ボルボXC90ウルトラB5 AWD(4WD/8AT)
若いもんには負けん 2025.05.31 試乗記 モデルライフがついに10年を突破した、ボルボの最上級SUV「XC90」。ボルボはまだこのモデルに頑張ってもらうつもりのようだが、その商品力は今日でも通用するレベルにあるのか? マイナーチェンジを受けた最新モデルに試乗して確かめた。11年目の進化
ボルボのフラッグシップSUVであるXC90が2代目に生まれ変わったのは2015年のことで、すでにモデルライフは10年を超えている。ふつうならフルモデルチェンジしてもいいところだが、その魅力は色あせることなく、日本でも2024年の販売は1141台を数え、このクラスのSUVとしてはトップ10入りを果たしているというのには驚きだ。
それだけに、ボルボは大幅な改良でさらにモデルライフを延長したい考えで、日本でも2025年2月に最新版のXC90が発売になった(参照)。
改良の内容は後ほど触れるとして、ラインナップは2リッターガソリンターボエンジンを搭載する「XC90プラスB5 AWD」と「XC90ウルトラB5 AWD」、そして、プラグインハイブリッド車(PHEV)の「XC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド」だ。このクラスならディーゼルエンジン仕様が用意されていてもよさそうだが、ボルボはすでにディーゼル車の生産を終了。いっぽうガソリンエンジンについては、2020年にはすべてをマイルドハイブリッド化して、パワートレインの電動化をリードしてきた。
ボルボは2030年までに完全な電気自動車(BEV)メーカーになることを目指していたのだが、BEVの普及が遅れていることから、目標とする時期を先に延ばすことを表明している。BEVの投入計画に変更はないものの、PHEVやマイルドハイブリッド付きのガソリンエンジン車には、もうひと踏ん張りしてもらわないといけないわけだ。
まだまだいける
それにしても、ボルボの商品改良は大胆で、最近では「XC40リチャージ(現EX40)」の前輪駆動が、モデルサイクルの途中で後輪駆動に変更されたのには驚いた。それに比べると、今回XC90に施された改良はかわいいものだが、最新のボルボデザインにアップデートされた内外装を見ると、まだまだ現役で頑張れそうに思える。
特に印象的なのが、新しいデザインのフロントマスクで、ラジエーターグリル内の縦の太いバーを、スリムで細かい斜めのバーとすることで、BEVの「EX30」や「EX90」に近い雰囲気に仕上げたのが上手なところだ。“トールハンマー”と呼ばれるヘッドライトもシャープになって、全体的にすっきりとした表情がボルボのフラッグシップSUVにふさわしい上品さにつながっている。
上質なインテリアが自慢のボルボだけに、このXC90でも心地よさや落ち着きが感じられるのがうれしいところ。加えて、11.2インチの縦型タッチパネルに組み込まれたGoogleのインフォテインメントシステムも、操作性とデザインがうまくバランスされていて、なかなかの好印象である。
シートは、ウルトラグレードには本来ナッパレザーがおごられるが、試乗車にはオプション設定されるリサイクルポリエステルを使ったファブリックシートが装着されていた。ひと昔前とは正反対だが、レザーフリーやリサイクル素材を好む人にはうれしい選択肢だろう。
「B5」パワートレインにも改良の手が
XC90の改良はデザインだけにとどまらず、搭載される2リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンにも手が加えられている。カタログを見ると1968ccの排気量や250PSの最高出力は従来と同じだが、圧縮比が10.5から11.5に高められていることに気づく。これは、新しいエンジンでは吸気の際にインテークバルブを早閉じすることで、実際の圧縮比を膨張比よりも低めにする「ミラーサイクル」が採用されたためだ。さらにエンジン各部に改良を加えることで、WLTCモード燃費は11.4km/リッターから12.0km/リッターに向上している。
パワートレインも新しくなったXC90ウルトラB5 AWDでさっそく走りだすと、見かけによらず動き出しが軽く、低回転でもトルクには十分余裕がある。このエンジンには48Vマイルドハイブリッドシステムが組み込まれ、加速時にはスターター・ジェネレーターがアシストモーターとなってエンジンをサポートするおかげで、思いのほか力強い加速を見せてくれるのだ。低回転でもアクセルペダルの操作に素早く反応してくれるところも、気持ちのよい運転につながっている。そこからアクセルペダルを強く踏み込むと、6000rpmあたりまで勢いのいい加速が続く。アイドリングストップからのエンジン再始動がスムーズなのもいい。
燃費については、都内の一般道が8km/リッター台、高速道路では15km/リッター台といったところで、ボディーサイズを考えればなかなか優秀だ。
エアサスなしでも快適な乗り味
XC90ではグレードによりサスペンションの仕様が異なり、XC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッドには電子制御4輪エアサスペンションが標準で装備されるのに対して、XC90プラスB5 AWDとXC90ウルトラB5 AWDには、コイルスプリングのサスペンションが装備される。XC90ウルトラB5 AWDではオプションでエアサスペンションを選ぶことも可能だ。
今回の試乗車にはエアサスペンションは装備されていなかったが、B5 AWDのダンパーはFSD(周波数選択ダンピング)と呼ばれるもので、電子制御ではないものの、入力に応じて適切な減衰力が得られるのが見どころである。実際に運転してみると、緩やかなピッチング(縦方向の動き)はあるものの、横揺れはよく抑えられているし、コーナリング時にはロールはそれなりにするものの、背が高いクルマのわりに安定感がある。それでいて乗り心地は優しく快適で、これならオプションのエアサスペンションを選ばなくてもいいと思った。
ところで、XC90の特徴のひとつに、3列7人乗りシートの搭載が挙げられる。セカンドシートは前後調節とリクライニングが可能で広く快適だが、サードシートは大人が座るには足もとが窮屈。ここは子供用または“プラス2”と割り切ったほうがいい。ラゲッジスペースはサードシートを立てた状態でもある程度のスペースが確保されており、サードシートを収納すれば奥行きが130cm弱、さらにセカンドシートを畳めば190cm以上に広がるのが頼もしい。
こうした内容にもかかわらず、ライバルに比べて価格が低めに設定されるのもXC90の魅力で、XC90の息の長い人気はまだまだ続きそうだ。
(文=生方 聡/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力:ボルボ・カー・ジャパン)
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テスト車のデータ
ボルボXC90ウルトラB5 AWD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4955×1960×1775mm
ホイールベース:2985mm
車重:2130kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:250PS(184kW)/5400-5700rpm
エンジン最大トルク:360N・m(36.7kgf・m)/2000-4500rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)/3000rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/2250rpm
タイヤ:(前)275/45R20 110V XL/(後)275/45R20 110V XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 SUV)
燃費:12.0km/リッター(WLTCモード)
価格:1099万円/テスト車=1156万7000円
オプション装備:ネイビー・ヘリンボーンウィーブ・テキスタイルシート+ライトアッシュ・ウッド・パネル(0円)/Bowers&Wilkinsハイフィディリティー・オーディオシステム<1410W、19スピーカー、サブウーファー付き>(45万円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー・スタンダード<工賃含む>(12万7000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:890km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:158.5km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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