トヨタ・カローララグゼール(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・カローララグゼール(4AT) 2004.10.11 試乗記 ……230万1600円 総合評価……★★★ 2004年4月27日にマイナーチェンジを受け、顔つきがキリッとした「カローラセダン」。最上級「ラグゼール」に、自動車ジャーナリストの河村康彦が乗った。豪華版ベーシックカーはどうなのか?
![]() |
カローラ恐るべし
世界140ヶ国以上で販売されている、まさに“ワールドワイドな”ブランドが「トヨタ・カローラ」。様々な地域に向けてきめ細かな仕様分けが行われているカローラの“日本仕様”が2004年4月27日にマイナーチェンジを受けた。
『webCG』編集部が用意してくれた新型セダンは、しかしボクの目にはあまりカローラらしく映らなかった。たしかに、ちょっとズングリムックリのプロポーションは、実用本位にまとめられたカローラらしい。だが、ちょっと離れて眺めてみると、そのルックスはなんとも無国籍で、いわゆる“無印良品”的な印象が残るのみ。
その原因が、どこかエスニック調でアジアンテイストをアピールする(?)フロントマスクにあると気づくまでに時間はかからなかった。そう、ヒカリモノを多用して飾られたフロントマスクが、ボクが(勝手に)イメージする“カローラ”の顔つきと、どうもそぐわなかったのだ。
テスト車は、最上級グレードの「LUXEL」。ちなみに、読みは「ルクセル」ではなく「ラグゼール」。ラグゼール専用のカタログに目を通してみると、そこには「豊かな気品をさりげなく漂わせ、クラスにとらわれない次の価値観へ……」云々と、ちょっとカローラの謳い文句とは思えない、くすぐったい言葉が並ぶ。
なるほど。そんな“特別なカローラ”だから、ルーフライニングもまるでバックスキン調の素材が奢られているのか……と触れてみたら、その質感がまるでダンボール紙に毛の生えたようなものだったことにビックリ。ま、普通であれば、誰もルーフライニングを撫でまわしたりはしないと思うけれど……。
加速は、予想よりずいぶん強力。ラグゼールの心臓1.8リッター直4のパワーは、132psもあるのだ。山道で“カローラらしからぬ”走りを試してみると、「意外にイケる」。ただし“行儀のよさ”は、あくまで日本での常用速度域に限られる。そんなところに、「一兆円企業」の凄さを見た気がする。カローラ恐るべし。トヨタ恐るべしなのだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年8月28日に発表された9代目「カローラ」。セダン、ワゴン「フィールダー」、ハッチバック「ランクス」(&「アレックス」)、ミニバン「スパシオ」でファミリーを構成する。
セダンのエンジンラインナップは、1.3リッター(87ps)、1.5リッター(110ps)、1.8リッター(132ps)の3種類(出力は、いずれもFF、AT車)。FF(前輪駆動)のほか、4WDも用意される。
2004年4月27日にマイナーチェンジを受け、セダン/ワゴンの場合、外観上ではフードやフェンダー、フロントグリルやパンパーなどにリデザインが施された。インテリアでは、ダッシュアッパーの意匠変更や加飾パネルの追加、スウェード調シート表皮の採用が新しい。1.8リッターモデルには、ボディのたわみをコントロールするパフォーマンスダンパーが前後に装着され、サスペンションはローダウン化された。
(グレード概要)
セダンは、ベーシック「X」、標準仕様「G」、豪華仕様「LUXEL(ラグゼール)」が基本グレード。ラグゼールは、フロントにエアスパッツが付き、ホイールキャップは金属調塗装される。ヘッドランプはディスチャージ式。フロントフォグが標準で付くのも最上級グレードならでは。内装では、オプティトロンメーターが装備され、シートはスウェード調モケット、ステアリングホイールは合皮巻き、リアシートは6:4の分割可倒式となる。オーディオのスピーカーは6スピーカーだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
イグニッションキー「ON」で、指針→目盛りの順で自発光して、プレミアム感を演出する「オプティトロンメーター」。中央部が盛り上がっていて、ユニークな立体感がある。最上級グレードらしく、合皮巻きステアリングホイールや木目調パネルが標準仕様。パワーウィンドウは、全席ワンタッチ式。空調はオートといたれりつくせり。フロントウィンドウはIR(赤外線)の透過を抑え、リアドア、バックガラスは、UVカット機能付きだ。
(前席)……★★★★
ラグゼールのシートは、スウェード調モケット表皮が標準仕様。質感はなかなか高い。ドライバーズシートは、8ウェイのパワー調整機構付きと、もはや“カローラの常識”を逸脱!? 前席はスペースもたっぷりしていて、もはや「これ以上、何を望むのか」という印象だ。
(後席)……★★★
4WDモデルも用意されるカローラ。センタートンネルが意外に大きい。さすがに3人がけはきついが、2人までなら空間的に文句ナシ。中央席にも高さ調節が可能なヘッドレストを備えるが、シートベルトは2点式となる。前席サイドエアバッグとのセットオプションとなるカーテンエアバッグ(6万3000円)は、後席乗員までをカバーする。
(荷室)……★★★
ヨンクモデルも設定されるためか、トランク上面が高いハイデッキスタイルを採るわりに、荷室の深さはいまひとつ。とはいえ、床面積はかなり広い。また、ラグゼールの後席は、6:4の分割可倒式となるので、実際の使い勝手は、ちょっとしたワゴン並だ。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
ラグゼールの加速は、予想していたよりずいぶん強力。連続可変バルブタイミング機構を備える1.8リッター「1ZZ-FE」ユニットは、最高出力132ps/6000rpm、最大トルク17.3kgm/4200rpmを発生する強心臓なのだ。車重は1.1トンだから、かなり贅沢。
ただ、たしかに強力加速は心地よいが、しかし気筒当たり450cc近い“大排気量”は、よいことばかりではない。燃費を意識してか、極限まで落とされた(タコメーター上ではおよそ600rpm)アイドリング時には、プルプルとちょっと気になる振動を伴う。そういえば、2500rpm付近から上では、アクセルペダルやステアリングホイールにエンジンの振動が伝わってきた。これなど、“普通のカローラ”では感じたことがない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ワインディングロードを、カローラには“似つかわしくない”と思えるペースでトバしてみると、このクルマは意外や意外、「なかなかイケル」フットワークの持ち主。感心させられたのは、タイヤが「185/70R14」と、現代としては“ショボい”サイズ(!?)にもかかわらず、気になるアンダーステアやオーバーステアをほとんど意識させない、素直なハンドリングだ。
さらに感心させられたのは、そんな“行儀のよさ”が、あくまで日本の常用スピード範囲内に限られるということ。タイヤのグリップをフルに横方向に使うような厳しいシーンになると、ラグゼールは、途端に狙ったラインをトレースしづらくなる。クルマの性能をフルに使うことがすくなくないヨーロッパではともかく、「“日本仕様”がそんなシチュエーションで使われることはまずないから、これでヨシ」ということなのだろう。ある意味、チューニングの妙といえようか。
(写真=清水健太/2004年10月)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2004年6月8日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:625km
タイヤ:(前)185/70R14 88H/(後)同じ
オプション装備:ブラインドコーナーモニター&音声ガイダンス機能付きバックガイドモニター(5万9850円)/VSC(ビークル・スタピリティ・コントロール)(6万8250円)/G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション(CD/MD一体型ラジオ&6スピーカー)&ガラスプリントTVアンテナ(26万8800円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:322.5km
使用燃料:25リッター
参考燃費:12.9km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.11 新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。
-
NEW
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】
2025.10.18試乗記「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。 -
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】
2025.10.17試乗記「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。 -
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する
2025.10.17デイリーコラム改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。 -
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。 -
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?
2025.10.16デイリーコラム季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。