ルノー・ルーテシアルノースポール2.0ルノーF1チームリミテッドエディション(5MT)【試乗記】
ロールに身を任せる 2004.08.13 試乗記 ルノー・ルーテシアルノースポール2.0ルノーF1チームリミテッドエディション(5MT) ……285.6万円 “曲がりやすい”「カービングスキー」に違和感をおぼえるという、自動車ジャーナリストの金子浩久。ルノーのホットハッチ「ルーテシアルノースポール2.0」に乗り、懐かしいスキー板のフィールを思い出した。スキーとルーテシア
シーズンはとっくに終わってしまったけれども、スキーの世界ではここ5〜6年の間に「カービングスキー革命」が進行している。
カービングスキーとは、スキー板の内部構造を従来のものから大幅に革新することによって、板の全長を短くし、すくない荷重移動でターンを終えることができるようにしたもの。そのメカニズムの詳細は、スキー専門誌を読んだり、プロショップで解説を聞いたりしたのだが、詳しいことは正直、よくわからなかった。
でも、4年前に購入し、毎シーズン履いてみたところ、たしかに、簡単に曲がる。でも、ターンの最中の微調整を受け付けてくれない。ターンのキッカケをつくるのはたやすく、失敗もすくないのだが、「0か1」のデジタル的な反応ばかり感じてしまう。
そこへ行くと、10年前に買って履いていた「ブリザード・コンプSL」というカービング以前の旧式スキー板はコントローラブルだった。あたかも自分の爪先と踵が前後に1メートルずつ伸びたかのように、自由自在にターンをコントロールできた。ターンの最中に細かく修正を加えることができたし、なによりもアナログな感覚が、刻々と変化する雪面を捉えるのに役立ってくれた。
おそらく、人によって好き嫌いが小さくなかった板だろうし、荷重移動をキチンと行わないと曲がらないという“古さ”はあったが、それもいまから考えれば、の話だ。コンプSLの新品がつくられているならば、来シーズン用に買いたいくらい気に入っている。
スキーのことを長々と書いたのは、「ルーテシアRS」のコーナリングの気持ちよさが、コンプSLとどこか共通することに気付いたからだ。
絶妙のロール
試乗したルーテシアRSの正式名称は、ちょっと長い。「ルノー・ルーテシアルノースポール2.0ルノーF1チームリミテッドエディション」という。
これまでのRSとの大きな違いはESP、リアスポイラー、専用エンブレムとグラブボックス上のシリアルプレートなどなどで、7万円高の285.6万円。
2リッター直列4気筒エンジンは、可変バルブタイミング機構を備え、169psを発生する。
最近では珍しい、ちょっと寝ている、ルーテシアRSのステアリングホイールを握り、背もたれを立たせ気味にしてコーナーに進入していくと、タイヤとサスペンションが踏ん張るより前に、絶妙のタイミングとスピードでボディがジワ〜ッとロールを始める。
世のほとんどのスポーツカー、スポーティカーではなるべくボディをロールさせまいとする方向性でシャシーとサスペンションが設計されているが、ルーテシアRSは正反対。「レーシングカーじゃないんだから、ロールは当たり前。だったら、積極的にロールを運転の楽しみや速さに転化できないか」というエンジニアの声が聞こえてきそうだ。
ロールも一様ではなくて、コーナリングスピードやコーナー径、ステアリングを切るタイミングと速さ、量などによって千変万化する。このアナログぶりが、コンプSLを思い起こさせた。
もちろん、ルーテシアのソフトで快い乗り心地が基本にあるから、コーナリングが気持ちいいという大前提がある。気持ちいいだけでなく、コーナリングを手の内に収めている感覚が強い。シャシーやタイヤの能力に任せきってコーナリングを行っているのではなく、ロールしたボディに身を任せながら、クルマと路面の状況を推し量って運転できる。そこが、ルーテシアRSのコーナリングの気持ちよさなのだと思う。
濃厚なコーナリング
同じ体験を、筆者はかつての「メガーヌ・クーペ」でもしたことがある。右に左に、大きくボディをロールさせながら箱根ターンパイクを駆け上がっていく快感は麻薬的で、何度もUターンを繰り返した。
この“ロールに身を任せる”快楽が、ちょっと昔のフランス車の魅力となっていたのだ。ルノーだけでなく、「プジョー205」や「505」、その前の「504」。最近なら、例外的に「406スポーツ」。ハイドロニューマチックであるかどうかを問わず、シトロエンは「2CV」「AX」「BX」「XM」。もちろん、「GS」や「CX」なども含まれる。
最近のメガーヌや「307」、「C2」などでは、かつての“フランス車らしさ”が薄らいでいる。それは、間違いない。でも、このルーテシアRSルノーF1チームリミテッドエディションには強く残っている。誰でも楽に滑れるが薄味のカービングスキーではなく、昔のコンプSLの濃厚な滑走感覚を思い出したのは、ルーテシアRSにも濃厚なコーナリング感覚が存在しているからだった。速いわけじゃないのに、これが楽しい。
……それにしても、フロントフェイスはもうちょっとどうにかならなかったのだろうか。これじゃ、虫だ。
(文=金子浩久/写真=郡大二郎/2004年8月)

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