トヨタ・ヴィッツB エコパッケージ(5MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ヴィッツB エコパッケージ(5MT) 2001.11.29 試乗記 ……90.7万円 総合評価……★★★★エコ実感モデル
最近のトヨタ車に乗って感心するのが、燃費のよさだ。自動車雑誌『NAVI』でヴィッツの3ボックス版「プラッツ」(1リッター+5MT)をテストした際には、リッター18.0kmとカタログ値(10・15モード=19.6km/リッター)とほとんど違わない結果を出してスタッフを驚かせた。
ヴィッツ「エコパッケージ」は、そんな元来の小食性をアイドルストップ機構でさらに伸ばそうというモデルである。赤信号などでギアをニュートラルに入れて停車すると、パタッと車内が静かになる。エンジンが自動的に切られる。そして発進のためにクラッチペダルを踏むと、再び「ギュルルン!」と1リッターユニットが目覚める。混み気味の街なかでは、スタートのたびにギュルルン、ギュルルンと少々わずらわしいが、なに、環境のためだ。パワーアシストがつかない重めのステアリングとあわせ、“エコな自分”を実感できる。
2日間360km余のテスト中に、再スタートに失敗したり、アイドルストップ機構ゆえに出遅れたりすることはなかった。ただ、テスト車は走行距離8000kmにも至らないコンディションだから、「TOYOTA STOP AND GO SYSTEM」の耐久性についてはわからない。簡便な満タン法による参考燃費は13.8km/リッター。これは、都内、高速とも、エンジンをフルスケール回しての走行が多かったから立派なものだ。
1500mmという高い車高もちながら、張りのあるサイドパネルと巧みなウィンドウグラフィックで鈍重さを感じさせないボディスタイル。広い室内。欧州市場を考慮したタフなシャシー。優秀なエンジンと軽い車重で実現された低燃費。ヴィッツは、トヨタの総合力を体現したモデルといえる。もっとも「エコパッケージ」は“さらなる燃費追求”を目論んだ点はエライが、MTかつ廉価グレードの「B」ベース、そのうえパワステが付かないということで量販は望めない。本命は、依然としてMT需要がある「ビジネス・エコパッケージ」(90.0万円)だろう。こちらはパワステ標準装備。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1999年1月に発表されたトヨタの新世代コンパクトカー。欧州戦略車でもある。3ドア、5ドア、2種類のハッチバックボディをもち、エンジンラインナップは、当初1リッターと1.3リッター、2000年10月に1.5リッターが追加された。トランスミッションは、4ATか5MT。FFのほか、4WDモデルもある。グレードは、ベーシックなものから「B」「F」「U」、そしてレトロ調の「Clavia(クラヴィア)」、スポーティな「RS」で構成される。2000年12月26日の一部改良では、ABSがEBD(電子制動力配分制御)付きとなり、ISOFIX対応チャイルドシート用アンカーが採用された。
(グレード概要)
ヴィッツ「エコパッケージ」は2001年5月10日に追加されたグレード。最廉価の「B」をベースに、停車時にエンジンを自動停止させ、発進時に再スタートを行う「TOYOTA STOP AND GO SYSTEM」を搭載。「1リッター+5MT」の組み合わせのみで、3ドア、5ドアがある。装備によって、「エコパッケージ」と「ビジネス・エコパッケージ」が用意される。両者の違いは、リアシートが「一体型」か「分割式スライドダブルフォールディング」、パワステ「なし」「あり」、前席エアバッグが「ダブル」「運転席のみ(!!)」といったところ。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
質感は値段相応だが、有機的な曲線を上手に使って、ビジネスライクでない、しかし収納場所豊富な使いやすいインパネまわりを実現した。特にセンターコンソール左右に設けた大きなモノ入れは便利。なんでも放り込める。丸いエアコン吹き出し口も楽しい。センターメーター内の計器類は、大きな速度計、燃料計、各種警告と必要最小限にとどめられる。グレードによってはデジタルメーターも用意されるが、視認性と認識しやすさではアナログに軍配があがる。アイドルストップ機構をONにすると、緑色の「ECO」マークが点灯する。
(前席)……★★★★
コスト管理厳しい小型車にあって、望外にすばらしいシート。体にあたる部分、サイドと生地類はそれなりだが、しっかりしたクッション感があって型くずれしない、感じ。ルノー車を彷彿とさせる贅沢な座り心地だ。トヨタ車にあって国際戦略車はこうも違うのかという好例。立派なヘッドレストも加点要素。
(後席)……★★
リアシートは、“普通車のボンバン”級。車両本体価格89.5万円をしっかり思い出させる。座った第一印象は前席と似たものがあるがいまひとつ平板で腰がない……、といったことより、なぜにキレイさっぱりとヘッドレストがないのか? 足もとや頭上の広さは、ベンチマークたるルノー・クリオ(ルーテシア)をしのぐものだけに残念。国内市場の厳しい価格競争を実感させられる。
(荷室)……★★★
床面最大幅106cm、奥行きはわずか50cm、とはいえ、これは後部座席の居住性を重視したゆえだからやむをえまい。一体可倒式のリアシートバックレストを倒すと、130cm前後まで奥行きは拡大する。背もたれを倒した際、床にひかれたみごとに薄いカーペットの前端に、ISOFIX対応チャイルドシート固定用バーを溶接するための太い鋼管が横切っているのが見え、これはココロ強い。荷室内を隠蔽するパーセルシェルフは用意されない(リア、クォーターガラス用サンシェードは1.8万円のオプション)。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ダイハツより供給される1リッターユニットのアウトプット、70psの最高出力と9.7kgmの最大トルクは、800kg台の軽いボディには必要十分。連続可変バルブタイミング機構「VVT-i」を備え、軽快に回る。「TOYOTA STOP AND GO SYSTEM」によって停車するとアイドルストップするが、これはOFFにすることもできる。5段MTのフィーリングは純然たる実用車のそれ。トラベルは長め。節度感もそれなり。タコメーターがないのでレブリミットはわからないが、ロウで50km/h、セカンドで95km/hまでをカバーする。マニュアルシフトを活かしてなかなか活発に走れるが、いざその気になると、サードの守備範囲が広すぎる感がある。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ヴィッツのボトムレンジたるテスト車は、鉄チンホイールに155/80R13 79Sという“ショボめ”のタイヤを履く。しかしフロント、リアというサスペンション形式をとるシャシーはしっかりつくりこまれているので、足まわりから廉価版の悲哀を感じることはない。接地感はいまひとつだが、トレースは正確だしロールが一定しているので、たとえば首都高速などでも(絶対速度は低いが)不安ないコーナリングを楽しむことができる。パワーアシストを受けないステアリングは、ロック・トゥ・ロック=3と4分の3回転とスロウなもの。微速時はちょっと重いかも。ちなみに、パワステはプラス3.1万円で装着可能だ。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年11月24日から25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:7718km
タイヤ:(前)155/80R13 79S/(後)同じ(いずれもブリヂストン B391)
オプション装備:2スピーカー&AM/FMラジオ(1.2万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:363.5km
使用燃料:26.4リッター
参考燃費:13.8km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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