第167回:人はなぜF1を見るのか?これはおそらく“音とメカとブランドの総合麻薬”である
2004.10.13 小沢コージの勢いまかせ!第167回:人はなぜF1を見るのか?これはおそらく“音とメカとブランドの総合麻薬”である
■ホント、疲れた
久々にF1日本グランプリを観てきました。ついぞ数年ぶりに。俺も“琢磨レーシング教”にハマりかけてるんでね。ついぞ数年ぶりに。結果的には琢磨様4位! 前半はバリバリ3位キープだったんでかなり残念だったけど、でも、琢磨様の攻撃オーラは走ってて十分に感じられたし、彼の教祖的資質は疑いがないと、勝手に解釈いたしました。
でもね、正直、結構ツラかったです。俺、本質的にレース観戦ってダメなのかもなぁ。特にF1。来年はTV観戦に切り替えさせていただくと思います。
というのも情けないハナシ、やっぱ大変なのだ。行き帰りの行程が。東京から名古屋で新幹線、名古屋から白子まで近鉄。それはよかったんだけど、白子からサーキットまでが大渋滞! そ、クルマじゃなくって人の列ね。タクシーもバスもどちらも行列が凄くって、とりあえず勢いでバスに並んじゃった
……だけど、約1時間ほど並んでました。
みんなエラいよなぁ。好きな人なら当たり前なんだろうけど、キレイに秩序正しく並んでます。俺はディズニーランドも嫌いだから、ほとんど行ったことないけど、F1も同じようなレベル。ま、実は行きの東京−名古屋間も約2時間ほど立ってたしね。台風明けで混んでたから。あ、そうそう。サーキット内のトイレでも並びまくり。それも男子トイレの小でね。正直、「鈴鹿、たいしたことないなぁ」って思っちゃいました。その後、トイレ行くのがヤでビール飲むのやめちゃったもんね。
でね、冷静かつ勝手に思うけど、みなさんホント、よく観に行くよね。俺の友達でも毎年行く男がいるけど、ほとほど感心いたします。今回、決勝日の観客は15万6000人だそうだから結構な人数。物凄い集客力だと思う。
それに、ここ3年間は琢磨様がいたからいいけど、これまではいなかったじゃない。それでも決勝日は常に15万人ぐらい集めてたわけでしょ。つくづくF1って凄いコンテンツだよね。
■非効率的な楽しみ
誤解を恐れずにいうけど、レースの生観戦ってドラマ的にはつまんないと思う。特に最近のF1はね。「同じところをグルグル回ってるだけ」って揶揄するつもりはないけど、抜きつ抜かれつがすくないうえ、観客席から観ててもドライバーの動きは見えないし、表情はもちろん、ドライビングから感情が伝わってくるシーンもすくない。電光掲示板を見なければ、ラップタイムはもちろん、スピードもピットストップタイムもわかりゃしないし、ヘタすると順位すらわからなくなるときだってある。正直、TV観戦で十分。っていうか逆に、TVの方がレースがよくわかる。
ラリージャパンでも感じたけど、実に非効率的なエンターテイメント。それに比べて、サッカー、野球などは全体の流れがわかるし、個々の選手も見られる。それぞれの表情もうかがえるし、試合時間はだいたい2〜3時間だし。レースの場合、予選だ、練習走行だ、なーんだかんだで一日ぐらい平気でつぶれるから、そこもツラい。金額的にも交通費、チケット代を考えると、お一人様10万円コース。うーん……。
![]() |
![]() |
![]() |
■ドラッグ的なモノ
だからさ。俺は勝手に思うけど、今のF1生観戦ってもはやドラマを楽しむモノじゃないのよね。もっと直感的なもの。人、メカ、ブランド、いろんな魅力が混ざった総合麻薬。そう考えると、あの女性観客の多さもうなずける。
特にF1の場合、あの音がキモな気がする。俺も音聞いた瞬間はさすがにボルテージ上がるもん。「ウォン、ウォン」ってのを聞いたとたん脈拍が上がってるような。いわばタバコや酒と同じ、多分にドラッグ的なものなのよ。おそらくあのときから、みなさんは集団催眠状態に入るんじゃないでしょうか。
ただ、正直俺ってさ、ブランドもメカもあんまり興味ないのよね。好きなのは人のバトル。だから今のF1は全然物足りない。逆に、バイクレースの最高峰、 WGPは飽きずに見られるもんね。ヴァレンティーノ・ロッシとか玉田とかビアッジとか、悪役善玉(?)いろいろいて非常に楽しい。
ってなわけで久々にF1の魅力について考えてしまいました。っていうか早く琢磨様優勝してくれ! そしたら絶対また観に行くぜ!! そう感じた日本GPでありました。
(文と写真=小沢コージ/2004年10月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。