ボルボ XC90 V8(6AT)【海外試乗記】
「プレミアムのカギ」を手に入れた! 2005.02.02 試乗記 ボルボ XC90 V8(6AT) ボルボのSUV「XC90」に、待望のV8モデルが追加される。V8信仰の根強い北米を主なターゲットとし、「ヤマハ」が生産を行うユニットを搭載したのだ。自動車ジャーナリストの笹目二朗が、アリゾナで行われた国際試乗会から報告する。アメリカ市場に不可欠
「ボルボXC90」にV8エンジンが搭載された。V8エンジンは大排気量/高出力の象徴であるだけでなく、特別なイメージがある。搭載される車は高性能車や高級車に多く、あまたある自動車メーカーの中でも、V8をラインナップするメーカーは限られ、日本では2社しかない。プレミアムカー市場において、特にアメリカ市場にあっては、V8エンジン搭載車は営業要望でもあり、それはボルボファンにとっても待望のアイテムだ。
しかしV8エンジンを自社生産するのは簡単ではない。他社から借用してくるにしても、入れ物が小さくては入りきらない。特に、横置きにしてFFシャシーに搭載するとなると、コンパクトにまとめるには技術がいる。ボルボは日本の「ヤマハ」に目をつけ、磐田工場で生産を行い、当面は年間で1500ユニットの供給を受ける。
XC90のボンネットには、直列6気筒が納まっているので長さは大丈夫だが、幅が問題となる。そこで、ボルボはVバンクの角度を狭くした。通常V型8気筒エンジンは90度のバンク角を採るが、このV8は60度に狭めてある。当然このままでは不等間隔爆発となってしまうから、クランクシャフトをオフセットさせて等間隔爆発とし、その上で回転のアンバランスを補正するために、バランサーシャフトを倍速で逆転させて補っている。
6気筒ターボより軽い
V8エンジンの補器類を含めた外寸は長さ754mm 、幅635mm 、重さはこれまでの6気筒ターボより15kg軽い190kgと軽量コンパクトに仕上がっている。車両全体でも5座版で1982kgと軽く、ライバル車が軒並み2トンを超えているだけに、この点だけをとっても技術的に優れていることの証明であるし、走行性能すべてにわたって有利になることは言うまでもない。
組み合わされるギアボックスはアイシン6段ATで、基本構成は「PSA」などにも供給されている横置きユニット用と同じタイプと思われる。ギア比は特別なオフロード向きのものではなく、4〜6速がクロースしたどちらかといえば高速タイプである。
XC90の2005年モデルとしての改良点は、ごくわずかだ。ドアミラーのガラスは全車親水タイプになり、助手席側ミラーもワイドアングル化された。ワイパーブレードはフラットなタイプですっきり納められる。スペアタイアを持たないので、「タイヤリペアキット」と電動コンプレッサーが標準装備される。
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馬鹿力じゃなく、繊細
国際プレス試乗会は北米アリゾナ・フェニックスで行われた。外観を別仕立てに飾りつけなくとも、V8マークは水戸黄門の印籠にあたるし、テールに覗く2本のテールパイプからはタダのXC90ではないことがすぐ観てとれる。4.4リッターの排気量から発生するパワー/トルクは315ps/45.0kgm、パワーはあればあるだけ嬉しいのがこの世界の常識。低回転でドロドロ回るフツウのアメリカンV8とは違い、あれほどの馬鹿力は感じられないものの、このV8は緻密で繊細な回り方がいかにもクリーンで効率的な感じだ。
フェニックスの郊外に出れば、茶褐色の土とサボテンの緑が広がる荒野がどこまでも続く。ハイウェイでのXC90V8は、追い越しなどで5000rpm も回してやれば、プルルルーンという軽くのどかな快音を響かせて駈ける。一定速度でのクルージングでは無音に近い。6気筒ターボもパワー/トルクに不満はなかったが、パワーフィールはかなり違う。
歯切れの良さ、節度感が快感
米国にありがちな勾配を感じさせないような長い長い坂道では、負荷の高まりとともにシフトダウンされる。ターボの場合には負荷に応じて過給圧も上がるので、速度維持はシフトダウンによる部分と、ターボの恩恵に浴する部分とが渾然一体となり、何とはなしに底力を感じるが、自然給気V8の場合にはもっと歯切れが良く、ATのロックアップも効いており、節度感を伴ったスロットルレスポンスが心地良い。だから、言うなればスポーツカーのように敏感な加減速を行える。それも軽いとはいえ2トン弱の巨体、絶対的には重く、軽量車のようにピクンと車体が動くことはないし、ATのシフトも巧妙だからほとんどショックはない。タコメーターの針だけがスッと動く感覚は、一種の快感である。
このV8エンジンは、とりあえずはXC90にしか載らないが、供給が安定してくれば、S80はもとよりS60やV70にも拡大採用されることは十分に予想される。エンジンは車を構成するひとつのパーツに過ぎないが、この場合にはボルボ車(社)全体のイメージアップに大きく貢献している。ボルボは実にいいエンジンを手に入れた。日本への輸入時期は未定。
(文=笹目二朗/写真=ボルボカーズジャパン/2005年2月)

笹目 二朗
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