時代に派遣医師として日光市に赴いて以来、ずっと日光市に留まって医療活動を続けている。スギ花粉症アレルギーの調査に携わっているうちに30年が経ってしまったのだと言って彼は笑った。
小泉医師が初めてスギ花粉アレルギーに関する実態調査を実施したのは74年のこと。
「『その2』に書いた『日光地区における問診調査』ですね」
小泉先生は、調査結果のデータを示しながら僕にこう言った。
「疫学調査をしてみると、同じようにスギ花粉の飛散量があっても、交通量が少ない地域では花粉症に罹患している人が少ないという事実がわかってきた」
『メディカルトリビューン』に寄稿した彼の論文には次のような記述がある。
「84年の調査の際、花粉アレルギーの出現頻度に地域差があり、重要国道である日光杉並木周辺の住民に多発している傾向が認められ、日光地区のスギ花粉アレルギーの発生率は環境による差があり、花粉飛散以外に自動車排出物による影響を考えざるをえない結果を得た」
日本で最初の花粉症(ブタクサ花粉症)が発見される前年の60年(昭和35年)、日本の自動車保有台数は、バス、乗用車、貨物車を合わせて約120万台でしかなかったが、花粉症が激増傾向を示し始めていた70年(昭和45年)には10倍の1200万台にまで増え、80年には3000万台にまで達していたのである(現在は7500万台)。花粉症が急増しはじめた時期は、とりもなおさず“モータリゼーション”の時代だった。
という事実を踏まえたうえで、小泉先生が続ける。
「確かに自動車の数は増えていましたが、厳しい排ガス規制があったのも事実で、では、なぜなんだろうと考えた末に辿り着いたのがディーゼル排ガスでした。活性炭には『アジュバント作用』があるのは昔から知られていたし、だから『もしかしたら』と考えた」
A君、起きてるか?
「すいません、寝てました。ボクに構わず先を進めて下さい」(つづく)
(文=矢貫隆/2005年9月)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
-
最終回:“奇跡の山”、高尾山に迫る危機
その10:山に教わったこと(矢貫隆) 2007.6.1 自動車で通り過ぎて行くだけではわからない事実が山にはある。もちろんその事実は、ただ単に山に登ってきれいな景色を見ているだけではわからない。考えながら山に登ると、いろいろなことが見えてきて、山には教わることがたくさんあった。 -
第97回:“奇跡の山”、高尾山に迫る危機
その9:圏央道は必要なのか?(矢貫隆) 2007.5.28 摺差あたりの旧甲州街道を歩いてみると、頭上にいきなり巨大なジャンクションが姿を現す。不気味な光景だ。街道沿いには「高尾山死守」の看板が立ち、その横には、高尾山に向かって圏央道を建設するための仮の橋脚が建ち始めていた。 -
第95回:“奇跡の山”、高尾山に迫る危機
その7:高尾山の自然を守る市民の会(矢貫隆) 2007.5.21 「昔は静かな暮らしをしていたわけですが、この町の背後を中央線が通るようになり、やがて中央道も開通した。のどかな隠れ里のように見えて、実は大気汚染や騒音に苦しめられているんです。そして今度は圏央道」 -
第94回:“奇跡の山”、高尾山に迫る危機
その6:取り返しのつかない大きなダメージ(矢貫隆) 2007.5.18 圏央道建設のため、「奇跡の山」高尾山にトンネルを掘るというが、それは法隆寺の庭を貫いて道路をつくるようなものではないか。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。
