ポルシェ911カレラ4/カレラ4S【海外試乗記(後編)】
ある意味“理想的”(後編) 2005.06.29 試乗記 ポルシェ911カレラ4/カレラ4S ある意味“異端児”の4WD版「ポルシェ911カレラ4」シリーズ。だが、最新997型カレラ4に試乗した自動車ジャーナリストの河村康彦は、それと異なる印象を抱いた。目隠しされたらワカラナイ
(前回からの続き)
まずは19インチシューズが標準のカレラSで走り出す。理屈からすれば前輪駆動系の追加とリアボディ回りの拡幅で「55kgほど増えた」重量が、動力性能にすくなからずのマイナス影響を与えるはずである。が、現実にはそれはまったく無視できるレベルだった。というよりも、“目隠しテスト”をされたらその違いを言い当てられる人は皆無であるに違いない。
重量増をトラクション性能が補った、と見る向きもあろう。たが、クラッチの疲労を無視したレーシング・スタートは別として、常識的な範囲での舗装路上での急発進程度ではそのトラクション能力のアドバンテージは感じられなかった。もちろん、ウインタータイヤを履いて雪上でも踊り出てみればそこでの優勢は圧倒的ではあろうが。
“街乗り”レベルの走りでのフットワーク・テイストも、「後輪駆動モデルと変わるところはない」と表現できるものだ。嬉しいことに、リアタイヤのファット化によるコンフォート性への悪影響も皆無。そんなこんなで、ここでも“目隠しテスト”をやられたとしたら、駆動システムの違いを言い当てるのは困難だろう。
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差異は高速域にアリ
こうなると「それなら、さらなる対価と重量ハンディを背負って、4WDシステムを買うのは意味がないのではないか?」と言われかねないが……さにあらず。後輪駆動モデルとのテイストの違いが実感できるのは、走りのペースがある程度上がってからだ。直線主体のクルージングでも大小のコーナーが連続するワインディングでも、その差が明確に感じとれるようになる。
RWDと4WDモデルの大きな差は、橋梁の継ぎ目や路面アンジュレーションなどでの“いなし感”だ。前者がときにハッキリと、後輪を軸としたピッチング方向の動きを示すのに対し、4WDはこれを強く抑制する。視線の乱れが抑えられ前輪の接地性もより安定するから、リラックスしたクルージングには効果大だ。同様にコーナリングでも前輪接地性の安定感がRWDよりグッと高く、“曲がり”の安心感をおおいに高める。
タイトターンで前輪が路面に食い付く感触も、後輪駆動モデル以上。およそ50kg増加したという前軸重量が、フロントタイヤ・グリップの上昇に寄与している。ただし、ターンインでのノーズの動きの軽快感や、高速コーナリング時にアクセルワークで積極的なコーナリング・フォームを生み出せる自在度は、さすがにRWDには及ばず。このあたりに「911は“カレラ2に限る”」という声が沸き出る要因があることも、理解できる。
とはいえ、カレラ4シリーズはまさに、RRレイアウトのネガをなくして弱点を補完したモデル。ぼくにとって、また多くのヒトにとっても、ある意味“理想的なモデル”といえるかもしれない……。
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“標準車”の乗り味
ところで、今回の国際試乗会に用意されたテスト車の中に、貴重な(?)“PASMナシ”という標準状態のカレラ4(カレラ4Sには標準装着)を発見! さっそく試乗してみた。PASMは997型から採用された電子制御可変ダンパーシステムで、通常はオプション装着される。メーカーが用意する試乗車はあまたのオプションを装着するのが普通で、“素”のモデルをインプレッションできないことが多いのだ。
今回は987型「ボクスター」も含め、自身でも初めて“電子制御可変ダンパーなし”個体の走りをチェックできたので、その印象を最後にお伝えしたい。
動力性能は「後輪駆動のカレラに全く遜色なし」という感触。およそ70km/hを超えてからの快適性に関しても「“PASM”付きと同等」というポテンシャルを確認できた。
問題は、特に日本では多用域となる70〜80km/hまでの乗り味が、かなり硬いこと。「高速側でチューニングを行うと、低速側はどうしてもこうならざるを得なかった」というシナリオを想像させる。
結論としては、「自分で選ぶならやっぱりPASM付き」。コレも、今回のテストドライブで得られたひとつの収穫だった。
(文=河村康彦/写真=ポルシェ・ジャパン/2005年6月)
・ポルシェ911カレラ4/カレラ4S(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000016869.html

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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