トヨタ・クラウン【試乗記(前編)】
裸になった王様(前編) 2004.01.20 試乗記 トヨタ・クラウン 「ZERO CROWN」をキャッチフレーズに、「静から躍動への変革」を謳う12代目クラウン。トヨタ伝統のセダンは、どこへ向かうのか? 『webCG』コンテンツエディターのアオキが、プレス試乗会に参加した。トップ・オブ・トヨタ
やぶからぼうに聞いた。
−−国際戦略モデルであった「セルシオ」が国内でも定着したいま、「クラウン」が担う役割は何でしょう?
「セルシオとは、ボディの大きさも、エンジンも違うクルマですから……」
カメラマンに撮影されながら、新型「トヨタ・クラウン」の開発をとりまとめた加藤光久第1トヨタセンターエグゼクティブチーフエンジニアが、戸惑いながらお応えになる。
「(両者は)ただ大きさが違うというだけで、たとえて言えば、メルセデスベンツのSクラスとEクラスのような関係と言いましょうか」と続けた。クオリティに差はない、と。
リポーターとしては、クラウンが依然として−−北米市場用「セルシオ」、ショファードリブンの「センチュリー」を別として−−トヨタ社内で特別なポジションを得ていることを確認したかっただけなのだが。
−−それでは、クラウンは“小セルシオ”になってしまいませんか?
『webCG』記者のぶしつけな質問に、エグゼクティブチーフエンジニアは「えっ!?」と聞き直し、“小セルシオ”という単語を確認すると、おっしゃった。
「国内でもレクサスブランドが展開されますから、セルシオはそちらで、クラウンはトップ・オブ・トヨタに……」。
−−名実ともに復帰するわけですね。
この先の基礎
2004年1月16日、宮崎県で新型クラウンのプレス試乗会が開催された。あいにくの雨のなか、落ち着いたボディカラーにペイントされたニューモデルが並んでいる。
「日本独創」をテーマに、“お若くなった”スタイルを採る12代目。サイドビューの造形は、「書の勢い」だそう。先代より70mm延長された2850mmのホイールベースに、やはりひとまわり大きなボディ。前後とも短くなったオーバーハング(車輪より外側の部分)が、今風のスポーティを訴える。「ゼロ・クラウン」の広告コピー通り、まったく新しいプラットフォームに、長らく使われてきた直列6気筒をついに捨て、「V6+5/6段(!)AT」の動力系が載せられた。堅実なトヨタとしては、破格の(!?)フルモデルチェンジである。
「これまでは、シャシーをもう1回使う、エンジンとトランスミッションはこれまでのモノで我慢して、といった」開発を強いられてきた、と加藤さん。「ここまで一新されたのは、初めてじゃないですか?」と笑顔を見せる。
続いて、「世界に通ずるクラウン」をつくりたかったとエグゼクティブチーフエンジニア。「いままでは、輸入車と比較すると、“スタイリング”“走り”の面でいまひとつだね、という部分がありました」。その理由は、技術はあったのだが、数々の制約があって、じゅうぶんに活かせなかったからだという。しかしニュークラウンには、
「もてる技術をすべて投入しました」。
−−どうして今までできなかったことが、今回はできたんですか?
「それは、今度のクラウンが、これから先のトヨタのFR(後輪駆動)プラットフォームの基礎になるからですよ」と、加藤氏は即答する。
なるほど。新しいクラウンをもとに、上屋をとっかえひっかえ、「プログレ」や「マークII」「チェイサー」「クレスタ」、さらには「ブレビス」やら「ヴェロッサ」といった個性豊かなFRモデル群(の後継車)が登場するのだな。国内のやせ細ったセダンマーケットにおける、いかなるニッチをも許さない勢いで。
クラウンの強み
当面、クラウンのエンジンは2.5リッターと3リッター。モデルは、オーソドクスな「ロイヤル」と、スポーツサルーンを標榜する「アスリート」に大別される。顧客層の若返りを本格的に狙うため、しばらくは18インチホイールを標準で履き、ブロックメッシュのグリルをもち、控えめなリアスポイラーをトランクに生やした後者が、もっぱら脚光を浴びることになろう。
なお、3リッターのロイヤルサルーンは、四駆も用意される。
最初に乗ったのは、ロイヤルサルーンの最上級グレード「G」。撮影機材を載せるためにバタバタとドアを開け閉めしていて、「む!?」と思う。ガッシリした窓枠をもったドアは、パッキンの密閉性が高いためか、意識して閉めないといわゆる“半ドア”になる。「しっかりしたつくりだあ」と無意識のうちに思い、「少々古くさい評価基準かしらん」と可笑しくなる。クラウンを前にすると、なんかこう、他人の家にお邪魔するときのような、キチンとしなきゃいけない気まずさを感じますな。正統派セダンを前にした、だらしないリポーターの気後れといいましょうか。
試乗前に、愚問と知りつつ加藤さんにうかがった。
−−これからのセダンはどうなるんでしょう?
「セダンは、クルマの、高級車の基本型だと思います。ファーストクラスというのは、“ファースト”というだけに、最初に切り込んでいかないといけない。(自ら)ブームをつくらないと」。切り込んでいく相手は、もちろん現在のミニバンブームである。
「クラウンはド真ん中、王道を行かないといけないクルマなんです」と、トヨタのトップエンジニアは胸を張った。
ロイヤルシリーズのインパネまわりは、「グレー」と「アイボリー」の2種類。テスト車は前者。キーをひねるかわりに、インテリアにすんなり馴染んだスターターボタン(“レーシィ”という単語とは無縁だ)を押すと、6気筒エンジンに火が入る。車内を見まわして、われ知らずニンマリした。エグゼクティブエンジニアとの会話を思い出したからだ。
−−世界の強豪(競合)セダンと較べたとき、何がクラウンの強みになるんでしょう?
「つくりこみ、こだわり、スタイルのこまやかさ」と挙げた後、「仲居さんのような、というのが好きなんです」と加藤さんは笑う。「つかずはなれず、でしゃばらないサービスが」
−−おもてなしのココロですね。
雨つぶがルーフを軽く叩く。空調の風が吹いている。エアコンのブロワーが、あたかもお茶を運ぶカラクリ人形のように(?)、静かに首を振っている。右に、左に、右に、左に。
(後編につづく)
(写真=高橋信宏)
・トヨタ・クラウン【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000014684.html
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高橋 信宏
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