トヨタ・クルーガー・ハイブリッド“Gパッケージ”(CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・クルーガー・ハイブリッド“Gパッケージ”(CVT) 2005.04.13 試乗記 448万8750円 総合評価……★★★★★ 世界的に話題をまくトヨタのハイブリッドSUV「ハリアー/クルーガーハイブリッド」。スポーティなクルーガーハイブリッドの上級モデル“Gパッケージ”に、自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。
![]() |
地味だが知的なSUV
SUVのハイブリッド車というコンセプトそのものに、まずフルマークの★5つが与えられる。大型重量車に乗ると減速時のエネルギーロスを痛感するが、これはその慣性を利して充電しエネルギーを蓄えてしまう。その電気を利用する加速性能もまた驚異的なレベルにある。優に5リッターエンジン搭載車を抜く加速感だ。ターンパイク上りの追い越し加速などは、同行した「BMW 525ツーリング」や、2リッターターボを積む「アウディA4アバント 2.0Tクワトロ」を凌ぐ勢いだった。
そんな走り方をしても燃料消費は1/3程度であろうから、これはもう快挙といえる。プリウスのような軽量車よりもむしろこうした重量級にこそハイブリッド技術は生かされよう。「E−Four」も前輪駆動とモーターによる後輪駆動のシンクロが巧妙で、加速はもとより減速や旋回時の安定性にも寄与している。ブランド力で威嚇する大型高級SUVに比べ、このハイブリッドSUVのなんと知的に思えることか。スタイリングは地味だが「ハリアー」と対比すると、むしろ長期間付き合える落ち着きを持つ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ハリアーハイブリッド」とともに、2005年3月22日発表されたハイブリッドSUV。「プリウス」の販売が好調でハイブリッドシステムの生産が追いつかず、発売が延期されていた。
搭載されるハイブリッドシステムは、プリウスのシステムを進化させた「THS II」。3.3リッターV6(211ps)エンジンに、フロントモーター(167ps)とリアモーター(68ps)を組み合わせ、システム最高で272psの最高出力を発生する。モーターのトルクを増幅するという役割を持つ、新開発のリダクションギアや、288Vのバッテリーを650Vまで昇圧する可変電圧システムが用いられ、これによりフロントモーターはプリウス比で約2.4倍のパワーアップ。さらに同比81%の容積となる小型化も図られた。トランスミッションは燃費に寄与するCVTを組み合わせ、10・15モード燃費は17.8km/リッターを誇る。
駆動方式は、後輪をモーターで駆動する4WDシステム「E−Four」。これに加え、上級セダン「クラウンマジェスタ」と同様の「VDIM(ヴィークル・ダイナミクス・インテグレーテッド・マネージメント)」を採用し、安全でスポーティな走りが楽しめるという。
ハリアーハイブリッドは5人乗りだが、クルーガーは3列7人乗り。内外装や装備も、「プレミアム」なハリアーと「スポーティ」なクルーガーのイメージを踏襲し、差別化が図られる。
(グレード概要)
クルーガーハイブリッドのグレードは標準車と、装備を奢った“Gパッケージ”の2種類。Gパッケージは、運転席に電動ランバーサポートが備わるほか、サイド&カーテンエアバッグ、G-BOOK対応DVDナビゲーションシステムなどを標準装備する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ハイブリッドシステムの出力&回生を示す、200kW(約272ps)スケールのパワーメーターが圧巻。エネルギーモニターは車両状況に応じて逐一切り替わり、ハイブリッドシステムの情報を得るのに有効だ。ちなみに、表示される燃費は実燃費とそれほど違わない。センター部のマルチインフォーメーションディスプレイに表示されるので、皆で見て楽しめる。
(前席)……★★★
SUVらしく、高い視点による眺めは良好。シートそのものは腰部分のホールド感がやや甘いが、短時間ルーズに座るなら問題ない。サイドブレーキ2度踏みリリース方式は要改善。
(2列目)……★★★
高い視点により閉所に閉じ込められている窮屈な感じはない。シートサイズや空間的な余裕は十分あり、スライド量もまずまずだ。シートバックを前倒できるシートにしてはクッションの厚みもあるが、座り心地としてやや平板な感じはやむをえないところか。4WDとはいえプロペラシャフトがないので、フロアトンネルが張り出していないところはモーター駆動の利点。足下が広く、フラットで左右の移動もラクだ。
(3列目)……★★
3列7人乗りシートは、5人乗りのハリアーと大きく異なるトコロ。2列目を倒して乗り込む方式ゆえ乗降性は容易ではないが、クルマが大きいせいかそれほど難儀ではない。子供にとっては乗り込みより、むしろステップとなるフロアの高さの方が障害だろう。シートを畳めば完全フラットな荷室になるし、ワンタッチで起き上がる操作性は良好。常にフル乗車することは考えにくいから、アレンジしやすいのはありがたい。座面と背面はほぼ直角にセットされ窮屈ながら駅までの送迎程度ならば十分使える。
(荷室)……★★★
3列シートゆえ、純粋なトランク部分は見た目ほどではないが、それでもそこそこの広さはある。フロアはバンパー開口部からフラットで荷物の出し入れは容易。ハッチゲートはハリアーのそれより立っていて雨の日は傘となる。フロアー下に工具入れがあり、さらにアンダートレイには小物の収容も可能だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
標準車の1890kgという重量はこの手のクルマとしては軽いが、それにしてもフル加速は信じられないほど速い。電気モーターのアシストはターボ車より即攻的で強烈。とくに坂道での追い越しは驚異的にラクだ。それが暴力的に野蛮な感じではなく、洗練されていて痛快である。
E−Fourの4WDシステムも作動は滑らかで安定している。この動力性能と経済性だけで買っても価値ありだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
おおむね快適で安心できる操縦安定性を備える。ボディはしっかりと剛性は高く、タイヤのキャパシティも十分。相対的にサスペンションはやや華奢に感じられるが、4WDによる安定性やハイパワーによるトラクションに助けられて、この手の背が高く重い車にありがちな重心高の高さによる不安が割り引かれている。よって図体を省みず軽快に振り回せる感覚さえある。
(写真=峰昌宏/2005年4月)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2005年4月4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:1109km
タイヤ:(前)225/60R17 99H(後)同じ(いずれもダンロップSP SPORT 270)
オプション装備:ルーフレール+チルト&スライド電動ムーンルーフ(12万750円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:261.0km
使用燃料:29.3リッター
参考燃費:8.9km/リッター

笹目 二朗
-
MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.8 「MINIコンバーチブル」に「ジョンクーパーワークス」が登場。4人が乗れる小さなボディーにハイパワーエンジンを搭載。おまけ(ではないが)に屋根まで開く、まさに全部入りの豪華モデルだ。頭上に夏の終わりの空気を感じつつ、その仕上がりを試した。
-
ロイヤルエンフィールド・クラシック650(6MT)【レビュー】 2025.9.6 空冷2気筒エンジンを搭載した、名門ロイヤルエンフィールドの古くて新しいモーターサイクル「クラシック650」。ブランドのDNAを最も純粋に表現したという一台は、ゆっくり、ゆったり走って楽しい、余裕を持った大人のバイクに仕上がっていた。
-
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】 2025.9.4 24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスZ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.9.10試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジモデルが登場。一目で分かるのはデザイン変更だが、真に注目すべきはその乗り味の進化だ。特に初期型オーナーは「まさかここまで」と驚くに違いない。最上級グレード「Z」の4WDモデルを試す。 -
NEW
「日産GT-R」が生産終了 18年のモデルライフを支えた“人の力”
2025.9.10デイリーコラム2025年8月26日に「日産GT-R」の最後の一台が栃木工場を後にした。圧倒的な速さや独自のメカニズム、デビュー当初の異例の低価格など、18年ものモデルライフでありながら、話題には事欠かなかった。GT-Rを支えた人々の物語をお届けする。 -
NEW
第84回:ステランティスの3兄弟を総括する(その2) ―「フィアット600」からにじみ出るデザイナーの苦悩―
2025.9.10カーデザイン曼荼羅ステランティスの未来を担う、SUV 3兄弟のデザインを大総括! 2回目のお題は「フィアット600」である。共通プラットフォームをベースに、超人気車種「500」の顔をくっつけた同車だが、その仕上がりに、有識者はデザイナーの苦悩を感じ取ったのだった……。 -
スポーツカーの駆動方式はFRがベスト? FFや4WDではダメなのか?
2025.9.9あの多田哲哉のクルマQ&Aスポーツカーの話となると「やっぱりFR車に限る」と語るクルマ好きは多い。なぜそう考えられるのか? FFや4WDでは満足が得られないのか? 「86」や「GRスープラ」の生みの親である多田哲哉さんに聞いた。 -
ホンダ・レブル250 SエディションE-Clutch(6MT)【レビュー】
2025.9.9試乗記クラッチ操作はバイクにお任せ! ホンダ自慢の「E-Clutch」を搭載した「レブル250」に試乗。和製クルーザーの不動の人気モデルは、先進の自動クラッチシステムを得て、どんなマシンに進化したのか? まさに「鬼に金棒」な一台の走りを報告する。 -
MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル(FF/7AT)【試乗記】
2025.9.8試乗記「MINIコンバーチブル」に「ジョンクーパーワークス」が登場。4人が乗れる小さなボディーにハイパワーエンジンを搭載。おまけ(ではないが)に屋根まで開く、まさに全部入りの豪華モデルだ。頭上に夏の終わりの空気を感じつつ、その仕上がりを試した。