スズキ・エスクード2.0XG(4AT)/2.7XS(5AT)【試乗速報】
ライト感が身上の本格派 2005.06.01 試乗記 スズキ・エスクード2.0XG(4AT)/2.7XS(5AT) ……220万5000円/252万円 アーバンヨンクの先駆け「スズキ・エスクード」が3代目に進化。乗用車的な構造を手に入れた新型だが、別冊CG編集室の道田宣和はオフロードを走って……。大きさのわりに軽い
言葉はときに独り歩きする。日本では猫も杓子も“ミニバン”のひと括りだが、本来あれはアメリカで“フルサイズバン”と区別するための言葉のアヤだった。だからアストロやヴォイジャーはあんなに大きいのだし、逆に「ワゴンR」を名乗るに到ってはなんだか鼻白む思いである。
その一方、新型「エスクード」が属する“コンパクトSUV”は言い得て妙だ。今や幅の広さに関してはかつての「Sクラス」並みだが、乗ってみると小型セダンのような軽快感が快く、よりヘビーな「トヨタ・ランドクルーザー」や「日産・サファリ」に比べて気安さは明白だ。しかも、ラフロードでもよく走る。ただし、“アーバン4WD”はあまりに自家撞着だから止した方がいいと思うが。
実際、ニューエスクードはボディサイズのわりにかなり軽い。全長×全幅×全高=4390×1810×1695mmまで大型化したボディは、弟分のスイフトにも似た直線主体の造形が功を奏してか見た目にもスッキリしているが、構造的にもこれまでとは一新。セパレートフレームを廃してモノコック一体式のビルトインフレームやクロスメンバーで代用し、軽量化に役立てている。
コスト・パフォーマンス抜群
ところが、メカニズムの面ではむしろ重量増を招きがちなスペックの高度化が広範囲に実施されている。縦置きエンジンと組み合わされる4WDシステムは従来のパートタイムから一挙にセンターLSD付きのフルタイムに進化。サスペンションは前後ともサブフレーム付きで、なかでもリアは複雑なアーム構成のマルチリンクへと大幅にグレードアップした。それでもなお、車重は1500〜1600kg台に収まっているのだから、スズキお得意の徹底したコスト管理とともに、軽量化はひとつのマジックと言えるかもしれない。
エンジンは基本的にキャリーオーバーの2リッター4気筒と2.7リッターV6だが、いずれもブロック以外は新設計とのこと。2リッターは145ps/6000rpmと19.7mkg/4000rpmを、2.7リッターは184ps/6000rpmと25.5mkg/4500rpmを発生する。ギアボックスは前者が5MTと4ATの2種から選べるが、後者は5ATのみ。安全面では、というよりもこの車の場合は低ミュー路でのスタビリティにも大いに貢献するはずだが、ダイムラー・クライスラー特許の本格的なESP(車両走行安定補助システム)が初めてV6モデルに導入された。
余談ながら、カーナビゲーション利用の情報サービスは日産の運営になる「カーウイングス」陣営に与しており、そんなところにも「名を捨てて実を取る」メーカーのしたたかな姿勢が表れているようだ。
車種は下から2.0XE/5MT(194万2500円)、同4AT(204万7500円)、2.0XG/5MT(210万円)、同4AT(220万5000円)、2.7XS(5AT/252万円)の5種。フルオートエアコンや前2席用のシートヒーターがシリーズ全車に備わるところなど、さすがはスズキというべきか、お買い得感が強い。XG以上にはディスチャージヘッドランプやキーレススタートシステムが加わり、XSではSRSフロントサイドエアバッグやカーテンエアバッグが標準で付く。
中途半端に背が高い
試乗会の舞台となったのは富士山西麓の朝霧高原。真夏のような陽差しの下、まずは2.0XG/4ATの撮影に取り掛かる。「パールホワイト2」なる真っ白なボディと黒基調のインテリアがコントラストを成し、目に眩しい。
乗車してみると、この手のクルマとしては例外的に短いフロントオーバーハングが象徴しているように、とても乗用車的だ。フロア高やヒップポイントの高さは充分なロードクリアランス(200mm)と乗降性の折り合いを勘案したものだというが、いわゆる「見切りドア」でステップがないこともあって、正直言ってこれは中途半端に背が高い。なぜかXSだけに用意される運転席のアシストグリップが欲しかった。
シートのできはなかなか良い。形状もそうだが、ザックリしたファブリックの感触が何かに似ているなと思ったら、グローバルカーとしての造り込みが高い評価を呼んでいる「スイフト」のものと同じだという。室内は全体にスッキリしたデザインで統一され、樹脂の質感も高く、気持ちがいい。居住空間そのものも後席を含めてこれといった不満はない。
強いて言えば、これまた乗用車の雰囲気を狙ったためか、ステアリングリムとスポークの間から垣間見る感じの3連メーターがかえって確認しづらく、本来の目的を達成していないように思われたこと。2連でいいからもっと単純な大径のものに替えるべきだろう。
軽さと余裕
足まわりは乗り心地とハンドリングのバランスが好適な感じで、剛性の高いボディと相まって全体にしっかりした印象を与える。ステアリングはコンベンショナルなハイドローリックアシストで、そのせいか操舵感はナチュラルである。ブレーキは後ろがドラムながら動力性能相応の効きを示した。
2リッター4気筒と2.7リッターV6モデル、一番の違いはやはりエンジンとそれに付随したハンドリングの微妙な差である。ひとことで言えば“軽快さがウリの4気筒”と“余裕のV6”ということになろうか。4気筒は低速こそピックアップが良く、いかにもキビキビした動きを見せるものの、やはり絶対的なパワーが限られているせいかトップエンドでは一転して苦しくなる。その代わりにノーズの軽さは明々白々で、エスクード本来の軽快感が一層際立つのは間違いない。
それに対してV6は回転域全域でゆとりがあり、かつ静粛なのがいかにも今風のSUVだ。オートマチックも単に段数が多いだけでなく(当然、スムーズさはこちらが上)、あまり引っ張る必要がないため変速ショックそのものが小さい。その反面、あくまで4気筒モデルと比較しての話だが、コーナリングではターンインが若干シャープさを欠く。トータルでどちらがいいかは結構迷うところかもしれない。
予想以上の踏破性
せっかくの4WDだもの、ラフでも試してみたいと思うのが人情というもの。幸い、メインの試乗会場からほど遠からぬ「富士ヶ嶺オフロードコース」がそのためのゲレンデとして用意され、実力の一端を知ることができた。結論から言えば、嬉しいことに事前の予想は見事に覆され、本格的なクロスカントリービークルとしても充分な性能を有していることが確認された。
エスクードは初代登場の時点でメーカー自ら“アーバン4WD”を標榜し、実際それなりの踏破性しか持ち合わせていなかったものだが、ますますその傾向を強めたはずの新型がむしろ逆にポテンシャルを高めているのは意外だった。
ポイントはいくつかある。その筆頭はカム式LSDと呼ばれるセンターデフロックが実に効果的なこと。たとえばモーグルで1輪ないし2輪が浮いても一瞬の空転の後、残りの駆動輪が確実にトラクションを伝え、容易に脱出できるのだ。しかも、たとえ不用意に大きな舵角を与えたままでも、まるで意に介さず平然と前進するのには驚いた。いうまでもなく、ただでさえスリッパリーなうえにスクラブ抵抗が増すため、普通なら立ち往生するのが関の山だからである。
サスペンションの変更によるストロークの増加も見逃せない。フロントはバンプ側105mm、リバウンド側73mmで計178mmと10mm長くなり、リアはさらにそれぞれ125mm、90mmで計215mmと30mm増加した。むろん、路面に対する追随性が向上しているのである。ただし、それだけでもない。踏破性の決め手はそうした個々の数字もさることながら、実のところそれらを有効に作用させるためのファンダメンタルズ、すなわちホイールベースやトレッド、そして重量配分やタイヤ、1輪当たりの荷重等々といった基本的な要件がバランスよく整っていることが重要なのだ。多分その点が従来モデルとかなり異なるところなのだろう。
いずれにしろ、オフロードをこんなに愉しめるエスクードはこれが初めて。大きな収穫と言えた。
(文=道田宣和/写真=峰 昌宏(M)・荒川正幸(A)/2005年5月)

道田 宣和
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