プジョー206SW(4AT)【海外試乗記】
オジサンたちにも合うスポーツシューズ 2002.08.28 試乗記 プジョー206SW(4AT)日本でも人気が高いプジョーのコンパクトモデル「206」。軽快な「ハッチバック」、クーペ&カブリオレのボディを名前に示す「CC」に続いて、「SW」ことワゴンがラインナップに追加された。リアサスが強化され、ボディ後半が延長された206シリーズの最新モデルを、自動車ジャーナリストの笹目二朗がハード面から評価する。
足腰の強化
「プジョー206SW」は、今年(2002年)春のジュネーブショーでデビュー。発売が待たれていたモデルで、6月初旬にフランス南西部においてプレス試乗会が催された。
206SWは名前の通り、206をベースとしたステーションワゴンである。フランス流にブレークと呼ばないのは、「スポーツワゴン」あるいは「スペーシィワゴン」など、幅広い意味にイメージを広げさせたいためだという。多目的な用途に使えることをも暗示する。
写真でご覧のように、ボディはドアを含めて後半がデザイン変更されており、リア・オーバーハングをハッチモデルより19cm延長、全長は4.03mとなった。
このクラスのワゴンは、かさばるものを大量に積む目的こそないものの、手軽さゆえに重量物を積載される可能性は高い。そのため、、プジョーとしてはヘビーな使われ方も想定して、リア・サスペンションには本格的に手が加えられた。横置きトーションバーを使ったトレーリングアームはそのままに、太いパイプのクロスビームが左右独立して追加されている。これは両端がそれぞれ垂直/水平方向に可動なピボットをもち、横方向の力に対抗してトー剛性を上げる仕組みになっている。
206のワゴンは、本格的な貨商用車並に足腰を強化されてはいるものの、可愛らしいサイズゆえに、雰囲気やスタイリングで選ばれる車種でもあり、スポーティでカジュアルな装いも追求されている。
一番の「買い」
搭載されるエンジンは、ガソリンの「1.1リッター(60ps)」「1.4リッター(75ps)」「1.6リッター(109ps)」「2リッター(136ps)」の4種類。ディーゼルは「1.4リッター(68ps)」と「2リッター(90ps)」である。
フランス本国では1.6リッターにAT仕様がある以外、すべてのエンジンは5段MTと組み合わされる。年内秋頃に予定される日本への輸入は、もちろん「1.6リッター+4AT」になるだろう。
いざ走らせると、後部がすこし重く長くなり、リア・サスペンションの剛性がガッシリ上げられた結果、相対的に前輪が負けてアンダーステアは強くなった。これにより、206SWのスポーティな性格の一端を示す操縦安定性は、206CCやS16とはまたちょっと違った特性が与えられた。アンダーステアのFF車を、コーナーでスポーティに走らせるコツは、スロットルを戻してタックインさせるのがひとつと、そのまま舵角を切り増しスロットルをさらに踏み込んで強引に回る方法がある。いずれにせよ剛性感に溢れ、信頼に足るステアリングと、ヘビーデューティなサスペンションにより、タイアを苛める楽しみが味わえる。この辺の感覚は、ニュートラルステアであっけなく旋回する206CCとはまったく異なる。いずれにせよ、パワーを活かせるサスペンションをもつということで、滅法“速いクルマ”であることに変わりはない。
乗り心地は、プジョーに期待する通りの仕上がりだ。フラットで上下動が少ない点ではハッチバック206と同等、後輪の接地荷重が増えた分、どっしり落ち着いた感覚も増した。ロードノイズやハーシュネスの処理もまた不満無し。ハコ型ボディにありがちの、こもり音の発生も感じられない。実用的なワゴンにとって、実はこのあたりが一番の「買い」でもある。
使い勝手も万全
プジョーらしいスポーティな“走り”に加え、ワゴンゆえの使い勝手のよさも認められる。ガラスハッチと大きなバックドアは、それぞれ独立して開閉することができる。コンビニでの買い物など、小物の出し入れはガラスハッチだけを開ければいいので便利だ。フロアが延ばされた荷室は、リアシート背もたれまでの高さで313リッターの容量があり、天井まで積めば480リッターにもなる。そのうえリアシートを畳んでラゲッジルームを拡大すれば、ワゴンというより商用車なみの広大な空間が出現する。
アルミ押し出し材のルーフレールは、アクセサリーとして用意されている横バーを取り付けると、75kgの荷重にも耐える。いうまでもなく、見かけだけでなく実際に使える配慮がなされている。
プジョー206SWは小粋なスタイリングのみならず、スポーツカー並の操縦安定性が魅力だ。CCやハッチバックとも違ったキャラクターは、若者達だけでなく、元気なオジサンたちのスポーツシューズとしても最適。
(文=笹目二朗/写真=プジョージャポン/2002年8月)

笹目 二朗
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。


