プジョー206SW XS&S16(4AT/5MT)【試乗記】
おしゃまさん 2002.10.09 試乗記 プジョー206SW XS&S16(4AT/5MT)……209.0/232.0万円 コンパクトなピ−プルムーバー「プジョー307SW」に続き、5人乗りワゴンながら「ブレーク」改め「SW」を名乗る「206SW」の正式輸入が始まった。ハコネで開かれたプレス試乗会で、webCG記者が乗った。
拡大
|
拡大
|
使い勝手がよさそう
2002年10月4日、プジョーのコンパクトワゴン「206SW」が日本市場にリリースされた。新しい206は「SW」の名をもつものの、先行して投入された3列7つの独立シートをもつ「プジョー307SW」とは異なり、コンベンショナルな2列シートの5人乗ワゴンである。SWのサブネームを使ったのは、従来の「ブレーク」以上に、広がりのある、多様なライフスタイルを感じさせたいということだろう。デビューは、2001年のフランクフルトショー。
兄貴分「307SW」が、ホイールベースを110mmストレッチ、そのうえでリアのオーバーハングも100mm延長したのと比較すると、弟分はハッチバックと同じ2440mmのホイールベースに、荷室部のみ195mm伸長した5ドアボディを載せる……、と聞くと、206SWの「SW」は「ショートワゴンかい」と憎まれ口のひとつも叩きたくなるが、ハッチゲイトを開けると、カタログ値313リッターのラゲッジスペースが広がる。「シトロエンC3」が305リッター、新型「日産キューブ」が307リッターだから、ワゴンといっても際だって広いわけではないが、サイドからの張り出しがすくないスクウェアな形状、重い荷物を引き出しやすいようフロアより一段下がったバンパーラインと、使い勝手はよさそうだ。そのうえ標準で備わるラゲッジネットは大きなものだから、手軽にネットの下に荷物を滑らせて、走行中に転がるのを防ぐことができる。
プジョー206SWは、ガラスハッチだけを開閉することも可能だ。駐車場でクルマ後方を大きく空けないですむ、という実利はむろんのこと、スタイリッシュなボディに似つかわしく、スマートに荷物を出し入れできる、といったことが、この種のライフスタイルワゴンには大切なのだ、と思う。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
チャームポイント
プジョージャポンのラインナップに加わった206SWは、2リッターの「S16」と、1.6リッター「XS」の2種類。トランスミッションは、前者が5段MTのみ、後者は5MTと4ATから選べる。ステアリングホイールの位置は、いずれも右。価格は、232.0万円と199.0/209.0万円となる。フォルクスワーゲン・ポロの5ドアが198.0万円だから、最近のプジョー車の例に漏れずガンバった値づけだ。5ドアハッチ「XTプレミアム」(199.5万円)を買おうと思っていたヒトは、わずか9.5万円を足すだけで、1.6リッターのワゴンが買える。もちろん、足さずにハッチバックを買ってもいいのだが。
206SWのボディサイズは、全長×全幅×全高=4030×1675×1475mm。ジャパニーズ・ショートワゴンこと「マツダ・ファミリアSワゴン」(4250mm)より、むしろ「デミオ」(3925mm)に近い大きさである。さえないセダンがワゴンになったとたん、やけにカッコよくなる例は少なくないが、ハッチからワゴンに転じた206SWの場合、「お転婆さん」(やや死語)が「おしゃまさん」(ほぼ死語)になった感じ。ハッチバックの“デザインが勝った”部分がいい案配にそがれて、個人的にはSWの方が好き。
大型フロントエアダム、Cピラーに埋め込まれたリアドアオープナー、ブラック塗装されたルーフレール、ハイマウントストップランプを内蔵したリアエンドスポイラー、そしてブーメラン型のリアコンビネーションランプがチャームポイントである。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
206シリーズの3割
短時間だが、「XS」(4AT)と「S16」(5MT)に乗ることができた。
「XS」のボディカラーは「アルミナムグレー」と名付けられたシルバーに近い色。シートは薄いベロア地で、優しいあたりとはうらはらに、座面、バックレストとも、サイドサポートがスポーティに張り出す。目の前のインストゥルメントパネルは、値段相応の質感だが、抑揚豊かな造形が楽しい。前席ダブルエアバッグに加え、サイドエアバッグも標準で装備される。
テスト車のタイヤサイズは「195/55R15」(Continental PremiumContact)。低速時のステアリングフィールは粘着質に重いが、速度が上がれば、走りもろとも手応えが自然になる。
1.6リッター直4ツインカム16バルブは、108ps/5800rpmの最高出力と15.0kgm/4000rpmの最大トルクを発生。ハッチバックより50kg増とヒトひとり分重い1150kgのボディだから、絶対的に速いわけではないが、元気よくまわるエンジン、ギアを選択しやすくジグザグに切られたATゲイト、そして強化された足まわりを活かして活発に走る……走っている気になる。スロットル操作がアクティブに挙動に反映されて、ドッタリした307より、よほどプジョーらしい(?)。ただ、荷物とヒトを満載して急な登り坂を行くとなると、ちょっとツラいかも。
「S16」は、ズッとスポーティだ。シートは、黒いレザーとグレーアルカンタラのコンビネーション。左手を伸ばすと、アルミのシフトノブがひんやり冷たい。計器類は、「XS」の黒地に対して、マットシルバーとなる。
2リッター直4DOHC16バルブのアウトプットは、最高出力137ps/6000rpm、最大トルク19.8kgm/4100rpm。ビンビン回る。「チャイナブルー」に塗られた206SWは、ハコネの険をものともせずに駆け上る。マニュアルトランスミッションゆえ、ウェイトは1.6のATより10kgながら軽い1140kg。ひとまわり大きな「205/45R06」(GoodYear Eagle F1)のタイヤを履いた足まわりはよく粘り、速いコーナリングを実現する。
惜しむらくは、シフトレバーのストロークが長いこと。3速に入れるときに、ちょっとシラける。フランス人は、腕が長いのかしらん。なお、セカンドのシンクロがあまり強くないので、S16は、乱暴なギアチャンジには異音を発して抗議する。運転手は反省する。ワゴンに乗っていることを、忘れてた。
プジョージャポンの広報担当者によると、S16は、日本では“スポーティなワゴン”というより“S16の5ドア版”との位置づけだそうだ。なるほど、わが国では、ハッチバックのS16は、3ドアしか用意されない。
今回導入されたSWは、206シリーズ中3割の販売台数を占めると予想される。もっと売れるんじゃないかな。S16は少々特殊なモデルだけれど、「XS」にせよ「S16」にせよ、お隣さんから(悪意なく)「趣味がいい」という評価を得ることが難しくないと思うから。
(文=webCGアオキ/写真=峰 昌宏/2002年10月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。


