トヨタ・ソアラ【試乗記】
熟していないリンゴ 2002.12.29 試乗記 トヨタ・ソアラ Kazuo's FAST! Impressionの第2回目は、トヨタの放つプレミアムカー、ソアラ。欧米ではレクサスSC430として販売される2+2クーペを、自動車ジャーナリストにしてレーシングドライバー、清水和夫はどう評価するのか。ソアラに乗って感じた疑問とは?会員コンテンツ「Contributions」より再録。ライバルはゴージャス
電動ハードトップをもつ美しい2+2クーペに孵化したこのクルマを、従来通り「ソアラ」と呼ぶのは惜しい気がする。ちなみに欧米では、トヨタの高級販売チャンネル「レクサス」のイメージリーダーとして、「SC430」の名が与えられる。
V8+5ATのドライブトレインをもち、FRスポーツサルーン「アリスト」のコンポーネンツを用いながら、みごとに電動格納式ルーフを実現したニューソアラ。この手のクルマは、開発にあたってデザインが優先されるものだが、今回に限っては、メタルトップに関するハードの図面が先行したといわれる。日米欧3つのデザインチームが、それぞれクルマに先立って完成したハードトップの機構を取り込めるボディスタイルを手がけ、最終的にヨーロッパ案が採用されたのだ。
ライバルは、ジャガーXK8コンバーチブル、ポルシェ911カブリオレ、そして今年の秋にデビューするとささやかれるニューメルセデスベンツSL。叶姉妹に似つかわしい、英独のゴージャスなクルマたちが相手となる。
隣に来たとき
これだけのライバルを相手にするのだから、並大抵のつくりでは許されない。実際の乗り味は、限りなくレクサスLS430(邦名セルシオ)に近い。ソフトでスムーズ。しかし、“スポーツカー”として感動するところはない。ジャガーにみられる「路面を包み込むようなしなやかな乗り心地」でもないし、ポルシェの「スキーのモーグルを連想させる強靱なダンピング」も感じられない。
ジャガーやポルシェと比較すると、「まだ熟されていないリンゴ」とでもいおうか。全体に“まだ青い”印象を受ける。しかし、トヨタが得意とする「つくり込みのよさ」「メカニズムの信頼性」「充実した装備」は、ライバルたちも驚くはずだ。本格的な“高級スポーツカー”としてはピカピカの一年生であることを考えると、 「よくやった」と誉めるべきだろう。
オプション装備として、パンクしても走れる「ランフラットタイヤ」を採用した。ブリヂストンのランフラットは、ミシュランがこだわる、ホイールと一体で機能するPAXシステムとは異なり、タイヤのサイドウォールの構造を硬くしてバンクに対処する。 そのため、このタイヤを履いたクルマは、乗り心地が若干スポイルされる。
約25秒で開閉を完了するメタルトップの精緻な動きはすばらしい。中川 泰チーフエンジニアは、「電動格納の時間はメルセデスSLKに負けてますが、ソアラの機構は寒暖を問わないので、気温の低い日なら勝てそうです」と笑っていた。
新型ソアラには、600.0万円のプライスタグが付く。クルマの内容を考えるとデフレ価格と思えるほどだ。問題は、ジャガーやポルシェはもとより、新しいメルセデスSLが隣に来たとき、「どんな気持ちになるのか?」だろう 。
(文=清水和夫/写真=トヨタ自動車/2001年5月24日)

清水 和夫
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