トヨタ・ブレビス【試乗記】
メルセデスとBMWの間 2002.12.30 試乗記 トヨタ・ブレビス Kazuo's FAST! Impressionの第3回目は、プログレの姉妹車にして、やや大きいトヨタ・ブレビス。2.5、3リッター直噴ストレート6を積んだFRセダンはどうなのか? さらに「メルセデスベンツ」「BMW]と比較すると……。会員コンテンツ「Contributions」より再録。Cクラスに近い
2001年6月4日にデビューしたトヨタ・ブレビス。トヨタ店向けに開発されたミディアムサイズのFRセダンは、プログレのプラットフォームを活用した単なるドメスティックな姉妹車ではなく、むしろ欧州テイストをもった、本格的なプレミアムサルーンになる可能性を秘めている。
2.5または3リッター直噴ストレート6を積むブレビスは、トヨタ自動車第1開発センターの奥平総一郎チーフエンジニアによって開発が進められた。奥平氏は、ブレビスだけでなく、“先輩”プログレの取りまとめ役でもある。ブレヴィスの開発にあたって、トヨタの伝統的な高級車「クラウン」と差別化することに心を砕いたという。 「クラウンから遠ざけることが、ブレビスに必要なコンセプトでした」(奥平)。つまり乗り心地だけのサルーンではなく、メルセデスやBMWのようなしっかりとした走りを実現したかったのだろう。当面は国内専用モデルであるとはいえ。
プレビスの全長は4.55m、全幅が1.72m、全高は1.46mである。ギリギリながら5ナンバー枠に収まるプログレに対し、こちらには3ナンバーがつく。パッケージングは、メルセデスのCクラスに近い。「全長を長くしないで、ホイールベースを長くする手法」を採った。つまり、タイヤのレイアウトをクルマの四隅に配置して、キャビンを拡大した。「ショートオーバーハング」&「キャブフォワード」である。ホイールベースは、クラウンと同じ2780mm(マークII、プログレとも同じ)。なお、ブレビスの最小回転半径は、5.1m。全長が20cm近く長く、最小回転半径5.3mのマークIIより取りまわしがいいのは、容易に想像がつく。
ハイスピード域が課題
トヨタは、直列6気筒というレイアウトのエンジンを大切にしている。日産は次期スカイラインにV6を載せるが、トヨタはまだストレート6にこだわる。トヨタと日産、どちらの“エンスー度”が高いかといえば、意外にもトヨタの方なのだ。
ブレビスには、2.5リッター(200ps/6000rpm、25.5kgm/3800rpm)と3リッター(220ps/5600rpm、30.0kgm/3600rpm)、2種類のエンジンが用意される。いずれも「超希薄燃焼による低燃費」をウリにする直噴エンジンで、トヨタ得意の可変バルブタイミングシステム「VVT-i」を搭載する。スムーズに回るし、振動も少ない上品なエンジンである。ただ、BMWのそれほどスポーティではないのが残念だ。
乗り心地は非常によい。静かで滑らかな走りには好感がもてる。低い速度での音や振動は、メルセデスやBMWより圧倒的にブレビスの方が抑えられる。路面のうねりに対するサスペンションのストローク感がしっかりあり、高いロードホールディング性を実現した。高速で走行しても姿勢変化は少ないし、安定性も申し分ない。これなら十分、国内の走行条件には耐えるだろう。
ただ、さらに速度を上げると、ステアリングがすこし頼りなく感じはじめる。0.5Gくらいの横Gから、ステアリングの正確性がやや低下する。ハイスピード域でのステアリング系の剛性が足りないのだ。もちろんクルマの安定性は確保されるし、最終的にはVSCが介入し、各輪個別にブレーキをかけてくれるので、安全面での問題はない。
メルセデスやBMWは低い速度域でのロードノイズが大きく感じられる反面、どんな走行でもステアリングの正確性は高いままだ。アウトバーンで育ったクルマは走りに妥協がない。ブレビスのステアリングの重さはメルセデスとBMWの間くらいだ。しかしステアリングから得るロードインフォメーションという点では、まだ及ばないところがある。今後の課題だ。
ブレビスはプログレの姉妹車であるが、開発時期が新しいだけにあらゆる点で進化している。マークIIより高級で、クラウンよりダイナミック。新生スカイラインのいいライバルになるだろう。
(文=清水和夫/写真=トヨタ自動車/2001年6月9日)

清水 和夫
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