トヨタ・アリストS300ウォルナットパッケージ(5AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アリストS300ウォルナットパッケージ(5AT) ) 2000.08.17 試乗記 ……450.6万円 総合評価……★★スポーツ走行はダンナ芸
「こりゃ、ビーエムに対抗できるのではないか?」と思ったわけである。7月6日のマイナーチェンジで、「新世紀ハイパフォーマンスセダン」アリストS300こと3リッター直6NAモデルに、5段ATが奢られた。402.0万円。ふたまわり小さなBMW330i(535.0万円)より100万円超安いというのが情けないが、それはともかく、アリストのターボモデルは「速い!」という記憶があったので、NAは上品に「速い!」のでは、と期待したのだ。
木と革が随所に使われる「ウォルナットパッケージ」に乗ると、それはクラウンでした。 柔らかい足。ペダルを踏んでも、声を高めこそすれ歌わないエンジン。スムーズというより曖昧な加速感。マジェスタと同じギア比のトランスミッションは、意外にショック有り。「曲がり」でのロールは大きく、ホールド性低いシートゆえ、体は左右に滑る。230psでじゅうぶん速いけど、スポーツ走行はダンナ芸。前言撤回。ライバルはクラウンアスリート。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2代目にあたる現行アリストは、1997年デトロイトショーで披露され、同年8月から国内での販売が始まった。ビッグキャビンの4ドアボディに、3リッターストレート6を載せたアグレッシブなセダン。エンジンは、ツインターボ(280ps)、NA(230ps)が用意される。
(グレード概要)
ウォルナットパッケージは、NAモデルにのみ設定された内装豪華版。ステアリングホイール、ドアパネル、コンソール、シフターなど、そこかしこに木目調パネルが使われる。外装色にあわせ、白、黒の本革仕様あり。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネまわり+装備)……★★★★
そつなくまとめられたインパネまわり。メーターの文字盤を発光させるオプティトロンメーターは、直射日光下でも見やすい。シフトボタンを備えたステアリングホイールは、電動チルト、同テレスコピック機能をもつ。
(前席)……★★★
スライド、座面上下はもちろん、腰への圧力まで電動で調整できるいたれりつくせりの革シート。適度なかたさで座り心地はいいが、ホールド性は重視されない形状だ。
(後席)……★★★★
座面の長さ、足もと、頭部まわりとも、不満ない。読書灯、肘掛け、カップホルダーほか、エアコンの吹き出し口も備わり、快適。
(荷室)……★★★
床面最大幅165cm、奥行き105cm、高さ50cmと、数値的には堂々たるトランクルーム。しかし場所を取りがちなダブルウィッシュボーンサスペンションゆえ、荷室左右が複雑な張り出しに浸食される。ヒンジが、荷室に干渉するタイプなのも減点ポイント。もっとも、ゴルフバックが積めれば文句はない?
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
VVT-iこと連続可変バルブタイミング機構を搭載、230psを発生する3リッターストレート6は、黒子に徹する。目玉の5ATに「圧倒的なスムーズネス」を感じることはできなかった。スペックのわりに、地味なコンビ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ターボモデルとの差異化のためか、足まわりは柔らかい。乗り心地はいい。スロットルワークに対するエンジンの反応、ステアシフトマチックと呼ばれる、ステアリングホイールにシフトスイッチを備えたスポーツモードのレスポンスもいい。ただ「曲がり」では、軟弱な足まわりと、ホールド性皆無のシートが、ドライバーを醒めさせる。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者 :web CG 青木禎之
テスト日 :2000年8月12から14日
テスト車の形態 :広報車
テスト車の年式 :2000年型
テスト車の走行距離 :1133km
タイヤ :(前)215/60R16 95H(トーヨー Trampio J33)/(後)同じ
オプション装備 :ナビゲーションシステム+8スピーカーオーディオ+CDチェンジャー+クルーズコントロール(48.6万円)
テスト形態 :ロードインプレッション
走行状態 :市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
走行距離 :580.3km
使用燃料: 75.5リッター
参考燃費:7.7km/リッター
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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