MINIジョンクーパーワークスシリーズ サーキット試乗会【試乗記】
MT or AT お好きな方を 2013.02.05 試乗記 MINIジョンクーパーワークス ロードスター(FF/6AT)/ジョンクーパーワークス(FF/6MT)……519万9000円/500万9550円
ATモデルが追加された2013年の「MINIジョンクーパーワークス」シリーズ。どんどん増殖する「MINI」ファミリーのスポーツモデルをサーキットで試した。
名前はミニだが大家族
「MINI」の増殖が止まらない。「ハッチバック」「コンバーチブル」「クラブマン」「クーペ」「ロードスター」に加え、「クロスオーバー」にもハイパフォーマンスバージョンの「ジョンクーパーワークス(JCW)」を追加し、同時にJCWのすべてのエンジンを高効率の新型に切り替え、さらにATモデルを追加した。
インポーターは、次にクロスオーバーの3ドアバージョンたる「ペースマン」の日本導入を明言しているが、ペースマンにもJCWを設定するようだ。
MTとATを分ければ現時点で42モデル存在し、ペースマンシリーズが加われば50前後のミニが販売されることになる。
欧州にはさらにディーゼルモデルもあるわけで、名前はミニだが、『痛快!ビッグダディ』もびっくりの大家族だ。
今回は、JCWのみの試乗会。ATのロードスターとMTのハッチバックに、袖ヶ浦のサーキットと周辺の一般道で乗った。
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ATでも楽しめる
もちろん、ハッチバックほどではないが、「MINIロードスター」はドライバーが体感できるボディー剛性が高い。剛性確保に不利なオープンではあるが、2シーターなのでコンバーチブルほどボディーに大きな穴が開いていないというのもあるだろうが、JCW化に際し、その辺りの補強が施されているのだろう。「クーパーS」に比べて最高出力27ps、最大トルク2.0kgmのパワーアップをきちんと受け止めてくれる。
試乗日は断続的に雨が降っていた。当然、滑りやすいのだが、クルマの挙動をつかみやすいので、ドライバーは、あー滑り始めたなとすぐに感じることができる。具体的には、ぐるりと回る長いコーナー。ブレーキングしながらじわっと前輪を切り込んでクルマを内側へ向けようとする。クルマは素直に内を向く。ならばと次の周回で前回より速いスピードで進入するのだが、それでもオンザレールのまま。よーしと次でもっと速いスピードで進入すると、縦方向(ブレーキング)にグリップを使ってしまうので、横方向(コーナリング)のグリップ力が減り、切っても思うようにクルマが内を向かなくなる。と同時に、荷重を失ったリアがズリッと外へ出ることでクルマが内を向く。クルマがコーナー出口の方を向いたら、初めにじわっと、やがて最大まで加速する。その流れをはっきりとつかむことができて、非常に楽しい。
このサーキットでは、曲がるときに2速と3速をいったりきたりさせるのだが、今回JCWに初めて設定されたATは、操作に対してほぼ遅れなく変速してくれるので、走りやすい。近頃スポーティーなモデルにはデュアルクラッチトランスミッションが備わることが多いが、ミニのATはコンベンショナルなトルコン型でも楽しめる。ただ、引くとアップ、押すとダウンのパドルが左右両方に付いているスイッチは相変わらず慣れない。好みもあろうし、どれでも1台に長く乗っていれば慣れるんだろうが、僕はステアリングホイールと一緒に動かないパドル、それもホイールに沿って上下にできるだけ長いパドルを好む。
一番豪華で一番速いトップグレード
続いて、ハッチバック。こっちはMTだ。ハッチバックのデザインは2世代続けてほぼ同じで、ヒット車種だけに街で見る機会も本当に多いのだが、見飽きるということに対して耐性の強い、いいデザインだと思う。顔つきが顔つきなので、ノーマルではファニー系だが、JCWのように大きめのホイール&エアロパーツを装着した戦闘的なルックスもサマになる。
MTであることを除けば、パワートレインはロードスターと同じ。1260kgだったロードスターATに対し、MTハッチバックは1200kg。計測すればもろもろこっちのほうが速いだろうが、体感的には一緒。MTの操作が忙しい分、サーキットでは、より“やってる”気分を味わえるが、ATも望外に楽しめたので、JCWという最もスポーティーなモデルであっても、MT/ATは本当に好きな方を、事情が許すほうを買えばいいと思う。
JCWには、押すとスロットルのレスポンスが良くなる「スポーツボタン」がある。サーキットではこのモードが楽しい。また、BMW同様に横滑り防止装置の介入タイミングを遅らせるDTCモードも選べ、こっちもまたサーキットでは真価を発揮する。これはつまり少しの失敗を許すモードなので、逆にうまくコーナーをクリアできたときのうれしさを倍増させてくれるのだ。
ここまでJCWのスポーティーな部分について書いたが、JCWは先代も同じくらいパワーがあって、同じくらい楽しかった。けれど、一般道へ出ると、新型はやはり新型だなと思わせる。先代のJCWは一般道では乗り心地が硬くて我慢を強いられるクルマだった。新型も決して硬くなくはないのだが、段差などによる入力のドライバーへの伝わり方が格段にマイルドになった。あくまで“マイルド”で、クルマ全体が“ソフト”になったということではない。先代ではJCWはMINIのなかでもちょっと特殊なグレードだったが、新型はキットではなく完成車として売り出すだけあって、「ONE」「クーパー」「クーパーS」というヒエラルキーの一番上に、一番豪華で一番速いトップグレードとして素直に加えることができる。
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さらにチューンされた「GP」
長年それを求めてきたはずなのに、ここまで動力性能の高さと洗練された乗り心地をあっさり両立されてしまうと、「じゃじゃ馬っぷりが懐かしい」「乗り手が欠けたピースを補う楽しさが云々(うんぬん)」などと、まったく合理性のない情緒100%の感想を漏らしそうになる。まったく人間はわがままだ。が、冷静に同じタイミングで新旧を乗り比べれば、結局、ほぼ全員新型を選ぶはずだ。
ところで、ミニは好きだが、デートカーとしてもレベルの高いクルマに位置づけられるようなそつのなさ、いかにも「プレミアムハッチでござい!」感がイヤだという硬派の人は、2000台(日本割り当て200台)限定で「MINIジョンクーパーワークスGP」という、ほぼこのままワンメイクレースに用いるようなスパルタンモデルも発売されたので、これを選ぶといい。エンジンはさらにチューニングされ、ボディーと足まわりはさらに締め上げられ、デザインよりもダウンフォースが第一義的にデザインされた大仰なリアスポイラーが付き、軽量化のためにリアシートが取り払われ、リアのストラットをバーでつないだスパルタンモデルだ。MTのみ。
これはJCWに限らず、ミニ全体に言えることだが、困るのは、オプションの数々が憎たらしいほど魅力的すぎること。調子に乗って「自分だけの……」とか言っていると、JCWではすぐさま500万円を突破してしまう。500万円を突破するならするで、また気になるクルマも出てくるわけで。ただし、ビッグダディなら「仮に何も付けなくたって400万円台でここまでスポーツドライビングが楽しい前輪駆動車はないとまで俺は言う」とまで言うはずだ。
(文=塩見智/写真=荒川正幸)

塩見 智
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